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May 24, 22
スライド概要
曝露がアンカーとなるデザイン 奥村泰之 一般社団法人臨床疫学研究推進機構 代表理事 臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会 第38回研究集会 2021/9/25 (土) 13:30~16:30 Zoom
発表の構成 ◼ はじめに ◼ 自己対照ケースシリーズ研究 ◆ ①概要 ◆ ②数値例 ◆ ③仮定と仮定逸脱の対処法 ◆ ④イベント依存型曝露への対処法 ◆ ⑤イベント依存型観察期間への対処法 ◆ ⑥イベントが死亡の場合の対処法 ◆ ⑦落ち葉拾い ◼ 自己対照リスク区間デザイン ◼ 曝露クロスオーバーデザイン 2
曝露がアンカーとなるデザイン Exposure anchored design 曝露時点 Point exposure 参照期間 焦点期間 参照期間 Referent window Focal window Referent window 時間 Cadarette SM et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2021 Jun;30(6):671-684. 3
主なデザイン ◼自己対照ケースシリーズ研究[1] Self-Controlled Case Series (SCCS) design ◼自己対照リスク区間デザイン[?] Self-Controlled Risk Interval (SCRI) design ◼曝露クロスオーバーデザイン[3] Exposure-crossover design [1] Farrington CP: Biometrics. 1995 Mar;51(1):228-35. [2] ?? [3] Redelmeier DA: J Clin Epidemiol. 2013 Sep;66(9):955-63. 4
自己対照ケースシリーズ研究 ①概要 5
5つのステップ ① イベント発生した人を特定 ② 個々人の曝露とアウトカムの全履歴を 把握できる観察期間を指定 ③ 観察期間のうち曝露が影響しうる期間 (焦点期間) と,それ以外の期間 (参照期 間) を定義 ④ 焦点期間と参照期間の間に生じたイベ ントを特定 ⑤ 相対リスクを算出 Petersen et al: BMJ. 2016 Sep 12;354:i4515. doi: 10.1136/bmj.i4515. 6
活用事例 Douglas IJ et al: BMJ. 2012 Jul 10;345:e4388. doi: 10.1136/bmj.e4388. 7
研究疑問 クロピドグレル*1の新規使用者のうちア a t i e n t スピリンの併用者 P F o c a l プロトンポンプ阻害薬* 処方のある期間 R e f e r e n t プロトンポンプ阻害薬処方のない期間 O u t c o m e 急性心筋梗塞の発症 2 *1 抗血小板薬であり心筋梗塞予防等に使用される *2 酸分泌抑制薬であり胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生予防等に使用される Douglas IJ et al: BMJ. 2012 Jul 10;345:e4388. doi: 10.1136/bmj.e4388. 8
デザイン・ダイヤグラム 基準日 クロピドグレルの新規使用者のうち アスピリンの併用者 Day [0,0] イベント発生日 心筋梗塞の発症 追跡期間 Days [1, 打ち切り*] *処方終了,観察期間の終了日など 曝露の評価期間 Days [0, 打ち切り*] *処方終了,観察期間の終了日など PPI開始 参照期間 PPI開始 PPI終了 焦点期間 参照期間 PPI終了 焦点期間 *PPI=プロトンポンプ阻害薬 Douglas IJ et al: BMJ. 2012 Jul 10;345:e4388. doi: 10.1136/bmj.e4388. 時間 9
5つのステップの具体例① ステップ 具体例 ①イベント発生した人を特定 急性心筋梗塞を発症した人 ②個々人の曝露とアウトカムの全 履歴を把握できる観察期間を指定 基準日から打ち切り日 (処方終了, 観察期間の終了など) まで ③観察期間のうち曝露が影響しう る期間 (焦点期間) と,それ以外の 期間 (参照期間) を定義 焦点期間をPPIの処方中,遅延期間 をPPIの処方14日前,参照期間をそ れ以外の期間と定義 Douglas IJ et al: BMJ. 2012 Jul 10;345:e4388. doi: 10.1136/bmj.e4388. Petersen et al: BMJ. 2016 Sep 12;354:i4515. doi: 10.1136/bmj.i4515. 10
5つのステップの具体例② ④焦点期間と参照期間の間に生じたイベントを特定 ⑤相対リスクを算出 曝露 患者数 追跡期間 イベント数 年齢調整済み (人年) 相対リスク (95%信頼区間) 参照期間 430 708 375 1 焦点期間 444 719 395 0.75 (0.55, 1.01) Douglas IJ et al: BMJ. 2012 Jul 10;345:e4388. doi: 10.1136/bmj.e4388. Petersen et al: BMJ. 2016 Sep 12;354:i4515. doi: 10.1136/bmj.i4515. 11
