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May 24, 22
スライド概要
JMDC Claimsデータベースと レセプト情報・特定健診等情報データベースを 活⽤した臨床疫学研究の事例と留意点 奥村泰之 ⼀般財団法⼈ 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 主任研究員 2017/7/20 (⽊) 14:00~16:00 第29回 JMDC医療データセミナー フクラシア東京ステーション
発表の構成 レセプト情報 留意点 JMDCデータベース ①⼊退院⽇の不確実性 NDB ②傷病情報,医科⼊院とDPCの不統⼀性 ③医科⼊院外,治療継続の不確実性 ④医薬品情報,使⽤量と調剤数量の反転 ⑤医薬品情報,⼀般名などの⽋測問題 ⑥包括評価の不透明性 ⑦診療科情報の⽋測問題 ⑧保険離脱による追跡不能問題 ⑨公費医療レセプトの⽋測問題 ⑩医療機関情報,変更の不確実性 3
レセプト情報 4
レセプトは,保険医療機関からの請求書 誰に 何したので お⾦下さい 5
保険医療機関別に,4種のレセプト 医科 DPC ⻭科 調剤 6
レセプト情報,全国共通フォーマット 医療機関情報 都道府県 医療機関コード 傷病名情報 傷病名コード 診療開始⽇ 転機区分 修飾語コード 主傷病 レセプト共通 ⽒名 (患者ID) 性別 年齢 ⼊院年⽉⽇ 診療⾏為情報 診療⾏為コード 数量 回数 実施⽇ 医薬品情報 医薬品コード 数量 回数 実施⽇ 7
⽇単位の診療⾏為情報 処⽅⽇ごとの医薬品名・使⽤量・投与⽇数 処⽅⽇ 医薬品名 使⽤量 ⽇数 3⽉2⽇ デパス錠1mg 2錠 4⽇分 3⽉2⽇ ロヒプノール錠2 2錠 4⽇分 3⽉2⽇ リスミー錠2mg 1錠 4⽇分 3⽉2⽇ ハルシオン0.25mg錠 2錠 4⽇分 3⽉6⽇ エチゾラム錠1mg「アメル」 2錠 7⽇分 3⽉6⽇ フルニトラゼパム錠2mg「JG」 2錠 7⽇分 3⽉6⽇ リスミー錠2mg 1錠 7⽇分 3⽉6⽇ トリアゾラム錠0.25mg「⽇医⼯」 2錠 7⽇分 8
レセプト保有者,病院・審査機関・保険者 社会保険診療報酬⽀払基⾦: ⽀払基⾦ってどんなところ︖ (http://www.ssk.or.jp/kikin.html) 9
JMDCデータベース 10
JMDCデータベース, 300万⼈規模の 被保険者台帳とレセプト 株式会社⽇本医療データセンター (https://www.jmdc.co.jp/) 11
被保険者台帳の情報 加⼊者ID ⽣年⽉⽇ 性別 家族ID 本⼈家族区分 保険加⼊年⽉ 保険離脱年⽉ 12
JMDC,先⾏研究の確認法 パブリケーション実績 (https://www.jmdc.co.jp/pharma/publication/) 13
知的障害児,13%に抗精神病薬 50以上の健康保険組合の 加⼊者・被扶養者 2012年度に保険離脱なし (n = 162万⼈) 外来で知的障害の診断 (n = 3,193) 2012年4⽉1⽇に3〜17歳 (n = 2,077) 1年追跡可能 (n = 2,035) 井上祐紀, 奥村泰之, 藤⽥純⼀: 精神神経学雑誌 118(11): 823-833, 2016. 14
BZ系薬の重複処⽅*,⾝体疾患数に依存 *30⽇超の重複する⽇に同種薬が多施設より処⽅ 50以上の健康保険組合の 加⼊者・被扶養者 慢性身体疾患2つ以上 (n = 3,599) 2012年10⽉~14年9⽉に保険離脱なし (n = 1,178,361) 慢性身体疾患1つ (n = 9,490) 最初の1年にベンゾジアゼピン処⽅ (n = 58,314) 慢性身体疾患なし (n = 45,225) 4.5 2.4 0.8 0 1 2 3 4 5 BZ使用者における重複処方の割合 Okumura Y, Shimizu S, Matsumoto T: Drug and Alcohol Dependence 158: 118-125, 2016. 15
JMDCデータベースの利点と⽋点 利点 • 判別可能な保険離脱 • 綺麗なデータベース • 簡単な利⽤申請 ⽋点 • ⼤企業の健保組合に限定 • ⾼齢・国保・公費対象外 • 優しい利⽤制限 17
