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July 30, 25
スライド概要
『NewsPicks / カミナシのCTOが語る、SREに取り組んできた経験はキャリアの武器になる』の発表資料です
https://forkwell.connpass.com/event/359574/
経済ニュースアプリのCTOをしています。
インフラエンジニア・SREを経て CTOになるために必要だったこと 株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks CTO 安藤裕紀 2025.7.30 NewsPicks / カミナシのCTOが語る、SREに取り組んできた経験はキャリアの武器になる
00 自己紹介 安藤裕紀 / Yuki Ando 株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks CTO 2011年新卒で野村総合研究所に入社。10年以上エンジニア/アーキテク トとしてアプリケーション開発、インフラ構築、クラウド活用コンサル ティングなど大企業の技術支援を行った後、2021年10月に株式会社ユー ザベースに入社。プロダクト開発組織のSREチームでインフラや開発基盤 を担当。シニアエンジニア、チームリーダー、シニアEMを経て、2025 年1月から執行役員NewsPicks CTOに就任。 休日は8歳娘・3歳息子と遊んで疲弊する、ちょっと疲れたお父さん(CTO) ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
00 本日のアジェンダ 1. NewsPicksについて 2. インフラエンジニアのキャリアをふりかえる 3. SREのキャリアをふりかえる 4. CTOになるために必要だったこと・・・? ❝ 一人のSREエンジニアとして参画したNewsPicksで3年ほど務めた後、事業CTOに就任して半年が経ちました。 NewsPicksのプロダクトの歴史は12年。ずっとインフラ畑で非機能の仕事をしてきたので、大きな機能追加を したりユーザー体験を変えたりといった事業のアップサイドに貢献したことはありません。 エンジニアの大多数を占めるソフトウェアエンジニアたちと比べて圧倒的なプログラミングの技巧やアーキテク トとしての設計能力を持っているわけでもありません。 そんな私がどうしてCTOになったのか、やれているのかについて、SREの取り組みや経験とのつながり・それ 以外で必要だったことを踏まえて考察したいと思います。N=1の事例として皆様のご参考になれば幸いです。 ❞ ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
01 NewsPicksについて
01 ソーシャル経済メディア NewsPicksについて ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
01 運営会社について ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
01 NewsPicksのプロダクト開発組織とエンジニアの体制 ユーザベースグループ内にNewsPicks事業のプロダクト開発組織があり、60名ほどのエンジニアが在籍している ユーザベースグループ(約1,200名※業務委託含む) NewsPicks事業 プロダクトチーム (約90名) プロダクト開発エンジニア (約60名) XXX事業 開発チーム YYY事業 開発チーム プロダクトチーム 全体はCXO管轄 ZZZ事業 開発チーム プロダクト マネージャー デザイナー カスタマー サポート ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 横断チーム Platformチーム アルゴリズムチーム モバイルチーム SREチーム 事業CTOとして エンジニア組織を 管掌しています (VPoE責務含む)
02 インフラエンジニアのキャリアをふりかえる
02 新卒からの10年間はインフラエンジニアをメインにやっていた 大手SIerで社会的影響が大きなシステムのインフラエンジニアとして基盤の面倒をみた経験 ● 1〜4年目:大手小売業のミッションクリティカルなシステムのサーバー保守・改善 ● 5〜6年目:プライベートクラウドの構築・東阪BCP対応・24/365のオンコール対応 ● 7〜11年目:大企業ビジネス部門のDX支援、クラウド活用支援、ITアーキテクト、コンサル noteの退職エントリにも書いていました👉 “10年半勤めたNRIを退職しました” https://note.com/integrated1453/n/ne0c940b39f71 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
