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May 24, 22
スライド概要
臨床疫学研究における NDBの利活用 奥村泰之 公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 心の健康プロジェクト 主席研究員 グランフロント大阪 北館タワーB10階 第1回 NDBユーザ会 2019/2/27 (水) 13:10~14:10 カンファレンスルームB01+B02
発表の構成 ◼ 研究成果の概要 ◼ ISPEの報告ガイドライン ◼ NDBの落とし穴 ◆ 精神病床への新規入院患者における在院日数 ◆ 精神科急性期の医師配置水準とアウトカムの関連 ◆ 精神病床退院後早期の精神科受診と再入院リスクの関連 ◆ 子どもに対する抗精神病薬の副作用モニタリングの実施率 3
精神病床への新規入院患者における在院日数 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,立森久照: Journal of Epidemiology. in press. https://doi.org/10.2188/jea.JE20180096 研究の背景 • • 厚生労働省は,新たに入院する精神障害者は,原則 1 年未満で退院する体制を確保するべきとしている。 在院日数は退院促進施策の基盤となる情報であるが,これまでの推計法では,一病院内の在院日数に限 られ転院を考慮できないなど,方法論上の課題があった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2016年3月の間に,精神病床へ新 たに入院した605,982患者について,入院から地域に退院するまでの日数を評価した。 主要な結果 • • 患者全体における360 日以内の退院率は 85.7%であった。 退院率は,入院料や病院ごとに大きく異なっていた。 読売新聞 2018年10月13日
精神科急性期の医師配置水準とアウトカムの関連 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,佐方信夫: Neuropsychiatric Disease and Treatment 14: 893-902, 2018. https://doi.org/10.2147/NDT.S160176 研究の背景 • 精神病床での医師数は,入院患者48名に対して医師1名と定められている。この数は,一般病床の3分の 1,フランスやイギリスの6分の1に相当する。 平成 26 年度診療報酬改定より「精神科急性期治療病棟入院料1」において,入院患者 16 人に対して医 師1名を配置した場合に,1日 500 点を加算できるようになった。 この加算は,密度の高い医療を提供し在院日数の短縮を図る観点から新設されたものであるが,高水準 の医師配置が患者のアウトカムの向上に寄与するかを検討した研究は国際的にも限られていた。 • • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年10月から2015年9月の間に,精神科急性期 治療病棟へ新たに入院した13,138患者について追跡した。 主要な結果 高水準の医師配置は,①長期入院の抑制,②再入院の抑 制,③退院後の受診回数の増加と関連していた。 退院90日以内の再入院 15 20 再入院率 (%) 長期入院率 (%) 90日超の長期入院 21.3 15 16.9 10 5 0 14.4 13.0 10 5 0 高配置 低配置 高配置 低配置 退院90日以内の外来受診回数 構成比率 (%) • 読売新聞 2018年4月14日 30 30.0 30.4 医師配置 20 22.2 17.5 10 20.6 15.0 16.4 17.5 高配置 16.9 13.4 0 0回 1-2回 3-4回 5-6回 7回以上 低配置
精神病床退院後早期の精神科受診と再入院リスクの関連 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵: Psychiatry Research 270: 490-495, 2018. https://doi.org/10.1016/j.psychres.2018.10.020 研究の背景 • • • 精神病床退院後早期から精神科へ受診することは,回復と予防を促すために重要と信じられている。 事実,多くの国では,退院後早期の精神科受診を「医療の質」の評価指標としている。 しかし,退院後早期の精神科受診が再入院リスクの減少に寄与するかは,いまだ不明瞭であった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,精神病床へ新 たに入院した統合失調症あるいは双極性障害を有する64歳以下の48,579患者について,入院の180日前か ら,退院の210日後まで追跡して評価した。 主要な結果 • • 毎日新聞 2018年10月29日 退院30日以内に精神科へ受診している割合は85%であり, 米国やカナダよりも高い水準であった。 退院30日以内に精神科へ受診していない人と比べると, 精神科へ受診した人では,その後の180日以内に再入院 する割合が46%低かった (21.7% vs. 37.5%)。 180日以内の再入院 (退院31日目から210日目) 早期の精神科受診 21.7 受診あり 受診あり 37.5 受診なし 0 10 20 再入院率 (%) 30 受診なし
