滋賀矯正 歯科矯正用アンカースクリュー

645 Views

April 18, 22

スライド概要

滋賀医科大学医学部歯科口腔外科学講座による歯科矯正用アンカースクリューの臨床統計学的検討の論文の紹介です。歯科用アンカースクリューが矯正力適応の固定源となり、固定源移動の抑制、治療期間の短縮、患者への負担軽減など数多くの利点がある。しかし、動揺、脱落等の問題点も報告されている。今回はアンカースクリュー埋入を行った症例の臨床統計学的研究の報告です。

profile-image

滋賀の矯正歯科ポータルサイトです。滋賀のおすすめ矯正歯科医院のご紹介。日本矯正歯科学会、臨床指導医(旧専門医)監修のもと、基礎的な矯正情報や症例までエビデンスベースで矯正情報をお届けしています。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

矯正歯科論文紹介 当科における歯科矯正用アンカースクューの 臨床統計学的検討 森川温子¹、越沼伸也¹、砂子智裕²、嶋本純也²、堀井和宏²、山本学¹ 所属:1)滋賀医科大学医学部歯科口腔外科学講座(主任:山本学教授) 2)ほりい矯正歯科クリニック/大津市歯科医師会 滋賀県歯科医師会雑誌 No.9:14-16, 2021 紹介者:オルソキャリア https://orthodonticsupport.com

2.

要約 期間 2015年から2019年12月31日までの5年間 趣旨 近在歯科医院より紹介され当科で歯科矯正用アンカースクリュー (プロシード社デュアル・トップオートスクリューⅢG2:径2mm、 長さ10mm)の埋入を行った229本(134症例)について臨床統計学的検討を 行った 年齢 15歳から54歳まで、平均年齢25.5歳±7.5 性別 男性14本(8例)、女性215本(126例) 埋入部位 上顎臼歯部口蓋側92本(47例)、上顎臼歯部頬側86本(44例)、 口蓋正中部47本(47例)、下顎臼歯部頬側4本(3例) 除去・脱落症例 14本(12例)、埋入した歯科矯正アンカースクリュー全体の6.1% 脱落した原因 患者側因子:清掃不良、 術者側因子:不適切な埋入部位、口腔清掃指導の不足など

3.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

4.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

5.

緒言 近年、矯正歯科治療において、強固な固定源を得られる歯科矯正用アンカースクリュー (プロシード社デュアル・トップオートアンカースクリューⅢG2:径2mm、長さ10mm、 以下アンカースクリューと称す)の使用により、顎外固定装置および外科的手術を回避 できる症例が増加し、患者の負担軽減につながっている。 一方、アンカースクリューの埋入後、動揺、感染や脱落等の合併症も報告されている。 今回、われわれは当科において埋入を行ったアンカースクリューの臨床統計学的検討を 行ったので、報告する。

6.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

7.

対象と方法 2015年1月1日から2019年12月31日までの5年間に近歯矯正歯科医院より紹介され 当科でアンカースクリューの埋入を行った229本(134例)を対象とした。 これらの患者の年齢、性別、埋入部位、動揺や感染等の合併症により除去を 余儀なくされた症例を調査した。

8.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

9.

結果 Ⅰ.年齢 ・年齢は15歳から54歳で平均値±S.Dは25.5±7.5歳であった。 ・年齢別の埋入症例は、15~20歳は59本(38例)、21~25歳は76本(43例)、26~30歳は53本(30例)、31~35歳は14本(9例)、 36~40歳は8本(4例)、41歳以上は19本(10例)であった(図1)。 36~40歳 8本(3.5%) 31~35歳 14本(6.1%) 41歳以上 19本(8.3%) 26~30歳 53本 (23.1%) 15~20歳 59本 (25.8%) 21~25歳 76本 (33.2%) 図1 年齢別の埋入した本数(森川ら、2021より)

10.

結果 Ⅱ.性別 性別は男性が14本(8例)、女性が215本(126例)であった(図2)。 男 14本 (6.1%) 215本 (93.9%) 女 男 女 図2 性別ごとの本数(森川ら、2021より)

11.

結果 Ⅲ.埋入部位 アンカースクリューの埋入は229本(134例) 埋入部位:上顎臼歯部口蓋側92本(47例)、上顎臼歯部頬側86本(44例)、上顎口蓋正中部47本(47例)、下顎臼歯部頬側4本(3例) 100 92 86 90 80 70 60 47 50 40 30 20 10 4 0 上顎臼歯部口蓋側 上顎臼歯部頬側 本数 上顎口蓋正中部 下顎臼歯部頬側 図3 埋入部位(森川ら、2021より)

12.

結果 Ⅳ.動揺・感染により除去を余儀なくされた症例 動揺・感染により除去は、229本中14本(6.1%)であった。 埋入されていた部位は、上顎臼歯部口蓋側が6本(5例)、上顎臼歯部頬側が7本(6例)、上顎口蓋正中部が1本(1例)であった (図4)。 8 7 7 6 6 5 4 3 2 1 1 0 上顎臼歯部口蓋側 上顎臼歯部頬側 本 上顎臼歯部正中部 図4 除去を余儀なくされたアンカースクリューの埋入部位 (森川ら、2021より)

13.