NDB 18
レセプト情報・特定健診等情報データベース National Database of Health Insurance Claim Information and Specified Medical Checkups (NDB) レセプト データ レセプト 請求 年度 2012年度 2013年度 厚⽣労働省: 医療ビッグデータの利活⽤について (http://www.jsn.or.jp/news/150606_ch0.pdf) 提供 NDB レセプト件数 16億8千万 17億3千万 19
NDBの第3者提供 レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドライン (http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000135460.pdf) 20
提供形態 レセプト情報・特定健診等情報データベースの第三者提供 (http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000117728.pdf) 21
NDB,先⾏研究の確認法 第三者提供の成果物集計について (http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000Hokenkyoku-Soumuka/0000155475.pdf) 22
特別抽出,研究成果11編 出版年 20171) 20172) 20173) 20164) 20165) 20166) 20157) 20158) 20159) 201410) 201311) 主著者 北澤健⽂ 奥村泰之 奥村泰之 豊川智之 細⾒光⼀ 恒⽯美登⾥ ⼤坪徹也 久保⽥潔 萩原宏美 柴⽥亜希⼦ 髙⽥充隆 雑誌名 Transplant Proc Neuropsychiatr Dis Treat J Epidemiol Dev Med Child Neurol 医療薬学 ⽇本⻭科医療管理学会雑誌 J Stroke Cerebrovasc Dis BMJ Open J Clin Pharm Ther 厚⽣の指標 医療薬学 IF 0.867 1.867 2.546 3.615 ― ― 1.559 2.562 1.833 ― ― Kitazawa, T, Matsumoto, K, Fujita, S et al: Cost Analysis of Transplantation in Japan, Performed With the Use of the National Database. Transplant Proc 2017; 49: 4-9. 2) Okumura, Y, Nishi, D: Risk of recurrent overdose associated with prescribing patterns of psychotropic medications after nonfatal overdose. Neuropsychiatr Dis Treat 2017; 13: 653-65. 3) Okumura, Y, Sakata, N, Takahashi, K et al: Epidemiology of overdose episodes from the period prior to hospitalization for drug poisoning until discharge in Japan: An exploratory descriptive study using a nationwide claims database. J Epidemiol 2017. 1) Toyokawa, S, Maeda, E, Kobayashi, Y: Estimation of the number of children with cerebral palsy using nationwide health insurance claims data in Japan. Dev Med Child Neurol 2017; 59: 317-21. 