日本における抗認知症薬の処方量 奥村泰之,佐方信夫: International Journal of Geriatric Psychiatry 33: 1286-1287, 2018. https://doi.org/10.1002/gps.4892 研究の背景 • これまでの抗認知症薬のエビデンスには,①臨床試験の参加者と実臨床の年齢層などの乖離が大きい, ②抗認知症薬のリスク・ベネフィットバランスには議論がある,という重大な限界があった。 こうした事実から診療ガイドラインにおいて抗認知症薬処方の推奨度を弱くしている国もあるが,日本 における推奨度は強いため,抗認知症薬の処方量が大きくなっていることが予想される。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2015年4月から2016年3月の間に,抗認知症薬を 処方された1,733,916患者について評価した。 主要な結果 • • 毎日新聞 2018年5月28日 抗認知症薬の人口あたりの処方率は,年齢とともに高くなり, 85歳以上では17%に達していた。 総処方量のうち,85歳以上の患者への処方が47%を占めていた。 抗認知症薬総処方量の構成比率 人口あたりの抗認知症薬の処方率 17.0 85歳以上 9.4 80-84歳 年齢区分 2.6% 1.2% 6.3% 0-64歳 4.2 75-79歳 15.2% 65-69歳 46.8% 1.4 70-74歳 70-74歳 75-79歳 80-84歳 0-64歳 27.8% 0.5 65-69歳 0.0 0 5 10 処方率 (%) 15 85歳以上
抗認知症薬処方前における甲状腺機能検査の実施率 佐方信夫,奥村泰之: Clinical Interventions in Aging 13: 1219-1223, 2018. https://doi.org/10.2147/CIA.S168182 研究の背景 • • • 認知症の診断では,治療可能な疾患による認知症と不可逆な認知症とを鑑別することが重要である。 甲状腺機能低下症は,認知症を引き起こす疾患であり,甲状腺ホルモンの補充により治療可能である。 そのため診療ガイドラインでは,認知症の診断を進める上で甲状腺機能検査を実施することが推奨され ているが,これまで,その実施状況は不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2015年4月から2016年3月の間に新たに抗認知症 薬を処方された262,279患者について,処方開始前1年間における甲状腺機能検査の実施状況を評価した。 主要な結果 • • 朝日新聞 2018年8月24日 甲状腺機能検査の実施率は33%であった。 認知症疾患医療センターにおける検査の実施率は,診療 所の2.2倍であった。 抗認知症薬の処方開始前1年間における甲状腺機能検査の実施率 32.6 全体 施設区分 25.8 診療所 全体 診療所 病院 38.3 病院 認知症疾患医療センター 57.1 認知症疾患医療センター 0 20 40 実施率 (%)
子どもにおけるADHD治療薬の処方実態 奥村泰之,宇佐美政英, 岡田俊, 齊藤卓弥, 根來秀樹, 辻井農亜, 藤田純一, 飯田順三: Epidemiology and Psychiatric Sciences. in press. https://doi.org/10.1017/S2045796018000252 研究の背景 • • • 子どもにおけるADHD治療薬の処方率は地域差が大きく,米国は5.3%であるが,イタリアは0.2%である。 多くの国の薬剤シェアは,メチルフェニデートが他剤を圧倒しているが,日本では特異的な規制がある。 処方率や薬剤シェアに関する情報は,薬物療法へのアクセスや規制の在り方を考える上で重要であるが, これまで日本におけるADHD治療薬の処方実態は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,ADHD治療薬を 処方された18歳以下の86,756患者について評価した。 主要な結果 • • アピタル 2018年6月9日 ADHD治療薬の人口あたりの処方率は,0.4%であった。 メチルフェニデートのシェアは64%に留まっていた。 人口あたりのADHD治療薬の処方率 全体 0.4 ADHD治療薬のシェア 0.3 16-18歳 4.9% 0.6 13-15歳 36.3% ADHD治療薬 アトモキセチン 徐放型メチルフェニデート 58.8% 0.8 7-12歳 0.0 0-6歳 0.00 0.25 0.50 処方率 (%) 0.75 1.00 併用
子どもに対する抗精神病薬の副作用モニタリングの実施率 奥村泰之,宇佐美政英, 岡田俊, 齊藤卓弥, 根來秀樹, 辻井農亜, 藤田純一, 飯田順三: Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 28: 454-3462, 2018. https://doi.org/10.1089/cap.2018.0013 研究の背景 • • • • 世界中で,抗精神病薬の処方を受ける子どもが増えている。 抗精神病薬使用は,糖尿病発症やプロラクチン上昇と関連することが知られている。 この事実から抗精神病薬を処方する際,血糖検査とプロラクチン検査を実施することが望まれている。 しかし,日本における抗精神病薬の副作用モニタリングの実施率は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,抗精神病薬を 新規に処方された18歳以下の43,607患者について評価した。 主要な結果 • • 血糖検査率は,処方時点では13.5%,1年時点では23.8%であった。 プロラクチン検査率は,処方時点では0.6%,1年時点では2.0%であった。 日経新聞 2018年7月26日
過量服薬による再入院リスクの関連要因 奥村泰之,西大輔: Neuropsychiatric Disease and Treatment 13: 653-665, 2017. https://doi.org/10.2147/NDT.S128278 研究の背景 • 過量服薬など自傷による入院は,自殺ハイリスク者を適切な治療に繋げる好機であるため,入院中に心 理社会的アセスメントを行うことが推奨されている。 しかし,心理社会的アセスメントが過量服薬による再入院の抑制に寄与するかは不確かであった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2012年10月から2013年9月の間に,過量服薬によ り入院した19~64歳の11,740患者について再入院リスクを評価した。 主要な結果 • • 入院中の精神科医師の関与は,再入院抑制との関連は認められなかった。 退院後のベンゾジアゼピン受容体作動薬処方は,再入院リスクの増大と 強く関連する要因であった。 MedPeer 2017年8月24日