結果 余儀なくされた症例Ⅰ 症例Ⅰ 25歳 女性 アンカースクリュー埋入(2本) 既往歴なし 埋入部位 上顎両側第二小臼歯と第一大臼歯間の口蓋側歯槽部 埋入後の結果 埋入一か月後 両側のアンカースクリューに動揺を認め、当科再診に至った。 再診時の現症 アンカースクリューの動揺を認め、周囲歯肉に発赤を認めた。 アンカースクリューを除去し、上顎両側第一大臼歯と第二大臼歯間 の口蓋側歯槽部に再埋入したところ、動揺および脱落は認められな かった。

14.

結果 余儀なくされた症例Ⅱ 症例Ⅰ 37歳 女性 既往歴なし アンカースクリュー埋入(2本) 埋入部位 上顎両側第二小臼歯と第一大臼歯間の頬側歯槽部 埋入後の結果 埋入1週間後に、両側のアンカースクリュー埋入部位の周囲歯肉に腫脹を認 め、当科再診に至った。再診時の現症として、アンカースクリューの動揺、 周囲歯肉に発赤および腫脹を認めたため除去した。 紹介元より上顎両側第二大臼歯の抜歯依頼があったため、除去から1か月後 に上顎両側第二小臼歯と第一大臼歯間の頬側歯槽部に再埋入および上顎両 側第二大臼歯の便宜抜歯を行った。 再埋入から1週間後に、両側の埋入部位周囲歯肉に腫脹を認めたため当科再 診となった。埋入部位の発赤および腫脹は認めたが、動揺は認められな かったため、抗菌薬投与および洗浄を行った。 腫脹を認めてから1か月後に、両側のアンカースクリューに動揺を認めたた め、除去し、第一大臼歯と第二大臼歯間の頬側歯槽部に、埋入した。 その後が動揺および脱落は認めなかった。

15.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

16.

考察 歯科矯正用インプラントは、矯正治療の歯の移動の固定源として利用することを目的に 歯槽骨あるいは顎骨に埋入・植立されるインプラントの総称であり、歯科矯正用 インプラントのうちスクリュー形式のものがアンカースクリューとして分類される。 通常は、歯槽骨あるいは顎骨に単体で植立され、粘膜組織外に露出したスクリュー頭部 が矯正力適応の固定源となる¹⁾。 これにより固定源の移動の抑制、治療期間の短縮、患者への負担軽減など多くの利点が ある²⁾。 しかし、同時に問題点も報告されており。前田ら²⁾の報告では、アンカースクリュー 埋入後の問題点として、周囲軟組織の炎症がもっとも多く、65本中9本(13.8%)に 認めたとしている。

17.

考察 <症例Ⅰ> <症例Ⅰ> 埋入したアンカースクリューと口腔内に装着していたクワドヘリックスのワイヤーの間 が狭く、清掃困難であったことが考えられた。 アンカースクリューを除去し、クワドヘリックスのワイヤーの後方である、 上顎両側第一大臼歯と第二歳臼歯間の口蓋側歯槽部に埋入したところ、 動揺および脱落は認めなかった。

18.

考察 <症例Ⅱ> <症例Ⅱ> 埋入後のアンカースクリュー周囲粘膜に腫脹を認めたため、患者に清掃指導を行うも、 再埋入後に再び感染が引き起こされた。 上顎両側第二小臼歯と第一大臼歯間の頬側歯肉部位は遊離歯肉が低位であり、また頬小 帯も埋入部付近に認めたため、アンカースクリュー周囲の清掃が困難となり炎症を起こ したと考えられた。消炎処置を行い、経過観察を行ったが、動揺を認めたため、再埋入 から1か月後に埋入位置を上顎両側第一大臼歯と第二大臼歯間の付着歯肉部である頬側 歯槽部に変更したところ、動揺および脱落は認めなかった。可動粘膜部へ植立した場合 は清掃が良好でも周囲炎が起こりやすく、付着歯肉部へ植立では周囲炎は起こりにくい とされている¹⁾。 アンカースクリュー周囲のプラークコントロールの改善が認められない場合は、埋入部 位の変更を考慮すべきであった。

19.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

20.

結論 今回、当科において埋入したアンカースクリューに関する臨床統計学的検討を行った。 アンカースクリュー埋入後に認められる合併症である動揺、感染、脱落の原因は術者側 因子として可動粘膜部位に埋入したところにより、アンカースクリューと粘膜部に隙が 生じ、細菌感染が起こったことや、既存の矯正器具付近に埋入することにより清掃困難 となり細菌感染が起こったことが考えられる。 動揺および脱落を可能な限り減らすために、患者の口腔内の状況に合わせ、十分な術前 診査および清掃指導が重要であると考えられた。

21.

目次 01 02 03 04 05 06 • 緒言 • 対象と方法 • 結果:年齢、性別、除去症例、症例Ⅰ、症例Ⅱ • 考察 • 結論 • 文献

22.

文献 1)清水 典佳 他:歯科矯正用アンカースクリューガイドライン、一般社団法人, 日 本矯正歯科学会 第二版:2018. 2)前田 芳信, 堀坂 充広, 高田 健治, 山本 英貴, 十河 基文:矯正を目的とした インプラントの埋入部位に関連した問題点, 日本口腔インプラント学会誌, 26(1) :11-16,2013.