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June 24, 17
スライド概要
第17回情報メディア学会研究大会の発表スライドです。
1977年茨城県生まれ|皇學館大学文学部国文学科准教授・図書館司書課程|つくば→スロベニア→伊勢|図書館情報学(文学館・文学散歩・文学アーカイブ・ウィキペディアタウン・学生協働・読書会)|ビブリオバトル普及委員会代表理事(二代目)済|知的資源イニシアティブLibrary of the Year選考委員長|伊勢河崎一箱古本市
学⽣主体による本を活⽤した コミュニティづくりの可能性と展望 ―ビブリオバトル@伊勢河崎と伊勢河崎⼀箱古本市の実践事例から― 2017年6⽉24⽇(⼟) 情報メディア学会 第16回研究⼤会 皇學館⼤学⽂学部国⽂学科 岡野 裕⾏
1.「伊勢・本のまちプロジェクト」とは ●皇學館⼤学のなかで、「本」や「図書館」に関⼼を持つ 学⽣団体が集まり、実施しているプロジェクトのこと。 ●「本を活⽤したコミュニティづくり」をコンセプトに 掲げている。 ●企画の内容としては、ビブリオバトルと⼀箱古本市を、 同じ空間のなかで実施するというもの。 ●毎年10⽉(第4⽇曜⽇)に、伊勢河崎地域で実施され ている地元のお祭り「河崎商⼈市」と共同して⾏う。 ●これまで、2015年・2016年と2年連続で実施している。
1.「伊勢・本のまちプロジェクト」とは 以下の4団体による共同企画として実施した。 ●皇學館⼤学図書館サークル「ふみくら倶楽部」 (⼀箱古本市担当) ●皇學館⼤学ビブリオバトルサークル「ビブロフィリア」 (ビブリオバトル担当) ●皇學館⼤学 写真部 (記録担当) ●皇學館⼤学⽂学部国⽂学科 岡野研究室 ゼミ⽣ (イベント全体の進⾏担当)
2.「ビブリオバトル@伊勢河崎」の様⼦ ●勢⽥川遊歩道 船着き場・特設ステージにて実施。 ●ビブロフィリアの学⽣がバトラーとなり、エキシビションとして 普段の活動の様⼦を披露した。 ●伊勢河崎は「伊勢の台所」とも呼ばれ、現在でも蔵が⽴ち並び、 ⽔運によって発展したまち並が残る。
3.「伊勢河崎⼀箱古本市」とは 対 話 が ⽣ ま れ る 出 店 者 ら の 本 箱 が 並 ぶ 出 店 者 と 来 場 者 の 勢 ⽥ 川 遊 歩 道 沿 い の 様 ⼦
3.「伊勢河崎⼀箱古本市」とは 学 ⽣ た ち が 店 番 を す る 出 店 者 ら の 休 憩 時 に は 地 元 の デ ザ イ ナ ⾃ ら も お 客 と な る 積 極 的 に 会 場 を ⾒ 回 り 伊 勢 う ど ん 伊 勢 河 崎 ⼀ 箱 古 本 に 市 依 の 頼 看 板 河 崎 商 ⼈ 市 限 定 の
4.プロジェクトの活動⽬的 ①「⼈とつながる/本でつながる」を活動のコンセプトに 掲げることで、参加する学⽣メンバー各⾃が「本によって ⼈と⼈とがつながるための場をつくる」という意識を 持てるようにする。 ②本が⼈と⼈とをつなぐ機能を持つことを、「河崎商⼈市」 の来場者たちに体感してもらうことで、本を活⽤した まちの活性化を⽬指す。 ③活動成果を「ふみくら倶楽部」による⼤学図書館の 学⽣協働活動にフィードバックし、新たな企画提案に つなげる。
5.本棚から本を取り出すことによる効果 ①ある⼈物が所有する個⼈蔵書を、その⼈物の⼿元から 別の⼈物の⼿元に移動させるためのきっかけと場を つくり出す。 ②ある⼈物が持っている読書体験を⾔語化し、別の⼈物に 伝えられる形式に整えるための動機づけを与える。 ③ある⼈物が持つ読書体験を、別の⼈物に伝えるための きっかけと場をつくり出す。 ④本との出会いの場を創出することで、新しい読書体験を 得るためのきっかけを与える。
6.コミュニティづくりにかかわる諸要素 ①本に関わる組織や⼈の管理の問題 主催団体、主催者、学⽣スタッフ、出店参加者、バトラー、 ⼀般来場者 ②本の流通の問題 商品としての古本、紹介⽤のおすすめ本 ③本の収納⽅法の問題 ⼿荷物、可搬性のある本箱、固定された本棚 ④本の関連情報の流通や整備の問題 本の関連情報、進⾏・運営情報、出展参加者情報、書誌情報
6.コミュニティづくりにかかわる諸要素
7.ビブリオバトルの4機能の再解釈 ①参加者で本の内容を共有できる(書籍情報共有機能) ②スピーチの訓練になる(スピーチ能⼒向上機能) ③いい本が⾒つかる(良書探索機能) ④お互いの理解が深まる(コミュニティ開発機能) (⾕⼝忠⼤『ビブリオバトル』⽂藝春秋、2013.)