過量服薬による入院の原因薬剤 奥村泰之,佐方信夫,高橋邦彦,立森久照,西大輔: Journal of Epidemiology 27: 373-380, 2017. https://doi.org/10.1016/j.je.2016.08.010 研究の背景 • • 過量服薬は,救命救急センターへの搬送率が高いなど,急性期医療資源の負担が大きい傷病である。 過量服薬の原因薬剤に関する情報は,その予防施策を立案・推進するために重要であるが,これまで日 本における過量服薬の実態は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2012年10月から2013年9月の間に,過量服薬によ り入院した21,663患者について評価した。 主要な結果 • • MEDIFAX 2017年3月17日 入院前のベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率は63%であった。 75歳以上では,ジギタリスなど循環器病薬による中毒が多かった。 入院90日以内のベンゾジアゼピン処方率 全体 循環器病薬による中毒の診断 (T46) 63.1 全体 59.3 75歳以上 4.9 年齢区分 24.3 75歳以上 全体 68.1 65-74歳 69.6 50-64歳 4.7 65-74歳 75歳以上 65-74歳 0.8 50-64歳 50-64歳 73.8 35-49歳 62.7 19-34歳 35-49歳 0.2 19-34歳 0.1 35-49歳 19-34歳 12-18歳 35.9 12-18歳 1.4 0-11歳 0 0.9 12-18歳 5.3 0-11歳 20 40 処方率 (%) 60 80 0-11歳 0 10 20 診断率 (%) 30
外来患者に対する抗不安・睡眠薬の処方実態 荒川亮介,奥村泰之,池野敬,金吉晴,伊藤弘人: 臨床精神医学 44 (7):1003-1010. 2015. 研究の背景 • 診療ガイドラインでは,抗不安・睡眠薬処方に対する推奨は慎重であり,短期間の処方に留めるなど, 限定された状況に限られている。加えて,抗不安・睡眠薬の多くを占めるベンゾジアゼピン受容体作動 薬同士の併用については,その有効性を支持する根拠はなく,不合理な多剤処方とみなされている。 これまでの抗不安・睡眠薬の処方実態に関する研究は,健保組合の患者に限られるなど限界があった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースの2011年10月診療分のサンプリングデータセットを用いて, 外来患者 (精神科32,968名,非精神科649,577名) に対する抗不安・睡眠薬の処方率と抗不安・睡眠薬の2剤 以上の処方率について評価した。 主要な結果 • • 抗不安・睡眠薬の処方率は,精神科では75%,非精神科では14%であった。 2剤以上の多剤処方率は,精神科では55%,非精神科では20%であった。 抗不安・睡眠薬の処方率 2剤以上の抗不安・睡眠薬の処方率 75.3 精神科 54.5 精神科 診療科 精神科 非精神科 14.4 非精神科 0 20.4 非精神科 20 40 処方率 (%) 60 0 20 処方率 (%) 40
統合失調症に対する抗精神病薬の処方実態 奥村泰之,野田寿恵,伊藤弘人: 臨床精神薬理 16: 1201-1215, 2013. 研究の背景 • 統合失調症に対して抗精神病薬を3剤以上の併用することを支持する科学的根拠はない,一方で,高用量 の抗精神病薬使用は副作用発現リスクの増大と関連することが知られている。 これまでの抗精神病薬の処方実態に関する研究は,一部の病院の患者に限られるなど限界があった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースの2011年10月診療分のサンプリングデータセットを用いて, 統合失調症患者 (入院7,391名, 外来5,710名) に対する抗精神病薬の3剤以上の処方率について評価した。 主要な結果 • • 朝日新聞 2013年8月20日 入院における抗精神病薬の多剤処方率は42%であった。 外来における抗精神病薬の多剤処方率は19%であった。 入院における3剤以上の抗精神病薬の処方率 全体 全体 42.1 11.5 80歳以上 外来における3剤以上の抗精神病薬の処方率 19.4 年齢区分 2.7 80歳以上 全体 23.1 70-79歳 38.6 60-69歳 11.6 70-79歳 80歳以上 70-79歳 17.9 60-69歳 60-69歳 50.8 50-59歳 50-59歳 22.1 40-49歳 56.3 40-49歳 22.8 30-39歳 57.0 30-39歳 22.2 52.9 20-29歳 0 20 40 処方率 (%) 80 30-39歳 20-29歳 10-19歳 15.5 10-19歳 60 40-49歳 18.7 20-29歳 37.8 10-19歳 50-59歳 0 20 40 処方率 (%) 60 80
タイムライン①サンプリングデータ 「統合失調症に対する抗精神病薬の 処方実態」投稿 承諾通知書の受領 3/28 7/12 2012/4 2013/4 2014/4 2015/4 5/14 申出書の提出 10/16 10/29 データの受領 「外来患者に対する抗不安・睡眠薬 の処方実態」投稿 15
タイムライン②特別抽出 「過量服薬による入院の原因薬剤」 投稿 承諾通知書の受領 3/29 11/12 2014/4 2015/4 2016/4 7/17 7/3 申出書の提出 データの受領 2017/4 7/8 「過量服薬による再入院リスクの関 連要因」投稿 16
タイムライン③特別抽出 「抗認知症薬処方前における甲状腺 機能検査の実施率」投稿 1/18 「精神病床への新規入院患者におけ「日本における抗認知症薬の処方量」 承諾通知書の受領 る在院日数」投稿 投稿 12/20 12/19 2016/4 2017/4 1/30 2018/4 10/21 9/1 申出書の提出 データの受領 2/5 「子どもにおけるADHD治療薬の処 方実態」投稿 12/26 2/28 「精神病床退院後早期の精神科受診 「精神科急性期の医師配置水準とア と再入院リスクの関連」投稿 ウトカムの関連」投稿 1/29 「子どもに対する抗精神病薬の副作 用モニタリングの実施率」投稿 17
ISPEの報告ガイドライン 18