様々な活用事例 観察期間 [1] [2] [3] [4] 焦点期間 アウトカム [1] 2020年2月1日から2020年9 COVID-19の発症日か 急性心筋梗塞/虚血性 月14日の間 ら1-28日時点 脳卒中による入院 [2] 抗うつ薬の新規処方日から ベンゾジアゼピンの 処方翌日から終了日 終了日の間 の間 骨折 [3] メチルフェニデート 追跡開始日 (5歳の誕生日 /DB組入日/2021年1月1日) の処方日から終了日 から終了日 (19歳の誕生日/ の間 アトモキセチンの処方日/ 死亡日) の間 急性薬物中毒 [4] 追跡開始日 (統合失調症の 治療開始日) から終了日 (死亡日/移住日/12か月以 降) の間 抗精神病薬/心理社会 精神科入院 的介入の開始日から 終了日の間 Katsoularis I et al: Lancet. 2021 Aug 14;398(10300):599-607. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00896-5. Yang et al: Bone. 2021 Jul 10;153:116109. doi: 10.1016/j.bone.2021.116109. Gao L et al: CNS Drugs. 2021 Jul;35(7):769-779. doi: 10.1007/s40263-021-00824-x. Corrao G et al: Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2021 Jun 16. doi: 10.1007/s00127-021-02114-9. 12
強みと弱み ◼強み ◆繰り返し発生するイベントに適している ◆時間依存共変量を調整できる ◼弱み ◆イベント発生が,その後の曝露や観察期間 に影響してはならない Cadarette SM et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2021 Jun;30(6):671-684. 13
自己対照ケースシリーズ研究 ②数値例 14
Oxfordデータ MMRワクチンによるウイルス性脳膜炎 曝露時点 イベント発生日 MMRワクチンの投与 ウイルス性脳膜炎 ワクチン投与後 15-35日 参照期間 焦点期間 参照期間 日齢: 366 Whitaker HJ et al: Stat Med. 2006 May 30;25(10):1768-97. doi: 10.1002/sim.2302. 日齢: 730 15
Oxfordデータ MMRワクチンによるウイルス性脳膜炎 変数名 説明 id ID start 観察開始日の日齢 srisk (ワクチンによる) 焦点期間の開始時の日齢 erisk (ワクチンによる) 焦点期間の終了時の日齢 diag ウイルス性脳膜炎の診断時の日齢 end 観察終了日の日齢 Whitaker HJ et al: Stat Med. 2006 May 30;25(10):1768-97. doi: 10.1002/sim.2302. 16
10症例 (ワクチンに (ワクチンに ウイルス性 観察開始日 よる) 焦点 よる) 焦点 観察終了日 脳膜炎の診 の日齢 期間の開始 期間の終了 の日齢 断時の日齢 時の日齢 時の日齢 ID 1 366 473 493 398 730 2 366 407 427 413 730 3 366 444 464 449 730 4 366 448 468 455 730 5 366 447 467 472 730 6 366 410 430 474 730 7 366 485 505 485 730 8 366 511 531 524 730 9 366 443 463 700 730 10 366 --- --- 399 730 Whitaker HJ et al: Stat Med. 2006 May 30;25(10):1768-97. doi: 10.1002/sim.2302. 17
縦持ちデータ変換関数 ◼ library(SCCS) ◼ formatdata(indiv, astart, aend, aevent, adrug, aedrug, agegrp=NULL, expogrp=0, data) ◆ indiv: 患者ID ◆ astart: 観察開始日 ◆ aend: 観察終了日 ◆ aevent: イベント発生日 ◆ adrug: 焦点期間の開始日 ◆ aedrug: 焦点期間の終了日 ◆ agegrp: 調整する年齢 (2番目の年齢水準の開始日) ◆ expogrp: 0 = [adrug+0, aedrug] c(-14, 0) = [adrug-14, adrug-1]; [adrug+0, aedrug] ◆ data: データフレームのオブジェクト名 18
曝露区分(焦点期間/参照期間) で分割 (ワクチンに (ワクチンに ウイルス性 観察開始日 よる) 焦点 よる) 焦点 観察終了日 脳膜炎の診 の日齢 期間の開始 期間の終了 の日齢 断時の日齢 時日齢 時日齢 ID 1 イベント有無 366 473 開始日 493 終了日 398 期間 730 曝露有無 19