5) 細⾒光⼀: ナショナルデータベースを⽤いた抗精神病薬に よる錐体外路系症状のリスクに関する解析. 医療薬学 2016; 42: 87-97. 6) 恒⽯美登⾥, ⼭本⿓⽣, ⽯井拓男 他: ⻭数と医科および⻭科 医療費との関連: レセプト情報・特定健診等情報データベー スによる検討. ⽇本⻭科医療管理学会雑誌 2016; 51: 136-42. 7) Otsubo, T, Goto, E, Morishima, T et al: Regional variations in in-hospital mortality, care processes, and spending in acute ischemic stroke patients in Japan. J Stroke Cerebrovasc Dis 2015; 24: 239-51. 8) Kubota, K, Kamijima, Y, Sato, T et al: Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database. BMJ Open 2015; 5: e006450. 9) Hagiwara, H, Nakano, S, Ogawa, Y et al: The effectiveness of risk communication regarding drug safety information: a nationwide survey by the Japanese public health insurance claims data. J Clin Pharm Ther 2015; 40: 273-8. 10) 柴⽥亜希⼦, ⽚野⽥耕太, 松⽥智⼤, 松⽥彩⼦, ⻄本寛, 祖⽗ 江友孝: がん患者数計測資料としてのレセプト情報等の利⽤ 可能性. 厚⽣の指標 2014; 61: 6-12. 11) ⾼⽥充隆: ナショナルデータベースを⽤いた低⽤量アスピ リン療法における消化管傷害リスクに関する研究. 医療薬学 2013; 39: 471-81. 4) 23
サンプリング等,研究成果8編 出版年 主著者 雑誌名 20161) 飯原なおみ J Clin Pharm Ther 20162) 佐藤悠⼦ 20153) 中村裕樹 20154) ⽊村通男 IF 1.833 Palliative Care Research ― (和⽂誌) Jpn J Infect Dis 1.140 医療情報学 ― ― 20146) 飯原なおみ 医療薬学 医療情報学 關真美 20147) 荒川亮介 臨床精神医学 ― 20138) 奥村泰之 臨床精神薬理 ― 20145) ― 1) ihara, N, Bando, Y, Ohara, M et al: Polypharmacy of medications and fall-related fractures in older people in Japan: a comparison between driving-prohibited and drivingcautioned medications. J Clin Pharm Ther 2016; 41: 273-8. 2) 佐藤悠⼦, 藤森研司, ⽯川光⼀ 他: ナショナルデータベース を⽤いた,がん患者の死亡2週間前の終末期医療の質の評価︓ サンプリングデータセットの活⽤とその限界. Palliative Care Research 2016; 11: 156-65. 3) Nakamura, Y, Sugawara, T, Kawanohara, H et al: Evaluation of estimated number of influenza patients from national sentinel surveillance using the national database of electronic medical claims. Jpn J Infect Dis 2015; 68: 27-9. 