ISPEの報告ガイドライン Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 19
ISPE報告ガイドライン透明性の3ステップ, 整然化に焦点化 医療提供 電子カルテ, レセプト情 報など Step1: 加工 ID 医薬品名 数量 患者情報 ID 性別 年齢 ID 曝露 アウトカム 共変量 Step3: 解析 Step2: 整然化 リレーショナルデータ 医薬品情報 分析データ 報告 傷病情報 ID 表1 表2 図 傷病名 診療開始日 日数 20
ISPE報告ガイドラインの構成 大項目 項目数 A. データ源 8 B. 研究法の全体像 1 C. 適格基準 12 D. 曝露の定義 5 E. 追跡期間 2 F. アウトカムの定義 3 G. 共変量の定義 4 H. 対照群の抽出法 3 I. 統計ソフトウェア 1 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 21
A. データ源 記載事項 A1. データ源の名称とデータ提供の組織名 A2. 常に更新されているデータ源からデータを抽出した日 (あるいはバージョン 番号) (例: ベンダーが研究目的にデータを切り出した日) A3. 研究者がアクセスできるデータが,ベンダーが持つデータの一部である場 合,適用した検索/抽出基準 A4. 研究に使用したデータの期間 A5. 情報の領域 (例: 医事会計システム,電子カルテ,入院・外来,プライマリ ケア・セカンダリケア,薬局,検査,レジストリ) A6. レコードリンケージあるいは通常データベースに含まれていないデータ (例: 診療録調査,調査データ) A7. 欠測値や異常値の処理法 (データ源レベルでの処理あるいはプロジェクトご との処理) A8. 標準化された形式へのデータの変換法 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 22
B. デザインダイアグラム ◼記載事項 ◆B1. 主要な時間として,加入期間,イン デックス日 (コホートへの組み入れ日),共 変量の測定期間,追跡期間,曝露の測定期 間,イベント発現日,曝露のウォッシュア ウト,アウトカムのウオッシュアウト,な どを図示 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 23
C. 適格基準 記載事項 C1. 参加者をコホートに組み入れる最初の日 (インデックス日) C2. 参加者をコホートに組み入れる単位 (例: 患者単位あるいはエ ピソード単位) C3. 適格基準を適用する順序,具体的には,インデックス日を設 定する前あるいは後に適格基準を適用しているか否か C4. インデックス日の前に,参加者がデータ源に含まれることを 保証する期間 C5. データ源への加入状況を評価するアルゴリズム,間隔を設定 するか否かを含む C6. 適格基準を評価する期間 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 24
C. 適格基準 記載事項 C7. 適格基準に使用した,薬剤,診断,処置,検査などのコード C8. コードの時間的関係。インデックス日に適格基準などの測定 期間が含まれるかを明らかにする。 C9. 診断区分の限定 (例: 主傷病 vs. 副傷病) C10. ケアのセッティングの限定 (例: 入院,救急,介護施設) C11. 曝露が新規であることを保証するためのウォッシュアウト 期間 C12. アウトカムが新規であることを保証するためのウォッシュ アウト期間 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 25
D. 曝露の定義 記載事項 D1. 曝露の種類 (例: 新規使用,継続使用,累積,時間依存) D2. 曝露によりイベントが発現しうると想定されるリスク持続期間(exposure risk window)。薬剤の場合は誘導期間の最小値と最大値の差となる。 D2a. インデックス日以降に,曝露した期間あるいは非曝露した期間として,ア ウトカムを評価しない期間(induction period) D2b. リフィルが早まった場合における,残薬への対処法 D2c. 想定されるよりも処方間隔が空く場合における,曝露が継続しているとみ なす方法 D2d. 最終処方時における投与日数を超えて,曝露とみなす期間 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 26
D. 曝露の定義 記載事項 D3. 他の曝露が始まった場合の対処法 D4. コード,コードの時間的関係,診断区分,セッティング (Cと同様) D5. 曝露を測定する期間。曝露測定期間の最終日を曝露とする。新規使用者で コホート組み入れをする場合,測定期間ではなく測定時点となる。コホート組 み入れ後に,曝露を測定する場合,追跡期間は曝露の後になる。 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 27
E. 追跡期間の定義 記載事項 E1. 参加者が曝露によりイベントを発生し得る追跡期間。追跡期 間は,曝露によるリスク持続期間を基に設定する。一方で,追 跡期間は,打ち切りのメカニズムを考慮する。 E2. 追跡を打ち切る基準 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 28
F. アウトカムの定義 記載事項 F1. イベント発生日の定義 F2. コード,コードの時間的関係,診断区分,セッティング (Cと 同様) F3. アウトカムの定義の妥当性 Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 29
G. 共変量の定義 記載事項 G1. 共変量を測定する期間 G2. リスクスコアの計算に使用する構成要素や重み G3. 特定期間における受診回数や検査回数の算定法。ケアのセッ ティングや受診/検査の種類を層別することがある。 G4. コード,コードの時間的関係,診断区分,セッティング (C と同様) Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 30