曝露区分(焦点期間/参照期間) ×年齢区分 (390-547/548-730)で分割 (ワクチンに (ワクチンに ウイルス性 観察開始日 よる) 焦点 よる) 焦点 観察終了日 脳膜炎の診 の日齢 期間の開始 期間の終了 の日齢 断時の日齢 時日齢 時日齢 ID 1 366 473 493 398 730 年齢区分 20
曝露区分(焦点期間の前14日間/焦点期間/参照 期間) で分割 (ワクチンに (ワクチンに ウイルス性 観察開始日 よる) 焦点 よる) 焦点 観察終了日 脳膜炎の診 の日齢 期間の開始 期間の終了 の日齢 断時の日齢 時日齢 時日齢 ID 1 366 473 493 398 730 焦点期間の 前14日間 21
粗発生率 曝露有無 イベント件数 追跡期間 発生率 発生率の比 22
オフセット項のあるポアソン回帰分析 個人・年齢を未調整 ◼ glm(formula, family="poisson", data) ◆ formula: event~曝露の変数名+offset(log(interval)) ◆ data: データフレームのオブジェクト名 発生率の比 23
オフセット項のあるポアソン回帰分析 個人・年齢を調整 (計算負荷高) ◼ glm(formula, family="poisson", data) ◆ formula: event~曝露の変数名+age+indivL+offset(log(interval)) ◆ data: データフレームのオブジェクト名 発生率の比 24
条件付きポアソン回帰分析 個人・年齢を調整 (計算負荷低) ◼ library(gnm) ◼ gnm(formula, eliminate=indivL, family="poisson", data) ◆ formula: event~曝露の変数名+age+offset(log(interval)) ◆ data: データフレームのオブジェクト名 発生率の比 25
条件付きポアソン回帰分析 個人・遅延期間を調整 ◼ library(gnm) ◼ gnm(formula, eliminate=indivL, family="poisson", data) ◆ formula: event~曝露の変数名+offset(log(interval)) ◆ data: データフレームのオブジェクト名 遅延期間の発 生率の比 焦点期間の発 生率の比 26
標準的自己対照ケースシリーズの関数 ◼ library(SCCS) ◼ standardsccs(formula, indiv, astart, aend, aevent, adrug, aedrug, agegrp=NULL, expogrp=0, data) ◆ formula: event~曝露名 ◆ indiv: 患者ID ◆ astart: 観察開始日 ◆ aend: 観察終了日 ◆ aevent: イベント発生日 ◆ adrug: 焦点期間の開始日 ◆ aedrug: 焦点期間の終了日 ◆ agegrp: 調整する年齢 (2番目の年齢水準の開始日) ◆ expogrp: 0 = [adrug+0, aedrug] c(-14, 0) = [adrug-14, adrug-1]; [adrug+0, aedrug] ◆ data: データフレームのオブジェクト名 27
アウトプット 焦点期間の発 生率の比 28
自己対照ケースシリーズ研究 ③仮定と仮定逸脱の対処法 29
仮定 仮定 仮定の逸脱例 イベント発生が,その後の曝 ✓ イベント後に曝露が減る 露に強く影響しない ✓ イベント後に曝露が増える ✓ イベント後に曝露しない ✓ イベントにより死亡リスク が上がる 曝露区分内のイベント発生率 ✓ イベント発生率が加齢/季 は一定である 節性により変化する 個人内のイベントは独立であ ✓ 初回イベントが2度目のイ る,あるいは (一度しか発生 ベントのリスク要因 しないイベントの場合) 発生 ✓ 観察期間全体のイベント発 割合が低い 生割合が10%を超える Petersen et al: BMJ. 2016 Sep 12;354:i4515. doi: 10.1136/bmj.i4515. 30
仮定逸脱への対処法[1] 仮定逸脱の条件 イベント後に一時的に 曝露が減る イベント後に一時的に 曝露が増える イベント後の長期的な 曝露の増減 イベント後の観察期間 の短縮 初回イベントが2度目 のイベントのリスク要 因 バイアスの方向性 Biased upward Biased toward the null 同上 Biased either direction ? 対処法 遅延期間を含める 遅延期間を含める 反実仮想による対 処法[2]を利用する 二段推定による対 処法[3]を利用する 初回のイベントだ けを用いる [1] Petersen et al: BMJ. 2016 Sep 12;354:i4515. doi: 10.1136/bmj.i4515. [2] Farrington CP et al: Biostatistics. 2009 Jan;10(1):3-16. doi: 10.1093/biostatistics/kxn013. [3] Farrington CP et al: Journal of the American Statistical Association, 106:494, 417-426 31