4) ⽊村通男, 清⽔俊郎, 渋⾕雅彦 他: レセプト情報データベー スを⽤いた調査 紹介時同⽉内異施設同⼀検査実施状況. 医療 情報学 2015; 35: 213-7. 5) 飯原なおみ, 吉⽥知司, 岡⽥岳⼈ 他: わが国のナショナルレ セプトデータベースが⽰した運転等禁⽌・注意医薬品の使⽤ 実態. 医療薬学 2014; 40: 67-77. 6) 關真美, 椿広計: サンプリングデータセットを⽤いた併⽤禁 ⽌医薬品等の処⽅実態研究. 医療情報学 2015; 34: 293-304. 7) 荒川亮介, 奥村泰之, 池野敬 他: ナショナルデータベースを ⽤いた外来診療における抗不安薬・睡眠薬の処⽅実態の検討. 臨床精神医学 2015; 44: 1003-10. 8) 奥村泰之, 野⽥寿恵, 伊藤弘⼈: ⽇本全国の統合失調症患者へ の抗精神病薬の処⽅パターン ナショナルデータベースの活 ⽤. 臨床精神薬理 2013; 16: 1201-15. 24
統合失調症,⼊院患者の4割に多剤* *抗精神病薬=3種類以上 3種類以上の抗精神病薬の処⽅割合 2011年10⽉診療分 ⼊院10%・外来1%無作為抽出 (n = 979,756) 42.1 (40.9-43.2) 全体 (7391) 37.8 (23.8-53.5) 10-19歳 (45) 精神科出来⾼病棟の⼊院料 (n = 13,472) 主傷病が統合失調症 (n = 7,822) 抗精神病薬の処⽅あり (n = 7,391) 52.9 (46.1-59.5) 20-29歳 (227) 30-39歳 (656) 57.0 (53.1-60.8) 40-49歳 (1095) 56.3 (53.4-59.3) 50-59歳 (1612) 50.8 (48.3-53.3) 60-69歳 (2171) 38.6 (36.6-40.7) 23.1 (20.8-25.6) 70-79歳 (1202) 11.5 (8.5-15.1) 80歳以上 (383) 0 奥村泰之, 野⽥寿惠, 伊藤弘⼈: 臨床精神薬理 16 (8), 2013. 20 40 60 80 25
過量服薬の再発, 退院後のBZ系薬と⽤量反応関係 2012年10⽉~2013年9⽉の間に 過量服薬で初回⼊院 (n = 21,663) 19~64歳 (n = 14,665) 精神病棟に転棟・転院せず (n = 12,023) 死亡せず2013年9⽉以内に⾃宅退院 (n = 11,740) ⼊院以前に精神科治療歴あり (n = 6,790) Okumura Y, Nishi D: Neuropsychiatr Dis Treat 13: 653-665, 2017. 26
NDBの利点と⽋点 利点 ⽋点 • ⾼い悉皆性 • 判別不能な保険離脱 • 利⽤料不要 • 公費対象外 • データ解析に超絶技巧 • 厳しい利⽤制限 27
留意点① ⼊退院⽇の不確実性 28
よくある誤解 レセプトから在院⽇数を 正確に求められる レセプトから再⼊院率を 正確に求められる 29
DPC,⼊院⽇,問題と対策 レセプト DPC算定対象病棟の⼊院⽇ の記載 問題 DPC算定対象外の病棟からDPC算定対象の病棟 に転棟した場合,「⼊院⽇」ではなく「転棟 ⽇」が記録 対策 医科とDPCレセプトの2つの情報を参照する 30
DPC,退院⽇,問題と対策 レセプト DPC算定対象病棟の退院⽇ の記載 問題 特定⼊院期間を超えた場合,「退院⽇」ではな く「特定⼊院期間の最終⽇」が記録 対策 医科とDPCレセプトの2つの情報を参照する 31
対策のイメージ① 特定⼊院期間 (DPC) 出来⾼ (総括+医科) 総括対象 01-16 DPC⼊院 2014-10-18 退院 02-27 DPC退院 2015-01-15 医科 02-01 レセプト種別 診療年⽉ ⼊院⽇の記載 退院⽇の記載 DPC 2015-01 2014-10-18 2015-01-15 DPC 2014-10-18 なし 2014-10-18 なし (総括対象医科⼊院) 医科 2015-01 2015-02 (2015-01-16から算定) (2015-02-01から算定) (⼊退院⽇を検索) (⼊退院⽇を検索) 32