H. 対照群の抽出法 記載事項 H1. 対照群を抽出する方法 H2. 症例群にマッチした対照群を抽出するために使用する変数 H3. マッチングの構成比 (固定あるいは変動) Wang SV et al: Value Health. 2017 Sep;20(8):1009-1022. 31
研究計画の策定に解説資料を参照 奥村泰之: データベース研究の報告 (https://www.slideshare.net/okumurayasuyuki/ss-119343615) 32
奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,立森久照: Journal of Epidemiology. in press. https://doi.org/10.2188/jea.JE20180096 精神病床への新規入院患者にお ける在院日数 33
精神病床新規入院の累積退院率 34
初日入院料ごとの累積退院率 35
病院レベルの90日以内退院率 精神科救急入院料 (131病院) 最下位群 下2位群 中位群 上2位群 最上位群 精神科急性期治療病棟入院料 (369病院) 精神科救急・ 合併症入院料 (11病院) 児童・ 思春期精神科入院管理料 (35病院) 精神療養病棟入院料 (724病院) 認知症治療病棟入院料 (486病院) 0 20 40 60 80 100 90日以内の退院率 (%) 36
デザインダイアグラム データベース加入の保証期間 追跡期間 適格基準の評価期間 2013/1/1 2014/4/1 2016/3/31 2016/9/30 入院日 精神病床への新規入院 37
入院エピソードのイメージ 精神病床へ新規入院 (地域/一般病床から) 精神病床を退院 (地域/一般病床/死亡) 他の精神病床へ 転棟・転院 38
主要な定義① 項目 事例 適格基準の評価期間 2014年4月1日から2016年3月31日 インデックス日の定義 適格基準の評価期間に,精神病床に関 する入院料の算定がある最初の日 新規入院の定義 インデックス日の前日に,精神病床に 関する入院料の算定がない (一般病床 からの転棟・転院症例は含む) 退院の定義 精神病棟に関する入院料の算定が中断 した日 (精神病床間の転院は,一連の エピソードとする) 39
主要な定義② 項目 事例 データベース加入の 保証期間 インデックス日の前日から2013年1月1 日までの間に,最低1回,レセプトの 算定がある 追跡期間 インデックス日から365日間あるいは 2016年9月30日 競合リスク 院内死亡,一般病床への転棟・転院 患者IDの種類 ID0 分析単位 1患者につき複数回の入院を認める 40
入院日の落とし穴 レセプト 入院基本料の起算日 の記載 問題 対策 退院日から3か月未満 (悪性腫瘍などは1か月未 満) の間に同一傷病で同一医療機関に再入院し た場合,「今回の入院日」ではなく「前回の入 院日」が記録 入院基本料 (+ 入院時食事療養費・入院時生活 療養費) の算定が毎日なされているかを検索し, 入院料の算定が始まる日を入院日とみなす 41
退院日の落とし穴 レセプト コメントレコードの文字データ の記載 問題 退院日の記録がない 対策 入院基本料 (+ 入院時食事療養費・入院時生活 療養費) の算定が毎日なされているかを検索し, 入院料の算定が途切れる日を退院日とみなす 42
対策のイメージ 算定開始日➡入院日 患者ID 診療行為名称 算定日 A 精神病棟15対1入院基本料 2014-08-23 A 精神病棟15対1入院基本料 2014-08-24 A 精神病棟15対1入院基本料 2014-08-25 A 精神病棟15対1入院基本料 2014-08-26 算定終了日➡ 退院日 43
二重請求の落とし穴 問題 連続する同一日に複数施設から入院料が算定 対策 当該患者/エピソードを解析対象から除外する 44
問題のイメージ 入院料が重複 入院日 精神病院 総合病院 1 精神科救急入院料 2 精神科救急入院料 3 精神科救急入院料 4 精神病棟15対1入院基本料 ハイケアユニット入院医療管理料 5 精神病棟15対1入院基本料 ハイケアユニット入院医療管理料 6 精神病棟15対1入院基本料 ハイケアユニット入院医療管理料 7 精神病棟15対1入院基本料 ハイケアユニット入院医療管理料 45
精神病床の落とし穴 レセプト レセプト共通レコードの病床区分/診療行為レ の記載 コードの精神病床に関する入院料 問題 ① 精神病棟に関する入院料の算定がある症例 でも,レセプト共通レコードの病棟区分の 約5%は,精神病棟の記録がない ② 「小児入院医療管理料5」と「特殊疾患病 棟入院料2」は,入院料の算定から,精神 病床と一般・結核病床を区分できない 対策 「小児入院医療管理料5」と「特殊疾患病棟入 院料2」については,把握するのを諦める 46
問題のイメージ 複数ある病棟区分を 特定できない 入院料 病棟区分 区分番号 精神病棟入院基本料 精神 A103 特定機能病院入院基本料 (精神病棟) 精神 A104 小児入院医療管理料5 一般・結核・精神 A307 特殊疾患病棟入院料2 一般・精神 A309 精神科救急入院料 精神 A311 精神科急性期治療病棟入院料 精神 A311-2 精神科救急・合併症入院料 精神 A311-3 児童・思春期精神科入院医療管理料 精神 A311-4 精神療養病棟入院料 精神 A312 認知症治療病棟入院料 精神 A314 地域移行機能強化病棟入院料 精神 A318 47
公費医療の落とし穴 問題 NDBには公費レセプトが格納されていない 対策 一般化可能性を限界として言及する 48
NDBに含まれない公費医療 生活保護受給者(生活保護法)の実態は 公費優先に近似 公費優先 (NDBに含まれない) 戦傷病者特別援護法 保険優先 (NDBに含まれる) 障害者総合支援法 原爆被爆者援護法 精神保健福祉法 感染症法 身体障碍者福祉法 心神喪失者等医療監察法 生活保護法など 49
奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,佐方信夫: Neuropsychiatric Disease and Treatment 14: 893-902, 2018. https://doi.org/10.2147/NDT.S160176 精神科急性期の医師配置水準と アウトカムの関連 50