イベント後の一時的な曝露の増減の事例 ◼細菌感染・ウイルス感染 (イベント) の後 はMMRワクチン接種 (曝露) を遅らせる可 能性があるため,焦点期間の前14日間を 遅延期間と設定[1] ◼骨折 (イベント) の後はベンゾジアゼピン (曝露) が増える/減る可能性があるため, 焦点期間の前14日間を遅延期間と設定[2] [1] Stowe J et al: Vaccine. 2009 Feb 25;27(9):1422-5. doi: 10.1016/j.vaccine.2008.12.038. [2] Yang BR et al: Bone. 2021 Jul 10;153:116109. doi: 10.1016/j.bone.2021.116109. 32
自己対照ケースシリーズ研究 ④イベント依存型曝露への対処法 33
イベント後の長期的な曝露の増減の事例 ◼ロタウイルスワクチン (曝露) は腸重積 (イ ベント) の既往がある人には投与される可 能性が低い ◼インフルエンザワクチン (曝露) はギラ ン・バレー症候群 (イベント) の既往歴が ある人には投与される可能性が低い ◼急性心筋梗塞の発症後 (イベント) は呼吸 器感染症 (曝露) のリスクが増減する Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 34
反実仮想による対処法の概念と仮定 ◼概念 ◆イベント依存性が生じないよう曝露を仮想的に 変化させて推定する方法 ◼仮定 ◆観察期間はイベント発生により短くならない ◆イベントは繰り返し発生せず,発生割合が低い ◆焦点期間は有限であり,明瞭に定められる Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 35
心筋梗塞データ 呼吸感染症による急性心筋梗塞の発症 イベント発生日 曝露時点 65~80歳における 初回の急性心筋梗塞発症日の日齢 呼吸器感染症発症日の日齢 焦点期間 参照期間 データベース加入日から 6か月経過時点の日齢 0~7 8~14 参照期間 観察期間終了日 の日齢 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 36
心筋梗塞データ library(SCCS)のmidat 変数名 説明 case ID sta 観察開始日の日齢 end 観察終了日の日齢 mi 急性心筋梗塞発症日の日齢 rti 呼吸器感染症発症日の日齢 cen 観察期間の打ち切りの有無 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 37
イベント後に観察期間が短くなる現象を 避けるため打ち切りのない症例に限定 複数回の感染 (曝露) がある 38
イベント依存型曝露の関数 ◼ library(SCCS) ◼ eventdepenexp(indiv, astart, aend, aevent, adrug, aedrug, agegrp=NULL, expogrp=0, data) ◆ indiv: 患者ID ◆ astart: 観察開始日 ◆ aend: 観察終了日 ◆ aevent: イベント発生日 ◆ adrug: 焦点期間の開始日 ◆ aedrug: 焦点期間の終了日 ◆ agegrp: 調整する年齢 (2番目の年齢水準の開始日) ◆ expogrp: 0 = [adrug+0, aedrug] c(-14, 0) = [adrug-14, adrug-1]; [adrug+0, aedrug] ◆ data: データフレームのオブジェクト名 39
標準型の相対リスク 焦点期間の発 生率の比 40
イベント依存型曝露の相対リスク 焦点期間の発 生率の比 41
自己対照ケースシリーズ研究 ⑤イベント依存型観察期間への 対処法 42
イベント後に観察期間が短くなる事例 ◼脳卒中の発症後 (イベント) に死亡リスク が上がる ◼急性心筋梗塞の発症後 (イベント) に死亡 リスクが上がる Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 43
二段推定による対処法の概念と仮定 ◼概念 ◆イベント発生日と観察期間終了日の間隔の分布 に依存する重みを推定し,その後,通常の推定 をする ◼仮定 ◆イベントは繰り返し発生せず,発生割合が低い ◆イベント後に曝露が増減しない ◆イベント後に観察期間が必ず短くならない (e.g., 死亡) ◆曝露により観察期間が短くならない Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 44
イベント依存型観察期間の関数 ◼ library(SCCS) ◼ eventdepenobs(formula, indiv, astart, aend, aevent, adrug, aedrug, agegrp=NULL, expogrp=0, initval=rep(0.1,7), data) formula: event~曝露名 indiv: 患者ID astart: 観察開始日 aend: 観察終了日 aevent: イベント発生日 adrug: 焦点期間の開始日 aedrug: 焦点期間の終了日 agegrp: 調整する年齢 (2番目の年齢水準の開始日) expogrp: 0 = [adrug+0, aedrug] c(-14, 0) = [adrug-14, adrug-1]; [adrug+0, aedrug] ◆ initval: 初期値 ◆ data: データフレームのオブジェクト名 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 45
