生物医学統計のコツ

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May 24, 22

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一般社団法人臨床疫学研究推進機構

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各ページのテキスト
1.

生物医学統計のコツ 奥村泰之 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部 日本行動療法学会 第37回大会 「行動療法研究に論文を載せよう!編集委員が教える採択の秘訣」 2011/11/28 9:30-11:00 飯田橋レインボービル (2A会議室)

2.

原井先生からのオーダーと私の回答 オーダー 質問紙を使った相関研究を書こうとしている方 を対象に,生物医学統計のコツ,「こう書くと知 ったかぶりを突っ込まれる,こう逃げれば統計 たかぶりを突 込まれる う逃げれば統計 苦手がばれない」 回答 データを取る前に「研究報告の質向上のため のガイドライン ガイド イ (Reporting ( G Guideline)」を深く ) を深く 学習することを強く推奨 2

3.

話題 STROBE声明における序論のコツ (5 min) i ) STROBE声明における例数設計のコツ (3 min) STROBE声明における統計解析のコツ (3 min) Reporting  p g Guidelineの学習の必要性 の学習の必要性 ((3 min)) 3

4.

STROBE声明における序論のコツ 序論の執筆指針 科学的背景と研究実施の合理性を説明 • 先行研究で明らかになっていることを概説 先行研究で明らかにな ていることを概説 • 本研究で新たに何を付け加えるかを記述 • 主要な最新の研究と系統的展望を言及 Vandenbroucke et al: Ann Intern Med 147: W163-194, 2007 4

5.

STROBE声明における序論のコツ 禁煙と糖尿病の発症リスク 研究目的 • 喫煙者が禁煙すると,体重増加が生じて,短期的 に糖尿病 発症リ クが上がるか に糖尿病の発症リスクが上がるか? Yeh et al: Ann Intern Med 152: 10-17, 2010 5

6.

STROBE声明における序論のコツ 禁煙と糖尿病の発症リスク 科学的背景と研究実施の合理性 1. 喫煙は糖尿病の発症リスク因子である – メタ・アナリシス (JAMA 298: 2654-64, 2007) 2. 糖尿病のリスク因子である炎症反応が禁煙によ り軽減するため,禁煙は糖尿病の発症リスクを下 げる可能性がある – コホート研究 (Ann Intern Med 167: 1676-85, 2007) • 先行研究で明らかになっていることを概説 • 本研究で新たに何を付け加えるかを記述 • 主要な最新の研究と系統的展望を言及 Yeh et al: Ann Intern Med 152: 10-17, 2010 6

7.

STROBE声明における序論のコツ 禁煙と糖尿病の発症リスク 科学的背景と研究実施の合理性 3. しかし,禁煙は体重増加のリスク因子でもある • – コホート研究 (Am J Epidemiol 148: 821-30, 1998) 禁煙は糖尿病の発症リスクを上下させる2つの可能性 4. ただ,禁煙と糖尿病の発症リスクを検討した研究 は少ない – わずか4つの先行研究の存在 • 先行研究で明らかになっていることを概説 • 本研究で新たに何を付け加えるかを記述 • 主要な最新の研究と系統的展望を言及 Yeh et al: Ann Intern Med 152: 10-17, 2010 7

8.

STROBE声明における序論のコツ 心理学における理論の衰勢の批判 心理学における理論は,科学的知見として蓄 心理学における理論は 科学的知見として蓄 積される特性が欠如している 理論は,反証されることもなく,補強されること もない 研究者が理論の関心を失うにつれて,自然消 滅するだけである ソフトサイエンスである心理学の遅い進歩 Meehl P: J Consult Clin Psychol 46: 806-34, 1978 8

9.

STROBE声明における序論のコツ Take Home Message 先行研究を網羅的に把握すること • 先行研究がない研究は,研究意義もないことが多い • 系統的展望の存在を無視してはいけない 「引用文献リスト」は「投稿論文の質」の指標 • 日本語の「教科書」「紀要」「報告書」の引用 – 査読のある最新の研究論文を引用すべき • 「日本語の学術誌を中心に」引用 – 学術誌のインパクト・ファクターも重要 学術誌のイン クト ファクタ も重要 9

10.

話題 STROBE声明における序論のコツ (5 min) i ) STROBE声明における例数設計のコツ (3 min) STROBE声明における統計解析のコツ (3 min) Reporting  p g Guidelineの学習の必要性 の学習の必要性 ((3 min)) 10

11.

STROBE声明における例数設計のコツ 例数設計の執筆指針 標本サイズの設計根拠を説明 • 意味のある結果を得るためには,狭い信頼区間の幅 になるよう大きな標本サイズが必要 標 • 広い信頼区間の幅は,研究結果の無意味さの指標 • データを取る前に,例数設計の統計手法を使うこと データを取る前に 例数設計の統計手法を使うこと – 正確度分析 (precision analysis) – 検定力分析 (power ( analysis) l i ) Vandenbroucke et al: Ann Intern Med 147: W163-194, 2007 11

12.