02 新卒からの10年間はインフラエンジニアをメインにやっていた 大手SIerで社会的影響が大きなシステムのインフラエンジニアとして基盤の面倒をみた経験 👉 1〜4年目:大手小売業のミッションクリティカルなシステムのサーバー保守・改善 ● 5〜6年目:プライベートクラウドの構築・東阪BCP対応・24/365のオンコール対応 ● 7〜11年目:大企業ビジネス部門のDX支援、クラウド活用支援、ITアーキテクト、コンサル サーバーの増設やハード障害で データセンターに通う日常 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 数百台の物理サーバーの管理 老朽化した物理サーバーのパッチ適用 やバックアップ、EOL対応に疲弊
02 新卒からの10年間はインフラエンジニアをメインにやっていた 大手SIerで社会的影響が大きなシステムのインフラエンジニアとして基盤の面倒をみた経験 ● 1〜4年目:大手小売業のミッションクリティカルなシステムのサーバー保守・改善 👉 5〜6年目:プライベートクラウドの構築・東阪BCP対応・24/365のオンコール対応 ● 7〜11年目:大企業ビジネス部門のDX支援、クラウド活用支援、ITアーキテクト、コンサル 次世代のプライベートクラウド構築のため、 サーバー・ネットワーク・ストレージ機器の 組み合わせやオーケストレーター・SDNを検証 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. データセンター1フロア規模の商用プライベート クラウドの物理/論理設計、東京・大阪DR対応 鳴り止まないオンコールアラート
02 新卒からの10年間はインフラエンジニアをメインにやっていた 大手SIerで社会的影響が大きなシステムのインフラエンジニアとして基盤の面倒をみた経験 ● 1〜4年目:大手小売業のミッションクリティカルなシステムのサーバー保守・改善 ● 5〜6年目:プライベートクラウドの構築・東阪BCP対応・24/365のオンコール対応 👉 7〜11年目:大企業ビジネス部門のDX支援、クラウド活用支援、ITアーキテクト/コンサル マーケ部門がデジタルマーケティング をするためのBIやDWHの構築支援 ビジネスの意思決定や事業部のデータ 活用のためのデータ基盤・CDP構築 中期経営計画におけるシステム投資の 検討分科会のITコンサル(リーダー) えらい人の 決裁もらう 引用: https://aws.amazon.com/jp/cdp/analytics-report-master/ ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
02 インフラエンジニア(?)としての経験から思ったこと 裏方の仕事はとっても大事だが、世の中にはトイル(労苦)が溢れている ● オンプレ物理環境の大規模なインフラの設計・構築、そして24/365の保守を引き受けて 説明責任を求められたのはエンジニアとしての足腰を鍛える下積みとしてよかった ● インフラだけをやっていても、上で動くソフトウェアやビジネスを理解して価値を提供する提 案ができなければ、IT土方・インフラ作業者で終わってしまう ● SIerは人月ベースでフィーを得ているため、自動化や効率化のインセンティブがない ● 一ヶ月の超短期での構築や提供を求められるが、手前でえらい人の検討に一年かかっている システムの裏方を支える技術職も、クライアントワークも一通りやったので、事業会社に行きたくなった ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
03 SREのキャリアをふりかえる
03 NewsPicksに来てからは3年間ずっとSREをやっていた 10年間やっていたインフラの仕事を、ソフトウェアによってエンジニアリングする ● 基本的には「前もやったことある仕事だな」という既視感のある仕事。違いは、クラウドかつ 自社事業なので、仕事のやり方自体をいくらでもエンジニアリングできる ● チームの仕事を改善した分だけ、仕事が楽になり、よりビジネス価値の高い仕事に取り組める ようになり、組織の中でチームの影響力が高まり、事業に貢献することで評価される ○ インフラ運用改善:IaCによる民主化、自動化スクリプト開発、EOL対応 ○ コスト最適化:コンテナ化、マネージドサービス化、コストモニタリング ○ 障害対応の改善:SLO策定、オブザーバビリティ、インシデントコマンダー SREチームは一時期で最大6人のチームだったが、今は2-3名で3年前よりも多くのシステムを見ており、 ノイジーアラートは少なく、事業に対してずっと付加価値の高い仕事をしている ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