心筋梗塞データ library(SCCS)のmidat 変数名 説明 case ID sta 観察開始日の日齢 end 観察終了日の日齢 mi 急性心筋梗塞発症日の日齢 rti 呼吸器感染症発症日の日齢 cen 観察期間の打ち切りの有無 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 46
イベント後に観察期間が短くなる現象を 許容するために打ち切り症例を含む 47
標準型の相対リスク 焦点期間の発 生率の比 48
イベント依存型観察期間の相対リスク 4つの重み推定法から適合度 の良いものを自動的に選択 EWA: exponential-Weibull age model EWI: exponential-Weibull interval model EGA: exponential-gamma age mixture model EGI: exponential-gamma interval mixture model 焦点期間の発 生率の比 49
自己対照ケースシリーズ研究 ⑥イベントが死亡の場合の対処法 50
イベントが死亡の場合のハードル ◼イベント依存型曝露への対処法の仮定 ◆ ×観察期間はイベント発生により短くならない ◼イベント依存型観察期間への対処法の仮定 ◆ ×イベント後に曝露が増減しない ◆ ×イベント後に観察期間が必ず短くならない Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 51
イベントが死亡の場合の対処法の概念と仮定 ◼概念 ◆一定条件下で反実仮想による推定法を使用する ◼仮定 ◆観察期間の終了日は名目的に規定される ◆イベントの発生割合が低い ◆有限の焦点期間が曝露の開始時点に規定される Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 52
イベントが死亡で,名目上の観察期間の 終了日の事例 観察期間 焦点期間 アウトカム [1] 日齢31から364の間 三種混合ワクチン 乳幼児突然死症候群 (ジフテリア,百日咳, 破傷風) 接種日から 30日間 [2] 日齢31から729の間 6価ワクチン (ジフテ 乳幼児突然死症候群 リア,破傷風,百日 咳,小児麻痺,B型 肝炎,インフルエン ザB型) 摂取日から14 日間 [3] 処方開始日の日齢から ブプロピオン (禁煙 2003/11/30の日齢の間 補助薬) 初回処方日 から29日間 突然死 [1] Huang WT et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2017 Jan;26(1):17-25. doi: 10.1002/pds.4141. [2] Traversa G et al: PLoS One. 2011 Jan 26;6(1):e16363. doi: 10.1371/journal.pone.0016363. [3] Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 53
突然死データ ブプロピオンによる突然死 曝露時点 イベント発生日 初回処方日 死亡日 処方後0-28日 焦点期間 初回処方日の日齢 参照期間 打ち切りされた期間 データ収集終了日 (2003/11/11) の日齢 Whitaker HJ et al: Stat Med. 2006 May 30;25(10):1768-97. doi: 10.1002/sim.2302. 54
突然死データ library(SCCS)のbupdat 変数名 説明 case ID date ブプロピオンの初回処方日 (Day 0 = 2020/10/1) bup ブプロピオンの初回処方日の日齢 death 突然死による死亡日 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 55
観察終了日の年齢を計算 56
標準型の相対リスク 焦点期間の発 生率の比 57
イベント依存型曝露の相対リスク 焦点期間の発 生率の比 曝露が1回であるため信頼区間を除 いて等しい 58
自己対照ケースシリーズ研究 ⑦落ち葉拾い 59
時間軸の選択 条件 時間軸 年齢が曝露やイベント発生に影響 年齢 季節性が曝露やイベント発生に影響 カレンダー時間 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 60
時間の単位 ◼日 ◼時 ◼分 ◼秒 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 61
焦点期間の選択 検証的研究 探索的研究 ✓ 事前に設定 ✓ 複数設定 ✓ スプラインによる方法 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 62