高医師配置によるアウトカム 退院90日以内の再入院 15 20 再入院率 (%) 長期入院率 (%) 90日超の長期入院 21.3 15 16.9 10 5 0 14.4 13.0 10 5 0 高配置 低配置 高配置 低配置 構成比率 (%) 退院90日以内の外来受診回数 30 30.0 30.4 医師配置 20 22.2 17.5 10 20.6 15.0 16.4 17.5 高配置 16.9 13.4 低配置 0 0回 1-2回 3-4回 5-6回 7回以上 51
デザインダイアグラム データベース加入の保証期間 共変量の測定期間 曝露とアウトカム (精神病床入院) のウオッシュアウト期間 追跡期間 適格基準の評価期間 2013/1/1 2014/10/1 入院日 2015/9/30 2016/9/30 退院日 精神科急性期治療病棟入院料1 への新規入院 52
流れ図 精神科急性期治療病棟入院料1(345病院) いわゆる総合病院等ではない (330病院) 加算の算定率100%/0% (190病院) 高医師配置 17,491人 (92病院) 低医師配置 15,432人 (98病院) 前180日間に精神病床 入院していない 13,138人 前180日間に精神病床 入院していない 11,540人 53
主要な定義① 項目 事例 適格基準の評価期間 2014年10月1日から2015年9月30日 インデックス日の定義 適格基準の評価期間に,「精神科急性 期治療病棟入院料1」に関する入院料 の算定がある最初の日 新規入院の定義 インデックス日の前日に,精神病床に 関する入院料の算定がない (一般病床 からの転棟・転院症例は含む) 退院の定義 精神病棟に関する入院料の算定が中断 した日 (精神病床間の転院は,一連の エピソードとする) 54
主要な定義② 項目 データベース加入の 保証期間 主な適格基準 事例 インデックス日の前181日から2013年1 月1日までの間に,最低1回,レセプト の算定がある ① いわゆる総合病院等ではない ② 新規入院のうち「精神科急性期医師 配置加算」の算定率が100%/0% ③ インデックス日の前180日間に精神病 床入院していない 55
主要な定義③ 項目 事例 曝露の定義 「精神科急性期医師配置加算」の算定 追跡期間 退院日から最低180日間 (追跡期間を保証 するため,2016年3月31日を超えて入院し ている症例は除外) アウトカムの定義 ① 90日以内の退院 ② 退院90日以内の精神病床への再入院 ③ 退院90日以内の精神科受診回数 患者IDの種類 ID0 分析単位 1患者につき複数回の入院を認めない 56
精神科急性期医師配置加算の施設基準 平成26年度改定から16:1と48:1が混在 57
病棟特定・加算届出の落とし穴 問題 対策 ① NDBでは複数の病棟を識別できない ② 適格基準の評価期間の途中から加算を開始 /中止する病院がある 加算の算定率が100%/0%の病院に限定する 58
対策のイメージ 加算の算定率が 一定の病院に限る 病院ID 10月 11月 12月 1月 2月 A 0% 0% 0% 30% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% B 0% 0% 0% 0% 0% 3月 0% 4月 0% 5月 0% 6月 0% 7月 0% 8月 0% 9月 0% C 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% D 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 0% 0% 0% 59
いわゆる総合病院等の落とし穴 問題 いわゆる総合病院注と特定機能病院では,医師配 置の標準は,加算によらず,16対1及び8対1と医 療法で規定されている 内科,外科,産婦人科,眼科及び耳鼻咽喉科を 有する100床以上の病院,並びに大学附属病院 注 対策 NDBの利用申出時に,いわゆる総合病院と特定機 能病院の医療機関マスタを提出して除外基準とす る 60
再入院の落とし穴 問題 対策 ① 入院料の連続算定から入退院日を推計する方 法では,同日/翌日再入院は,一連の入院エ ピソードとの違いを判別できない ② DPCレセプトの同一傷病7日以内再入院は,外 泊レコードに記録 ① 再入院の定義を限界/方法として記載する ② 外泊レコードの難解な処理をする 61
奥村泰之,杉山直也,野田寿恵: Psychiatry Research 270: 490-495, 2018. https://doi.org/10.1016/j.psychres.2018.10.020 精神病床退院後早期の精神科受 診と再入院リスクの関連 62
退院後早急の精神科受診と再入院 180日以内の再入院 (退院31日目から210日目) 受診あり 21.7 早期の精神科受診 受診あり 受診なし 受診なし 37.5 0 10 20 30 再入院率 (%) 63
Charlsonスコアのサブグループ分析 180日以内の再入院 (退院31日目から210日目) 38.4 >=3 23.1 Charlsonスコア 41.0 2 25.4 早期の精神科受診 受診あり 受診なし 38.7 1 22.7 36.8 0 21.0 0 10 20 30 40 再入院率 (%) 64
デザインダイアグラム データベース加入の保証期間 データベース加入の保証期間 共変量の測定期間 曝露の測定期間 追跡期間 適格基準の評価期間 2013/1/1 2014/4/1 2015/3/31 入院日 2016/3/31 2016/9/30 退院日 統合失調症/双極性障害の診断を有する 精神病床への新規入院 65
流れ図 精神病床への新規入院 (180,202人) 統合失調症/双極性障害 (77,971人) 退院後210日間のDB加入保証 (53,618人) 退院後30日以内に入院してない (48,579人) 退院30日以内に 精神科外来受診あり 7,246人 退院30日以内に 精神科外来受診なし 41,333人 66
主要な定義① 項目 事例 適格基準の評価期間 2014年4月1日から2015年3月31日 インデックス日の定義 適格基準の評価期間に,精神病床に関 する入院料の算定がある最初の日 新規入院の定義 インデックス日の前日に,精神病床に 関する入院料の算定がない (一般病床 からの転棟・転院症例は含む) 退院の定義 精神病棟に関する入院料の算定が中断 した日 (精神病床間の転院は,一連の エピソードとする) 67