7.ビブリオバトルの4機能の再解釈 ①参加者で本の内容を共有できる(書籍情報共有機能) ●⼈(バトラーを含む参加者全員)と本のつながりに 関係すること ②スピーチの訓練になる(スピーチ能⼒向上機能) ●⼈(バトラー個⼈)の個⼈的な能⼒に関係すること ③いい本が⾒つかる(良書探索機能) ●⼈(バトラーを含む参加者全員)の能⼒に関係すること ④お互いの理解が深まる(コミュニティ開発機能) ●⼈(バトラー)と⼈(参加者)との交流に関すること ↓ いずれも「⼈と⼈」と「⼈と本」の関係について述べているが、 特に①④がコミュニティづくりに関係する。
8.⼀箱古本市の持つ機能 ①古本市への出店者が、個⼈の本棚を⾒つめ直すきっかけを 与える。 ②出店者が本を選ぶに際しては、以下のような条件が⾒られる。 ●販売⽤の古本は、「出店者がもっともオススメする本」は 選ばれづらい。(蔵書として残しておきたいため) ●「欲しいと思って購⼊して読んでみたが、⼿元に残さなくても いいと判断された本」が選ばれる。 ③出店者の本棚から来場者の本棚へと、本を移動させる きっかけを与える。 ④書誌情報や読書体験を参加者同⼠で共有することができる。
9.本・本箱・本棚とコミュニティづくりの関係 「本のある空間」がそれぞれどの程度の規模で、 どの程度まで持ち運びできるのかを整理して考える。
9.本・本箱・本棚とコミュニティづくりの関係 いずれも規模が⼩さいために 本の可搬性が⾼く、 なおかつ複数冊の本を同時に 扱って⾒せることができる という特徴を持つ。 ビブリオバトルも⼀箱古本市も、「本をテーマとして学⽣が 地域に出ていく」活動として有効な⼿法である。
10.⼀箱古本市における本棚・本箱・本・⼈と⼈の関係 ⼀箱古本市は参加者相互の個⼈の本棚間での本の移動を 促す装置としての機能を持つ。
11.ビブリオバトルにおける本棚・本・読書体験の関係 ビブリオバトルは個⼈の本棚から読書体験を取り出して 共有し、参加者相互の読書体験と書誌情報の受け渡しの場 としての機能を持つ。
12.実施にあたって学⽣たちに伝えておくこと ①会場に持ち込めるものは、本や本棚だけでなく、 参加者相互の読書体験も含まれていることに留意する。 ②「本棚から本を取り出す」という⾏為を促ことで、 出店者が本棚を再度⾒渡すきっかけを与えていることを 想像する。 ③オススメの本に関する情報を、不特定多数の⼈たちに 拡散することができる。
13.本によるコミュニティ活動が⽣み出すもの ①モノとしての本が存在し、それを気軽に⼿に取って 持ち運びできること。(対話のきっかけ) ②参加者がお互いの読書体験を語れるために必要な ゆったりした時間と場所があること。(対話による交流)
14.本を活⽤したコミュニティづくりの可能性 ①⼈々の所有する本が置かれている位置を変えたり(本棚から 取り出す)、⼈とのつながり⽅を変える(不特定多数の ⼈たちの本を前に並べる)ことにより、新しいつながりを ⽣み出すような本の配置ができる。 ②本をきっかけとしたコミュニティをつくり出し、⼈々の 交流や学習を⽀援する仕組みを提供できる。 ③会場内での⼈々の動き⽅や関連情報の扱いなど、 コミュニティ創出に必要な条件を意識することができる。
15.本を活⽤したコミュニティづくりの展望 ①地域のなかで本を持ち運びできる範囲や⼿法を明確化し、 実践してみること。 ②本を活⽤しながら、⼈々の活動に刺激を与えるような 考え⽅を⾝につけていくこと。 ③本に関するイベントは複数組み合わせることで、さらに 楽しみ⽅の幅が広がる。 ●今年度は「まちじゅう図書館」や「マイクロライブラリー」も 併せて実施してみる予定である。