年齢区分 ◼事前に分割 ◼四分位等により事後的に分割 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 63
観察期間の指定 カレンダー時間,年齢,追跡可能期間の3要素 A2 F2i ある症例の観察期間 / 年 齢 追 跡 可 能 期 間 A1 F1i T1 カレンダー時間 T2 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 64
観察期間の指定事例 ◼ 適格基準 ⚫ 1990年1月1日から2003年11月1日の間における,初回の胃腸管出血 (イベント) ⚫ 18歳以上 ⚫ イベントの初回を保証するため最低6か月間のデータベース加入 要素 時点 事例 カレンダー時間 T1 1990年1月1日 T2 2003年11月1日 A1 6575日齢 (=18 × 365.25) A2 ∞ F1 データベース加入日の日齢+183日 F2 データベース終了日の日齢 年齢 追跡可能期間 65
解釈の指標 ◼寄与割合(attributable fraction) ◆特定の焦点期間において生じたイベントの 曝露による寄与割合 ◼寄与危険(attributable risk) ◆曝露により母集団においてイベントが生じ る割合 » 前提1: 曝露によるイベントは全て含まれている » 前提2: 母集団における曝露の数が既知である Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 66
MMRワクチンによる特発性血小板減少性 紫斑病 曝露時点 イベント発生日 MMRワクチン接種日の日齢 特発性血小板減少性紫斑病による入院 期間 イベント数 相対リスク 参照期間 31 1 焦点期間 13 3.23 焦点期間 参照期間 日齢: 366 0~42 参照期間 日齢: 730 Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 67
寄与割合 ◼数式 ◆𝐴𝐹 = ρ−1 ρ ρ = 相対リスク ◼解釈例 ◆焦点期間であるMMRワクチン接種後0~42 日間に生じた13例の特発性血小板減少性紫 斑病のうち,約9例 (13×0.69) は,MMRワ クチンによるものであろう (AF = 0.69=[3.23-1]/3.23) 68
寄与危険 ◼数式 ◆𝐴𝑅 = ρ−1 𝑛1 × ρ 𝐸 ; 𝑁𝑁𝐻 = 1/𝐴𝑅 ρ = 相対リスク, 𝑛1 =焦点期間における母集団のイベ ント数, 𝐸=母集団における曝露の数 ◼解釈例 ◆当該地域におけるMMRワクチン摂取件数 は約19300人であるため,焦点期間である MMRワクチン接種後0~42日間の寄与危険 は,21500件中1エピソードである (AR = 0.000465=[3.23-1]/3.23*13/19300; NNH = 21504 = 1/0.000465) 69
自己対照リスク区間デザイン 70
概要 ◼自己対照ケースシリーズ研究の亜系 ◆曝露とイベントのある患者に限定 ◆すべての患者の焦点期間の長さが等しい ◆すべての患者の参照期間の長さが等しい Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 71
活用事例 Wang SV et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2018 Apr;27(4):405-412. Schneeweiss S et al: Ann Intern Med. 2019 Mar 19;170(6):398-406. 72
研究疑問 P a t i e n t 月齢11~23か月の子供 F o c a l MMRワクチン接種後7~10日時点 R e f e r e n t MMRワクチン接種後14~56日時点 ワクチン接種後56日以内のけいれん診断 O u t c o m e (入院・救急外来) MMR=麻しん・風しん・ムンプス混合ワクチン Wang SV et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2018 Apr;27(4):405-412. 73
曝露とイベント発生日の特定 ワクチン接種がある Day 0 けいれんの診断がある Day [1, 56] Schneeweiss S et al: Ann Intern Med. 2019 Mar 19;170(6):398-406. 74
焦点期間 ワクチン接種後 7~10日時点 Day [7, 10] Schneeweiss S et al: Ann Intern Med. 2019 Mar 19;170(6):398-406. 75
参照期間 ワクチン接種後 14~56日時点 Day [14, 56] Schneeweiss S et al: Ann Intern Med. 2019 Mar 19;170(6):398-406. 76
