>100 Views
June 07, 18
スライド概要
第17回情報メディア学会研究大会の発表ポスターです。
1977年茨城県生まれ|皇學館大学文学部国文学科准教授・図書館司書課程|つくば→スロベニア→伊勢|図書館情報学(文学館・文学散歩・文学アーカイブ・ウィキペディアタウン・学生協働・読書会)|ビブリオバトル普及委員会代表理事(二代目)済|知的資源イニシアティブLibrary of the Year選考委員長|伊勢河崎一箱古本市
情報メディア学会 第 17 回研究大会 2018.06.23(土) が すもの ウィキペディアタウン 示 皇學館大学文学部国文学科 岡野 裕行 1. ウィキペディアタウンはどのような観点から語られてきたか (1) コミュニティ(小林巌生) ①それぞれの地域に関する文化情報を、 ウィキペディアを通じて、 より広範な対象へと 発信することができる。 ②それぞれの地域に関する文化情報を、 ウィキペディアにアーカイブしていくことができる。 ③文化情報に関わる諸機関にとって、 それぞれの施設が立地するコミュニティの関係者と 協働することができる。 ④文化情報に関わる諸機関が、 自館の所蔵する情報資源を活用する機会をつくりだせる。 ⑤ウィキペディアに蓄積されていくコンテンツを、 オープンデータとして広く活用してもらう ことができる。 (2)図書館員(是住久美子) ①まちあるきを行う際に、対象地域のどのルートを辿っていくのかを検討しておく。 ②対象とする地域には、 どのような特徴的スポットがあるのかを探し出しておく。 ③記述しようとする項目が、 ウィキペディアの独立記事作成の目安(特筆性) に合致して いるかを考慮しておく。 ④編集候補となる項目数を、事前にある程度まで絞っておく。 ⑤編集対象となった項目についての資料を、 イベントの開催前に準備しておく。 (4)参加者(藤井慶子) ①対象物の記事を書くという与えられた課題のためにまちあるきを行い、 懸命に資料に向きあって調べるうちに、 参加者は 「知りたい」 という知的欲求が触発される。 ②情報を消費する側だけでなく、 自らの手で文章を新しく生み出し、 世界に向けて発信することの体験ができる。 その体験により、知的財産や 著作権に思いが至るようになる。 ③取り組みの成果をウィキペディアに反映させることで、 自らの言葉を 世界に向けて発信し、公開するという達成感を味わえる。 (5) ウィキペディアン(日下九八) (3)図書館(福島幸宏) ①社会の発展に寄与するために、著作権法をどのように理解・運用すれば良いのかを考える。 ②各種の動向に敏感になることで、常に情報収集を行う姿勢を身につける。 ③資料から情報を引き出し、加工するという情報の構造化の段階までの流れを見据える。 A) ウィキペディアにとってのメリット ①執筆者の増加が見込める。 ②記事の充実が見込める。 B)図書館にとってのメリット ①図書館に足を運んでもらう機会になる。 ②図書館の機能を知り、郷土資料を活用する機会となる。 C)参加者としてのメリット ①地域情報を広く発信する機会となる。 ②情報リテラシーやアカデミック・ライティングを学ぶ機会となる。 ③著作権やライセンスの基礎を学ぶ機会となる。 3. ウィキペディアタウンでできること (1)体験の共有 ①まちあるきや図書館での資料調査、記事の執筆を通じ、 共同作業(見物、調査、閲覧、執筆、編集など) が促され、 当日の参加者同士が同じ体験として共有できる。 ●同じ日の同じ時間に一緒にあるき、 まちなかの事物やモニュメントを 一緒に眺める時間を取る。 ●同じ空間のなかで、調べものや執筆に時間をかける。 ●一人で編集作業をするのではなく、誰かと一緒に作業することに 価値が生まれてくる。 ②共通のまちあるき体験をしてから編集作業にあたることで、 編集項目の文章を考える際に、 お互いの意見が相互に 確認しやすくなる。 、 ●同じ対象物を見ていても、参加者それぞれにものの見方が異なることに 気がつくことができる。 ウィキペディア側にとってみれば、 ウィキペディアに信頼性のある記事を書ける 書き手を増やすためのアウトリーチ活動の一つです。 けれども、 そうした啓蒙的な 意図とは別に、 ウィキペディアン達が普段は顔をだすことのないイベントに登場する ことにより、 リアルの世界で彼らの交流が始まっています。通常は一人活動のはずの ウィキペディアン同士が、人と会うようになるのです。普段会うことのない行政の人や、 まちづくりの人、図書館の人とこれまで行ったことのない場所で集う。相談して、 誰でもが書きやすい方法を考えたりもします。 そうした動きにより、 ウィキペディア・ コミュニティにも変化が起こっているのではと想像します。 藤井慶子「ウィキペディアタウンというプロジェクトについて」 『ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)』no.628,2017-02-13. http://www.arg.ne.jp/node/8817 (2)実施の記録化 ①「ウィキペディアタウンの参加者が更新した」 ことが公に された上で、編集の事実が記録として残される。 ●ウィキペディアタウンの当日にどういった場所をあるき、 どこで記事の 編集作業をおこなったのかについて、活動の記録がウィキペディアの システムのなかに残される。 ②ウィキペディアタウンという活動そのものがまちの歴史の 一部であり、記録化の対象になる。 ●編集の事実や活動記録は、 ウィキペディアに記録されるに留まらず、 主催者の報告記事や参加者のブログ、SNSなどにもまとめられる。 ●その成果は、実施記録として、 ウィキペディアの外部にも残される。 (3)未来の人への情報共有 ①ウィキペディアタウンに集う人たちは、図書館での文献調査 や更新作業を通して、 ウィキペディアというシステムの 歴史の一部に組み込まれていく。 ●図書館で調査した内容をもとにして、時間をかけて文章を練る。 ●参加者にとってのウィキペディアタウンは、 自らが見聞してきたことを、 百科事典の一部へと組み込んでいく作業となる。 ●また、 そのような執筆体験を通して、 それぞれのまちのできごととの 接点が生まれ、 それを自分事として考え続けるためのきっかけになる。 ②参加者自身が見て体験してきたそのまちの文化を記事と して仕上げることで、未来に生きる見知らぬ誰かに対し、 さりげなく伝えていく。 ●その言葉は意図した通りには伝わらないかもしれない。 ●ほかの誰かの上書きの編集によって消されてしまうかもしれない。 ●それでも、 まちの歴史の一部に関わることで、 自分の立ち位置を 知ることができる。思いを語り残すことができる。 人を動かす新しい体験をつくろうとするとき、人は「動かされた自分」の体験を 基準にしてしか、それをつくることはできない。未来を切り開くことと 「自分が心を 動かされたなにか」を継承し伝えることは同義だろう、 とぼくは思っている。 若林恵『さよなら未来』 (岩波書店、p.93) 2. ウィキペディアタウンの論点 ①図書館員 ②ウィキペディアン ③地元の参加者 ④よその地域からの参加者 ⑤主催者にとっての開催意義 ⑥調査に必要な情報源に関わった人たち ⑦未来のウィキペディアン 人 ⑧開催地の図書館 ⑨開催地となるまち ⑩執筆対象となった事物やモニュメント まち ⑪対象項目の記事内容の充実化 ⑫ウィキペディアタウンの実施記録の蓄積 システム 4. ウィキペディアタウンの位置づけ (1)個人の視点からウィキペディアタウンを見てみる ①現在を共有する ●まちあるきやモニュメントの撮影を通して、 現在見えているまちの姿を参加者全員で 共有する。 ●たとえ同じ対象物を眺めていても、参加者 &ef|Nţ¬óŃ ウィキペディアタウンの参加者の体験の流れ ごとの年齢や経験の違いにより、 そこに 多様な観点が出てくる。 それが後の執筆 作業にも影響を及ぼす。 ②過去に触れる ②過去に触れる ●図書館での資料調査 ●図書館の所蔵されている資料を探りながら、 まちの過去の姿を探し求める。 ●残された記録をもとに、参加者同士が協力 して事実関係を遡っていく。 ③未来を描く ●参加者同士が相談しながら、与えられた 調査項目についての文章を執筆する。 ●自分たちが書いた文章をもとにして、 ウィキペディアの更新をする。 ●ウィキペディアタウンそのものの活動記録を 残していく。 ①現在を共有する ●まちあるき ●まちの撮影 (その先の未来へ) ●まちをあるいて記事を執筆することで、 その先の未来に自分の言葉を伝えていく。 ●ウィキペディアタウンを実施することで、 ●ウィキペディアタウンを実施することで、 現実世界で見えているまちのできごとと、 現実世界のまちのできごとと、 ウェブの世界に記録されている過去の ウェブの世界に記録されている 情報とを貫く視点が見いだせる。 過去の情報とを貫く視点が見いだせる。 ②暮らしと関わる ②暮らしと関わる ●現在行っているウィキペディアタウンの ●現在おこなっているウィキペディアタウン 記録は、活動実績としてそのまちの歴史の の記録は、 活動実績としてそのまちの 一部となる。 歴史の一部となる。 関わり合いのなかに ●まちとの関わり合いのなかに、 その記録が残されていく。 それらの 記録が残されていく。 ●個人個人の普段の生活が、 まちの歴史を 形づくっている。 ●参加者同士の相談 ●記事の執筆 ●ウィキペディアの更新 ●活動記録の蓄積 ④次の現在へ ④次の現在へ (その先の未来へ) (2) 時間の流れのなかに (2) 時間の流れのなかに ウィキペディアタウンを位置づける ウィキペディアタウンを位置づける ①時代を貫く視点 ①時代を貫く視点 ③未来を描く 現実世界のまちのできごととウェブの世界を貫く ウィキペディアタウン ウィキペディア ウェブ ウェブ 図書館 資料 まち 人々の暮らし 風景 過去 現在 未来 5. 過去と未来とつながることで、現在の自分の立ち位置を考えなおす ①過去を調べる行為とは、 「私たちはこんな風に暮らしてきた」 という過去に生きた人たちの声に触れること。 ②記事の執筆を通して、 それを読む可能性がある未来に生きる人たちの姿を想像することもできる。 ③ウィキペディアタウンの参加者同士は、 それぞれが生まれ育った環境や世代は違えども、 同じタイミングでまち に関心を持ち、 同じ空間で生活してきた人たちと、現在のまちの姿について考えることができる。 ④その体験を通じて、現在の自分の立っている地平や、 自分の置かれている日常生活のことを考えるようになる。 ⑤ウィキペディアタウンとは、 あるキーワードについて、 その過去の経緯を調べ、 さらには未来の姿を想像する ことで、現在の自分が暮らしているまちを確認することにつながる。 ⑥まちという概念には、 そこに暮らす自分自身も含む。 どういう風にこのまちで暮らしてきたのか、 また、 これから どのように暮らしていきたいのか。 ウィキペディアタウンはそれらを考えるきっかけを、私たちに与えてくれる。