STROBE声明における例数設計のコツ 例数設計は研究者の「倫理」として行う 研究を始める前に,適切な標本サイズを計算し 研究を始める前に 適切な標本サイズを計算し なければならない もし十分な標本サイズを確保できないのであれ ば,研究を実施す きでない ば,研究を実施すべきでない Altman: Br Med J 281:1336-8,1980 12

13.

STROBE声明における例数設計のコツ Take Home Message 例数設計の統計手法を使うこと • 先行研究の結果を基に,例数設計の計算を行う 「信頼区間の報告」は「投稿論文の質」の指標 • 信頼区間の報告義務は昔から合意が得られている • 有意性 (p ( < .05) 05) の報告だけでは無意味 13

14.

話題 STROBE声明における序論のコツ (5 min) i ) STROBE声明における例数設計のコツ (3 min) STROBE声明における統計解析のコツ (3 min) Reporting  p g Guidelineの学習の必要性 の学習の必要性 ((3 min)) 14

15.

STROBE声明における統計解析のコツ 統計解析の執筆指針 調整する共変量も含めて,すべての統計手法を 記述すること • データを取る前に,主目的の統計手法を決定する • 欠損値の代入法,変数変換について記述 • 大原則は,「生デ 大原則は 「生データにアクセスできる知的な読者で タにアクセスできる知的な読者で あれば,結果を再現できるよう詳細を記述」すること Vandenbroucke et al: Ann Intern Med 147: W163-194, 2007 15

16.

STROBE声明における統計解析のコツ Take Home Message 統計解析は「方法」の節にすべてを書くと論理的 • 「結果」の節で統計解析の詳細を書くと,データを取っ た後に 統計解析を決定した印象を受ける た後に,統計解析を決定した印象を受ける 統計手法別のReporting Guidelineを参照すると 査読者の好感度が上がる • 日本語の統計学の教科書を読むだけでは,多くの場 合に 報告すべき情報を適切に書けない 合に,報告すべき情報を適切に書けない 16

17.

STROBE声明における統計解析のコツ Take Home Message 統計手法別のReporting Guidelineの教科書 • The Reviewer’s Guide to Quantitative Methods in the h S Social i lS Sciences i – 31種類の統計手法のガイドライン – 報告すべき内容のチェックリストを公開 • Using g Multivariate Statistics – 多変量解析の代表的な教科書 – 統計手法別に報告事例を掲載 17

18.

STROBE声明における統計解析のコツ Take Home Message 統計手法別のReporting Guidelineの論文 • 探索的・確認的因子分析 – Schmitt: J Psychoeduc Assess 29: 304-321, 2011 – Jackson et al: Psychol Methods 14: 6-23, 2009 • ロジスティック回帰分析 – Moss et al: Chest 123: 923-928, 2003 – Mikolajczyk et al: Obstet Gynecol 111: 413-419, 2008 • マルチレベル分析 マルチレ ル分析 – Jackson: Rehabil Psychol 55: 272-85, 2010 – Dedrick et al: Rev Educ Res 79: 69-102 69 102, 2009 18

19.

話題 STROBE声明における序論のコツ (5 min) i ) STROBE声明における例数設計のコツ (3 min) STROBE声明における統計解析のコツ (3 min) Reporting  p g Guidelineの学習の必要性 の学習の必要性 ((3 min)) 19

20.

Reporting Guidelineの学習の必要性 査読付き論文掲載の長い道のり 倫理委員会など 疑問の定式化 データ収集 疑問を精査 データ解析 研究計画書の執筆 研究 書 執筆 論文執筆 1 年半以上 か月から数年 3 臨床的疑問 論文印刷 20

21.

Reporting Guidelineの学習の必要性 私の戦績 投稿から印刷までの平均日数 • 287日 英語論文の掲載拒否率 • 75% = 18/(6 + 18) 非公開資料 (撮影はお控え下さい) 21

22.

Reporting Guidelineの学習の必要性 方法論的に妥当であれば採択率が上がる PLoS Oneの編集指針 • 論文の採択には,「編集長たちが興味深いと思うこと」 「より多く 読者を獲得 きる と が寄与し 「より多くの読者を獲得できること」が寄与している る • しかし,こうした判断は主観的であり,査読の遅延に影 響している は,方法論的に妥当であると判断したす • PLoS Oneは,方法論的に妥当であると判断したすべ ての論文を印刷する 研究の重要性などの判断は 読者に委ねる • 研究の重要性などの判断は,読者に委ねる http://www.plosone.org/static/information.action 22

23.

Reporting Guidelineの学習の必要性 Take Home Message 論文掲載の長い道のりを無駄にしてはいけない • 「お蔵入り問題」は多くの人の良心に背く行為 Reporting Guidelineに従うと Guidelineに従うと,方法論的に妥当な 方法論的に妥当な 論文であると査読者に説得的に主張できる Reporting Guidelineを勉強して 良い論文を行動療法研究に投稿しよう 23

24.

ご静聴ありがとうございました Further Study 心理・医学系研究者のためのデータ解析環境Rによ る統計学の研究会(http://blue.zero.jp/yokumura/workshop.html) 24