主要な定義② 項目 データベース加入の 保証期間 主な適格基準 事例 ① 入院日の前181日から2013年1月1日 までの間に,最低1回,レセプトの 算定がある ② 退院日の後211日から2016年9月30 日までの間に,最低1回,レセプト の算定がある ① 65歳未満 ② 退院月の主傷病が統合失調症/双極 性障害 ③ 退院後30日以内に入院していない 68
主要な定義③ 項目 事例 曝露の定義 「通院・在宅精神療法」の算定 追跡期間 退院日から最低210日間 (追跡期間を保証 するため,180日を超えて入院している症 例は除外) アウトカムの定義 退院後31~210日目における精神病床への 再入院 患者IDの種類 ID0 分析単位 1患者につき複数回の入院を認めない 69
重複診断の落とし穴 問題 診断基準上,重複しえない診断が発生する (例: 統合失調症と双極性障害の重複診断は約20%) 対策 何かしらの主傷病選択法を使う 70
対策のイメージ 厚生労働省: 別紙10 主傷病判定の考え方 (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000Hokenkyoku/0000090762.xls) 71
Charlsonスコア(認知症)の落とし穴 問題 傷病名マスタのICD-10-1に対応する傷病名コード では,Charlsonスコアで定義される認知症(ICD-10: F00, F01, F02, F051)の数が過少となる 対策 傷病名マスタのICD-10-1とICD-10-2を併用する 72
問題のイメージ 傷病名マスタのICD-10-1により,Charlsonの認知症 (F00, F01, F02, F051)に対応する,傷病名コードを抽出 すると,4大認知症のうち3つが同定できない 傷病名 血管性認知症 傷病名 ICD-10-1 ICD-10-2 コード (基礎疾患の (症状発現の分 分類番号) 類番号) 8842571 F019 アルツハイマー型認知症 8842549 G309 F009 前頭側頭葉型認知症 8844891 G310 F020 レビー小体型認知症 8845840 G318 F028 73
データベース加入の落とし穴 問題 NDBには加入者台帳情報が格納されていない 対策 レセプトが発生している集団に限定する 国保加入 生保受給 生保受給・院外死亡により離 脱したか,単に受診していな いのか判別できない 統合失調症の 精神病床入院 74
曝露の測定期間の落とし穴 対策 ① 曝露の測定期間に,アウトカムのイベント が発現することがある ② 曝露の測定期間に,曝露群となりえない集 団に変化することがある 曝露の測定期間に適格基準を設ける 退院日 退院30日以内の入院(精神/一般) を除外する 問題 精神科外来受診の測定期間 (30日間) 精神病床への再入院の追跡期間 (180日間) 75
奥村泰之,宇佐美政英, 岡田俊, 齊藤卓弥, 根來秀樹, 辻井農亜, 藤田純一, 飯田順三: Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 28: 454-3462, 2018. https://doi.org/10.1089/cap.2018.0013 子どもに対する抗精神病薬の副 作用モニタリングの実施率 76
抗精神病薬の処方継続率 77
血糖検査の累積実施率 78
デザインダイアグラム データベース加入の 保証期間 データベース加入の 保証期間 追跡期間 曝露のウオッシュアウト 適格基準の評価期間 2013/1/1 2014/4/1 2015/3/31 2016/3/31 2016/9/30 新規処方日 18歳以下における抗精神病薬の新規処方 79
流れ図 18歳以下への抗精神病薬処方 (111,968人) 抗精神病薬の新規処方 (54,897人) 新規処方日の前180日から後480日の間に, 投薬・検査が包括される診療行為の算定が ない (53,618人) 新規処方日の前180日から後480日の間に, データベースに加入している (43,608人) 80
主要な定義① 項目 事例 適格基準の評価期間 2014年4月1日から2015年3月31日 インデックス日の定義 適格基準の評価期間に,抗精神病薬 (クロザピンとベゲタミンを除く) の処 方がある最初の日 新規処方の定義 インデックス日より前180日の間に抗 精神病薬の処方がない 処方継続の猶予期間 (処方中断の定義) 服薬予定の最終日から30日以内の追加 処方 81
主要な定義② 項目 データベース加入の 保証期間 主な適格基準 事例 ① 新規処方日の前181日から2013年1 月1日までの間に,最低1回,レセプ トの算定がある ② 新規処方日の後481日から2016年9 月30日までの間に,最低1回,レセ プトの算定がある ① 18歳以下 ② 新規処方日の前180日から後480日の 間に,投薬・検査が包括される診療 行為の算定がない 82
主要な定義③ 項目 事例 追跡期間 新規処方日から450日間 (処方継続の猶予 期間の評価のため480日) アウトカムの定義 新規処方日の前30日から後450日間におけ る血糖検査 (HbA1cを含む) 競合リスク 抗精神病薬の処方中断 患者IDの種類 ID0 分析単位 1患者につき複数回の新規処方を認めない 83
医薬品マスタの落とし穴 問題 新しい医薬品マスターが,調査年に上市されて いる全医薬品をカバーしているとは限らない 対策 調査年と同年の医薬品マスターを使う 84
問題のイメージ 28種の抗精神病薬について, 2018年の医薬品マスタを使うと, 2014年の77規格が漏れる 85
処方継続の落とし穴 問題 処方が中断されているか,受診が遅れているだ けか判別がつかない 対策 処方継続の猶予期間を設ける 処方 (28日分) 処方なし (28日間) 処方 (28日分) 処方 (84日間) 86