様々な活用事例 [1] [2] [3] [4] 焦点期間 参照期間 アウトカム [1] インフルエンザワクチ ン接種後0~2日時点 インフルエンザワクチ ン接種後30~60日時点 三角筋下滑液包炎の発症 [2] 大腸内視鏡検査後1~4 週時点 大腸内視鏡検査後7~10 救急外来受診 週時点 [3] バレニクリン (禁煙補 助薬) 開始後12週間 バレニクリン (禁煙補 助薬) 開始前-52~-7と 開始後13~52週 循環器疾患による入院/ 救急外来受診 精神疾患による入院/救 急外来受診 [4] ラノラジン (狭心症治 療薬) 開始後1~20日時 点 ラノラジン (狭心症治 療薬) 開始後21~32日 時点 入院を要する発作 (てん かん/けいれん) Hesse EM et al: Ann Intern Med. 2020 Aug 18;173(4):253-261. doi: 10.7326/M19-3176. Burnett-Hartman AN et al: PLoS One. 2019 Jan 9;14(1):e0210262. Gershon AS et al: Am J Respir Crit Care Med. 2018 Apr 1;197(7):913-922. Eworuke E et al: Drug Saf. 2019 Jul;42(7):897-906. doi: 10.1007/s40264-019-00798-2. 77
強みと弱み ◼強み ◆繰り返し発生するイベントに適している ◆時間依存共変量を調整できる ◆年齢を調整しなくても良い ◼弱み ◆イベント発生が,その後の曝露や観察期間 に影響してはならない Cadarette SM et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2021 Jun;30(6):671-684. 78
曝露クロスオーバーデザイン 79
概要 要素 観点 条件 患者のイベント発生率が曝露前後で異な るか アウトカム 基準日 繰り返し発生するイベント (あるいはイ ベント発生率が5%以下のイベント) (通常は) 曝露日 追跡期間 時間の単位 時間の分類 基準日の前後 28日間/1週間など 参照期間/誘導期間/焦点期間 Redelmeier DA: J Clin Epidemiol. 2013 Sep;66(9):955-63. 80
活用事例 Nelson KE et al: Pediatrics. 2019 Feb;143(2):e20182863. doi: 10.1542/peds.2018-2863. 2 Minute Medicine: https://www.2minutemedicine.com/health-care-use-stable-after-feedingtube-placement-in-children-with-neurologic-impairment/ 81
研究疑問 P a t i e n t 神経学的機能障害を有する1~17歳 F o c a l 胃ろう設置後2年 R e f e r e n t 胃ろう設置前2年 O u t c o m e 予定外入院の日数 Nelson KE et al: Pediatrics. 2019 Feb;143(2):e20182863. doi: 10.1542/peds.2018-2863. 82
バンブープロット 胃ろう設置 参照期間 誘導期間 焦点期間 参照期間の発生率: 0.23日/週 焦点期間の発生率: 0.21日/週 発生率の比: 0.92 Nelson KE et al: Pediatrics. 2019 Feb;143(2):e20182863. doi: 10.1542/peds.2018-2863. 83
様々な活用事例 [1] [2] [3] [4] 焦点期間 参照期間 アウトカム [1] テストステロン (男性 ホルモン) 開始後1年間 テストステロン (男性 ホルモン) 開始前4.5年 間 救急医療を要する外傷 [2] COVID-19の発症前7日 時点から後30日時点の 間 COVID-19の発症前120 日時点から前30日時点 の間 (包括的に) 合併症 [3] 初回の白内障手術の後 1年間 初回の白内障手術の前 4.5年間 救急医療を要する交通事 故 [4] 熱傷による入院の後3 年間 熱傷による入院の前3 年間 精神疾患による受診 Yarnell CJ et al: Am J Med. 2021 Jan;134(1):84-94.e6. doi: 10.1016/j.amjmed.2020.07.037. Murk W et al: CMAJ. 2021 Jan 4;193(1):E10-E18. doi: 10.1503/cmaj.201686. Schlenker MB et al: JAMA Ophthalmol. 2018 Sep 1;136(9):998-1007. doi: 10.1001/jamaophthalmol.2018.2510. Mason SA et al: J Am Coll Surg. 2017 Oct;225(4):516-524. doi: 10.1016/j.jamcollsurg.2017.06.004. 84
強みと弱み ◼強み ◆安定的な個人内要因を統制できる ◆対照群を必要としない ◆明瞭な焦点期間の仮定が必要ない ◼弱み ◆季節変動による影響を受ける ◆生存者バイアスの影響を受ける ◆誘導期間等の設定による影響を受ける Redelmeier DA: J Clin Epidemiol. 2013 Sep;66(9):955-63. 85
推薦文献 最良の手引き Farrington P et al: Self-Controlled Case Series Studies: A Modelling Guide with R, 2021. 86