医科,⼊院⽇,問題と対策 レセプト ⼊院基本料の起算⽇ の記載 問題 対策 退院⽇から3か⽉未満 (悪性腫瘍などは1か⽉未 満) の間に同⼀傷病で同⼀医療機関に再⼊院し た場合,「今回の⼊院⽇」ではなく「前回の⼊ 院⽇」が記録 ⼊院基本料 (+ ⼊院時⾷事療養費・⼊院時⽣活 療養費) の算定が毎⽇なされているかを検索し, ⼊院料の算定が始まる⽇を⼊院⽇とみなす 33
医科,退院⽇,問題と対策 レセプト コメントレコードの⽂字データ の記載 問題 JMDCとNDBともに,退院⽇の記録がない 対策 ⼊院基本料 (+ ⼊院時⾷事療養費・⼊院時⽣活 療養費) の算定が毎⽇なされているかを検索し, ⼊院料の算定が途切れる⽇を退院⽇とみなす 34
対策のイメージ② 算定開始⽇➡⼊院⽇ 患者ID 診療⾏為名称 算定⽇ A ⼀般病棟7対1⼊院基本料 2013-08-23 A ⼀般病棟7対1⼊院基本料 2013-08-24 A ⼀般病棟7対1⼊院基本料 2013-08-25 A ⼀般病棟7対1⼊院基本料 2013-08-26 算定終了⽇➡ 退院⽇ 35
対策のイメージ③ 「短期滞在⼿術⼊院基本料」に注意 (短⼿3は4泊5⽇まで包括➡⾷事療養を検索) 患者ID 診療⾏為名称 算定⽇ B 短⼿3(⿏径ヘルニア⼿術(15歳以上)) 2014-08-21 B ⾷事療養標準負担額(⼀般) 2014-08-22 B ⾷事療養標準負担額(⼀般) 2014-08-23 B ⾷事療養標準負担額(⼀般) 2014-08-24 B ⾷事療養標準負担額(⼀般) 2014-08-25 B ⼀般病棟7対1⼊院基本料 2014-08-26 36
対策の限界 算定⽇の記載が義務化された2012年4⽉以降のみ適 ⽤可 退院⽇と同⽇あるいは翌⽇に再⼊院した場合,退院 した事実を検出できない 診療⾏為レコードの抽出対象期間最終⽇に退院した 場合,退院した事実を検出できない 診療⾏為レコードの抽出対象期間より前に⼊院して いる場合は,⼊院⽇を同定できない ⼊院中に算定⽇の記載が義務ではない紙レセプトか ら電⼦レセプトに切り替わっている場合は,⼊院⽇ を同定できない 37
留意点② 傷病情報,医科⼊院とDPCの不統⼀性 38
よくある誤解 傷病別の⼊院患者数の同定は簡単 39
医科,傷病名区分コードの問題* *JMDCでは傷病名区分コードは丸められている︖ 「医療資源を最も投⼊した傷病名」を 医科レセプトから類推できない 項⽬ 傷病名コード ICD-10コード 医科 ○ × 傷病名区分コード × 診療開始⽇ 主傷病コード ○ ○ DPC ○ ○ ○ (「医療資源を最も投⼊した傷病名」「副傷病 名」「主傷病名」「⼊院の契機となった傷病名」 「医療資源を2番⽬に投⼊した傷病名」「⼊院時併 存傷病名」「⼊院後発症傷病名」) × × (傷病名区分で同定可) 40
DPC,2つのコード問題* *JMDCでは傷病名コードを利⽤︖ 「傷病名コード」の欄に「未コード化傷病名 (0000999)」と記 録されていても,「ICD-10コード」の欄に「傷病名マスター に存在するコード」が記録されていることがある 項⽬ 傷病名コード ICD-10コード 医科 ○ × 傷病名区分コード × 診療開始⽇ 主傷病コード ○ ○ DPC ○ ○ ○ (「医療資源を最も投⼊した傷病名」「副傷病 名」「主傷病名」「⼊院の契機となった傷病名」 「医療資源を2番⽬に投⼊した傷病名」「⼊院時併 存傷病名」「⼊院後発症傷病名」) × × (傷病名区分で同定可) 41
対策のイメージ,⼊院契機病名の決め DPCレセプト 「⼊院の契機となった傷病名」を使⽤ 「ICD10コード」のみを使⽤ 医科⼊院レセプト 「⼊院⽇が診療開始⽇である傷病名コー ド」から「対応するICD-10コードへ変 換」したものを使⽤ 42
留意点③ 医科⼊院外,治療継続の不確実性 43
よくある誤解 レセプトから傷病別の外来患者数を 正確に求められる 44