屯服薬の落とし穴 レセプト 内服薬の使用量の欄には1日量,調剤数量/回数 の記載 の欄には投与日数 問題 調剤レセプトにおける屯服薬の場合,使用量の 欄には「1回あたりの用量」ではなく「1調剤ご との投薬全量」が,調剤数量の欄には「1回」, 1回用量の欄には「1回あたりの用量」(欠測が 多い) が記録 対策 1回用量の記載がある場合は「1日1回の用量と みなして調剤数量を計算し,使用量の欄に1回 用量を挿入する」,1回用量の記載がない場合 は「1日1回の使用とみなして,使用量と調剤数 量を反転する」 87
対策のイメージ① 1回用量の記載がある場合 患者ID 医薬品名 調剤数量 使用量 1回用量 剤形 A エビリファイ錠3mg 1 28 1 屯服 B エビリファイ錠3mg 1 5 0.5 屯服 C エビリファイ錠3mg 1 10 屯服 D エビリファイ錠3mg 1 7 屯服 88
対策のイメージ① 1日1回の用量とみなして 「調剤数量」を計算 (5÷0.5=10日) 患者ID 医薬品名 調剤数量 使用量 1回用量 剤形 A エビリファイ錠3mg 28 28 1 屯服 B エビリファイ錠3mg 10 5 0.5 屯服 C エビリファイ錠3mg 1 10 屯服 D エビリファイ錠3mg 1 7 屯服 89
対策のイメージ① 「使用量」の欄を「1回用量」に 患者ID 医薬品名 調剤数量 使用量 1回用量 剤形 A エビリファイ錠3mg 28 1 1 屯服 B エビリファイ錠3mg 10 0.5 0.5 屯服 C エビリファイ錠3mg 1 10 屯服 D エビリファイ錠3mg 1 7 屯服 90
対策のイメージ② 1回用量の記載がない場合 患者ID 医薬品名 調剤数量 使用量 1回用量 剤形 A エビリファイ錠3mg 1 28 1 屯服 B エビリファイ錠3mg 1 5 0.5 屯服 C エビリファイ錠3mg 1 10 屯服 D エビリファイ錠3mg 1 7 屯服 91
対策のイメージ② 1日1回の使用とみなして 調剤数量と使用量を反転 患者ID 医薬品名 調剤数量 使用量 1回用量 剤形 A エビリファイ錠3mg 1 28 1 屯服 B エビリファイ錠3mg 1 5 0.5 屯服 C エビリファイ錠3mg 10 1 屯服 D エビリファイ錠3mg 7 1 屯服 92
包括算定の落とし穴 問題 対策 DPCレセプトを除いて,投薬・検査が包括評価 される入院料・管理料では,投薬・検査の状況 を把握できない 投薬・検査が包括される入院料・管理料の算定 がない症例に限定する 93
投薬や検査が包括評価となる対象例① 対象 医科レセプトにおける 特定入院料 療養病棟入院基本料 レセプトでの 記録状況 投薬 × 検査 × × × コメント ●特掲診療料 (投薬・検査など) の 多くが包括評価となる。 ●児童・思春期精神科入院医療管理 料では投薬が包括範囲外であるな ど,特定入院料の種類によって包 括範囲が異なる。 ●特定入院料の算定があっても, DPCレセプトではコーディング データレコードに投薬と検査の状 況が記録されている。 ●投薬と検査の多くが包括評価 ●出来高評価の薬剤は、抗悪性腫瘍 剤、医療用麻薬などに限定 94
投薬や検査が包括評価となる対象例② 対象 レセプトでの 記録状況 投薬 × 検査 × 有床診療所療養病床入 院基本料 × × 短期滞在手術等基本料 △ △ 特定入院基本料(障害 者施設等入院基本料) コメント ●障害者施設等入院基本料を算定す る病棟に90日を超えて入院してい る患者は,投薬と検査の多くが包 括評価となる。 ●投薬と検査の多くが包括評価とな る。 ●血液形態・血液化学検査などが包 括評価となる。 ●短期滞在手術等基本料3の場合、 投薬と検査の多くが包括評価とな る。 95
投薬や検査が包括評価となる対象例③ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 ○ 検査 △ 生活習慣病管理料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 慢性維持透析患者外来 医学管理料 ○ △ ●便・尿・血液形態・血液化学検査 などが包括評価となる。 小児科外来診療料 △ × 小児かかりつけ診療料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 外来診療料 ●便・尿・血液形態検査の一部が包 括評価となる。 96
投薬や検査が包括評価となる対象例④ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 ○ 検査 × 認知症地域包括診療料 ○ × ●550点未満の検査は包括評価とな る。 手術前医学管理料 ○ △ ●手術前1週間以内に行う,血液形 態・血液化学検査などが包括評価 となる。 手術後医学管理料 ○ △ ●手術後3日以内に行う,血液形 態・血液化学検査などが包括評価 となる。 地域包括診療料 ●550点未満の検査は包括評価とな る。 97
投薬や検査が包括評価となる対象例⑤ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 △ 検査 ○ 在宅がん医療総合診療 料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 介護老人保健施設 ・介護療養型医療施 設・介護医療院 × × ●一部を除き,介護保険で給付され る。 在宅時医学総合管理 料・特定施設入居時等 医学総合管理料 ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 98
今日の落とし穴 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 入院日 退院日 二重請求 精神病床 公費医療 病棟特定・加算届出 いわゆる総合病院等 再入院 ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ 重複診断 Charlsonスコア データベース加入 曝露の測定期間 医薬品マスター 処方継続 屯服薬 包括算定 99
配布資料ご周知のお願い https://www.slideshare.net/okumurayasuyuki/ 100
Take Home Messages ◼NDBには無数の落とし穴がある ◼透明性の高い報告が必須 ◼経験者間のノウハウ共有が課題 奥村泰之, 佐方信夫, 清水沙友里, 松居宏樹: Monthly IHEP 268: 16-25, 2017. 101