03 3年間で発信もいろいろして、SREについて学びました 過去の登壇資料 障害対応を属人化させない。「全員インシデントコマンダー」体制を根付かせた、 山本五十六の格言【 NewsPicks SRE 安藤裕紀】 | レバテックラボ(レバテック LAB) Cloud Operator Days Tokyo 2024 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
03 SREをやってきた経験から思ったこと 自分が得意なインフラの自動化・最適化をやって評価されてお金がもらえるってうれしい! ● 自分がエンジニアとしての技術で事業に対する貢献ができそうな強みを伸ばしていき、周りの エンジニアからの評価と会社からの評価が一致することはとても大事 ○ SRE界隈の中でも、コスト削減・EOL対応・障害対応・オブザーバビリティに強く問題 解決力の高いエンジニアとして認知されている=会社にとってもそ専門性が高いこと で事業やサービスの収益性・安定性向上に貢献していると認められ評価される ● 事業会社でチームリーダーになり、シニアEMになり、自分の影響力が大きくなると、自分の 技術力以外での「事業の問題解決をする」ことも考える必要がある ○ 他チームと:協業/ヘルプ/兼務/異動などの打ち手を調査・検討・調整 ○ 社外と:採用/業務委託/発注/SaaS化などを調査・検討・実行 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
04 CTOになるために必要だったこと・・・?
04 今年からCTOになって意識していること 「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」より CTOとは、その会社が現在の成長段階で必要としてい る戦略的技術系幹部 まず何よりも、CTOは会社のためを思い、事業を理解 し、技術というレンズを通して事業戦略を立てられる ようでなければなりません。 CTOは第一に経営幹部たるべきで、エンジニアであるこ とは二の次です。 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
04 CTOは三線モデルにおける一線の最終責任者 三線モデル(Three Lines Model) 事業リスク、リーガルリスク、レピュテーションリスクなど 経営上のリスクと内部統制を管理するためのフレームワーク CTOはサイバーセキュリティやシステム障害など、 プロダクトに関するリスクを担当する経営者にあたる 一線: 事業執行部門の 経営者 二線: リスク管理部門 三線: 内部監査部門 https://www.theiia.org/globalassets/documents/resources/ the-iias-three-lines-model-an-update-of-the-three-lines-ofdefense-july-2020/three-lines-model-updated-english.pdf 現場の執行者としての最終防衛ラインになっているので、昔のように全部の障害対応現場に前のめりに 飛び込むことはなくなった。エスカレーションが正しく機能するように組織体制やルールを作るのが仕事 ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
04 SLOドキュメントは経営者として事業のリスクを捉えるツール CUJ、担当チーム、システム対象エンドポイント、SLI/SLOがNotionデータベース化されており、 二線へのエスカレーション基準も定められている。SRE経験で役に立っているのはこれくらい ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
04 SREの経験がCTOに活きるかは、正直フェーズによる SREは「事業にとってあるべき開発スピードと信頼性のバランスをとる」ことが本質だと思う ● 私自身は、インフラや障害対応、運用改善に強みがあるが、開発スピードを加速させるためのソフト ウェアアーキテクチャや開発プロセスにはそこまで強い専門性はない ● NewsPicksは12年の歴史があるプロダクトで、1,100万人のユーザーがいて、既存の有料会員の継続 率がとても重要な事業。アーリーのスタートアップと比較すると「開発スピードをバリバリ上げてプ ロダクトの市場投入・価値提供のスループットを重視する」と、既存ユーザーからの信頼やサービス の安定性のバランスをとる必要がある。これを守る意味ではSREとしての技術力を信頼されている ● それ以前に、CTOは「経営幹部の中の技術部門代表」でしかないので、エンジニアである前に経営幹 部。事業の課題、組織の問題、社員の問題、AIを活用して会社全体の生産性を高めること、すべてに 深い当事者意識で対応する必要がある。なにもわかりません ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.
ご清聴ありがとうございました! ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.