診療開始⽇,問題と対策 レセプト 当該保険医療機関において保険診療を開始した の記載 ⽇ 問題 ⼀定期間を経過すると治癒することが想定でき る傷病でも,傷病名が残り続ける 対策 診療開始⽇から⼀定期間を経過した傷病を削除 する (傷病名と傷病に特異的な診療⾏為を組み 合わせる) 45
対策のイメージ 診療開始から1か⽉を超える 傷病名を削除 患者ID 傷病名称 診療年⽉ 診療開始⽇ A インフルエンザB型 201410 2014-04-04 B インフルエンザA型 201411 2014-04-04 C インフルエンザA型 201412 2014-12-24 D インフルエンザA型 201412 2014-12-22 E インフルエンザA型 201501 2015-01-06 F インフルエンザA型 201506 2014-12-17 46
対策の限界 「⼀定期間」の合理的設定は必ずしも容易でない 治癒することが想定できるものの,遷延することも 少なくない傷病の場合 (例: うつ病),治療継続してい るかを判別することはできない 47
留意点④ 医薬品情報,使⽤量と調剤数量の反転 48
よくある誤解 レセプトから薬剤の1⽇⽤量を 正確に求められる 49
屯服薬,問題と対策* *JMDCでは1回⽤量を除外︖ レセプト 内服薬の使⽤量の欄には1⽇量,調剤数量/回数 の記載 の欄には投与⽇数 問題 対策 調剤レセプトにおける屯服薬の場合,使⽤量の 欄には「1回あたりの⽤量」ではなく「1調剤ご との投薬全量」が,調剤数量の欄には「1回」, 1回⽤量の欄には「1回あたりの⽤量」(⽋測が 多い) が記録 1回⽤量の記載がある場合は「1⽇1回の⽤量と みなして調剤数量を計算し,使⽤量の欄に1回 ⽤量を挿⼊する」,1回⽤量の記載がない場合 は「1⽇1回の使⽤とみなして,使⽤量と調剤数 量を反転する」 50
対策のイメージ① 1回⽤量の記載がある場合 患者ID 医薬品名 調剤数量 使⽤量 1回⽤量 剤形 A マイスリー錠5mg 1 28 2 屯服 B マイスリー錠10mg 1 14 2 屯服 C マイスリー錠5mg 1 30 屯服 D マイスリー錠5mg 1 10 屯服 E マイスリー錠5mg 1 2 内服 F マイスリー錠5mg 28 1 内服 51
対策のイメージ① 1⽇1回の⽤量とみなして 「調剤数量」を計算 (28÷2=14⽇) 患者ID 医薬品名 A マイスリー錠5mg B 調剤数量 使⽤量 1回⽤量 剤形 28 2 屯服 マイスリー錠10mg 7 14 2 屯服 C マイスリー錠5mg 1 30 屯服 D マイスリー錠5mg 1 10 屯服 E マイスリー錠5mg 1 2 内服 F マイスリー錠5mg 28 1 内服 14 52
対策のイメージ① 「使⽤量」の欄を「1⽇量」に 患者ID 医薬品名 A マイスリー錠5mg B 調剤数量 使⽤量 1回⽤量 剤形 2 2 屯服 マイスリー錠10mg 7 2 2 屯服 C マイスリー錠5mg 1 30 屯服 D マイスリー錠5mg 1 10 屯服 E マイスリー錠5mg 1 2 内服 F マイスリー錠5mg 28 1 内服 14 53
対策のイメージ② 1回⽤量の記載がない場合 患者ID 医薬品名 A マイスリー錠5mg B 調剤数量 使⽤量 1回⽤量 剤形 2 2 屯服 マイスリー錠10mg 7 2 2 屯服 C マイスリー錠5mg 1 30 屯服 D マイスリー錠5mg 1 10 屯服 E マイスリー錠5mg 1 2 内服 F マイスリー錠5mg 28 1 内服 14 54
対策のイメージ② 1⽇1回の使⽤とみなして 調剤数量と使⽤量を反転 患者ID 医薬品名 A マイスリー錠5mg B 調剤数量 使⽤量 1回⽤量 剤形 2 2 屯服 マイスリー錠10mg 7 2 2 屯服 C マイスリー錠5mg 30 1 屯服 D マイスリー錠5mg 10 1 屯服 E マイスリー錠5mg 1 2 内服 F マイスリー錠5mg 28 1 内服 14 55
外⽤薬,問題と対策 レセプト 内服薬の使⽤量の欄には1⽇量,調剤数量/回数 の記載 の欄には投与⽇数 問題 対策 外⽤薬の場合,使⽤量の欄には「1回あたりの ⽤量」ではなく「1調剤ごとの投薬全量」が, 調剤数量の欄には「1回」と記録 (内服薬と同 様の形式で記録されている場合もある) 医薬品コードごとに,単位と使⽤量を乗じて1 ⽇⽤量を求め,その1⽇⽤量が添付⽂書におけ る上限を⼤きく超えるか否か (例: 2倍超となる か否か) を検索し,使⽤量と調剤数量を反転す る 56
対策のイメージ③ 単位と使⽤量を乗じて1⽇⽤量を計算 (4.5×63=283.5 mg/⽇) 患者ID 医薬品名 調剤 1⽇⽤量 単位 使⽤量 数量 (mg/⽇) A イクセロンパッチ4.5mg 4.5 63 1 283.5 B イクセロンパッチ4.5mg 4.5 28 1 126 C イクセロンパッチ13.5mg 13.5 7 2 94.5 D イクセロンパッチ18mg 18 1 30 18 E イクセロンパッチ4.5mg 4.5 1 28 4.5 57
対策のイメージ③ 添付⽂書の上限量を⼤きく超えるか 否かを検索 (上限量 = 18 mg/⽇) 患者ID 医薬品名 調剤 1⽇⽤量 単位 使⽤量 数量 (mg/⽇) A イクセロンパッチ4.5mg 4.5 63 1 283.5 B イクセロンパッチ4.5mg 4.5 28 1 126 C イクセロンパッチ13.5mg 13.5 7 2 94.5 D イクセロンパッチ18mg 18 1 30 18 E イクセロンパッチ4.5mg 4.5 1 28 4.5 58
対策のイメージ③ 使⽤量と調剤数量を反転 患者ID 医薬品名 調剤 1⽇⽤量 単位 使⽤量 数量 (mg/⽇) A イクセロンパッチ4.5mg 4.5 1 63 283.5 B イクセロンパッチ4.5mg 4.5 1 28 126 C イクセロンパッチ13.5mg 13.5 2 7 94.5 D イクセロンパッチ18mg 18 1 30 18 E イクセロンパッチ4.5mg 4.5 1 28 4.5 59
対策の限界 1⽇⽤量が添付⽂書における上限を⼤き く超える「異常値」を排除できない 60
留意点⑤ 医薬品情報,⼀般名などの⽋測問題 61
よくある誤解 薬剤クラス別の分析は簡単 薬剤1⽇⽤量の分析は簡単 62
医薬品情報,問題と対策 レセプト 医薬品コードの欄にレセプト電算処理システム の記載 ⽤コード 問題 対策 ⼀般名・薬効分類・単位などの情報はレセプト には記録されていない (JMDCでは,⼀般名と ATC分類が付与されている) ⼀般名・薬効分類・単位などの医薬品情報を付 与した独⾃の医薬品マスターを整備する 63
留意点①,マスターの年度を揃える 研究期間 2014年度 診療分 医薬品マスター 2014年度版 64
留意点②,薬効分類, ⽇本標準商品分類を使わない ベンゾジアゼピン受容体作動薬 (内服薬 33剤) 112,113,117に分散 分類コード 項⽬名 87112 催眠鎮静剤,抗不安剤 87113 抗てんかん剤 87117 精神神経⽤剤 117,抗精神病薬・気分安定薬・抗うつ薬 など多種多効な構成 65
留意点③,単位を統⼀して付与 単位を統⼀ (mg) して付与 医薬品コード 医薬品名 単位 (mg) 610409339 リスパダール細粒1% 10 610409340 リスパダール錠1mg 1 621905201 リスパダール コンスタ筋注⽤25mg 25 66
留意点⑥ 包括評価の不透明性 67
よくある誤解 レセプトから投薬や検査の実態を 正確に求められる 68
投薬や検査が包括評価となる対象例① レセプトでの 記録状況 対象 医科レセプトにおける 特定⼊院料 外来診療料 投薬 × 検査 × コメント ●特掲診療料 (投薬・検査など) の 多くが包括評価となる。 ●児童・思春期精神科⼊院医療管 理料では投薬が包括範囲外である など,特定⼊院料の種類によって 包括範囲が異なる。 ●特定⼊院料の算定があっても, DPCレセプトではコーディング データレコードに投薬と検査の状 況が記録されている。 ○ △ ●便・尿・⾎液形態検査の⼀部が 包括評価となる。 69
投薬や検査が包括評価となる対象例② レセプトでの 記録状況 対象 ⽣活習慣病管理料 投薬 △ 検査 × コメント ●院内処⽅の場合,投薬が包括評 価となる。 ●検査は包括評価となる。 慢性維持透析患者外来 医学管理料 ○ △ ⼩児科外来診療料 △ × ●便・尿・⾎液形態・⾎液化学検 査などが包括評価となる。 ●院内処⽅の場合,投薬が包括評 価となる。 ●検査は包括評価となる。 地域包括診療料 ○ × ●550点未満の検査は包括評価とな る。 70
投薬や検査が包括評価となる対象例③ レセプトでの 記録状況 対象 在宅時医学総合管理 料・施設⼊居時等医 学総合管理料 投薬 △ 検査 ○ コメント ●院内処⽅の場合,投薬が包括評 価となる。 在宅がん医療総合診療 料 △ × 介護⽼⼈保健施設 ・介護療養型医療施設 × × ●院内処⽅の場合,投薬が包括評 価となる。 ●⼀部を除き,介護保険で給付さ れる。 71
対策のイメージ 出来⾼に限定して 包括評価を研究対象から除く 2011年10⽉診療分 ⼊院10%・外来1%無作為抽出 (n = 979,756) 精神科出来⾼病棟の⼊院料 (n = 13,472) 主傷病が統合失調症 (n = 7,822) 抗精神病薬の処⽅あり (n = 7,391) 奥村泰之, 野⽥寿惠, 伊藤弘⼈: 臨床精神薬理 16 (8), 2013. 72
留意点⑦ 診療科情報の⽋測問題 73
よくある誤解 診療科別の分析は簡単 74
問題と対策* *JMDCでは独⾃アルゴリズムで代⼊︖ レセプト 診療科コード の記載 問題 診療科コードの⼊⼒は必須ではない (医科では 半数以上が⽋測) 対策 診療科別の分析を⾏わない 75
地⽅厚⽣局, 診療科付きの医療機関マスター 診療科名に記載揺れ 実際の診療科と⼀致する保証はない 76
留意点⑧ 保険離脱による追跡不能問題 77
問題と対策* *NDBでは⽒名ID併⽤により⼀定の追跡可能性はある 問題 保険離脱が⽣じると追跡不能となる 対策 保険離脱が⽣じるリスクを想定し,年齢層や追 跡期間を制限する 78
打ち切り (censoring) 追跡期間 イベント発⽣ (⼊院/死亡など) 打ち切り 79
打ち切りのメカニズム 情報的な打ち切り (informative censoring) 個々⼈がイベント発⽣に近い状態を経験して いるために,打ち切りが⽣じる場合 (中⽌/追跡 の脱落) 無情報的な打ち切り (non-informative censoring) 研究法により事前に打ち切りが⽣じることを 規定できる場合 (追跡期間中にイベント発⽣な し) Singer JD, Willett JB: Applied Longitudinal Data Analysis. Oxford University Press. 2003. 80
保険離脱リスクと打ち切りメカニズム 無情報的な打ち切り の可能性 新卒 情報的な打ち切り の可能性 社会的機能を損なう傷病 発症による失職 転職 定年退職 75歳の誕⽣⽇ 81
留意点⑨ 公費医療レセプトの⽋測問題 82
よくある誤解 NDBの悉皆性は万全 83
問題と対策 問題 NDBには公費レセプトが格納されていない 対策 限界を認識する 84
公費医療の種類 ⽣活保護受給者 (⽣活保護法) の実態は 公費優先に近似 公費優先 (NDBに含まれない) 戦傷病者特別援護法 保険優先 (NDBに含まれる) 障害者総合⽀援法 原爆被爆者援護法 精神保健福祉法 感染症法 ⾝体障碍者福祉法 ⼼神喪失者等医療監察法 ⽣活保護法など 85
限界のイメージ ⽣保受給により離脱したか,単に受診し ていないのか判別できない 国保加⼊ ⽣保受給 統合失調症の 発症 86
留意点⑩ 医療機関情報,変更の不確実性 87
よくある誤解 レセプトでは同じ医療機関に継続的 に受診していることを同定できる 88
問題と対策 問題 医療機関コードが変わらない保証はなく,移転, 統合や運営⺟体の変更などがある場合は,医療 機関コードも変更される 対策 同⼀診療所への継続受診などは検討できないと 認識する 89
Take Home Messages レセプトには無数の落とし⽳がある ハンドリング経験者を研究グループに 経験者間のノウハウの共有が必要 ナショナルデータベースの学術利⽤促進に向けて: レセプトの落とし⽳ 10⽉印刷予定 90