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November 24, 19
スライド概要
学生協働フェスタin東海2019の講演スライド(学生向け)です。
1977年茨城県生まれ|皇學館大学文学部国文学科准教授・図書館司書課程|つくば→スロベニア→伊勢|図書館情報学(文学館・文学散歩・文学アーカイブ・ウィキペディアタウン・学生協働・読書会)|ビブリオバトル普及委員会代表理事(二代目)済|知的資源イニシアティブLibrary of the Year選考委員長|伊勢河崎一箱古本市
学生協働フェスタ in 東海 2019 人と本をつなげる活動は 私とあなたとの関係を 探りあてようとすることである 2019年11月24日(日) 皇學館大学文学部国文学科 准教授 ビブリオバトル普及委員会代表 岡野 裕行
0.大学図書館における学生協働とは何か 岡野裕行.大学図書館における学生協働とは何か.情報メディア研究. vol.18,no.1,2019-06,p.29-40. https://doi.org/10.11304/jims.18.29
1.学生協働はどのように認識されてきたのか この10年間の学生協働の動向 ①学生協働には,以下の2つの目的が設定されている。 ●図書館活性化による図書館業務・サービスの向上 ●学生の修学及びキャリア形成教育の支援 ②学生を大学図書館のスタッフの一員と見なすことに加え, 学生への教育的効果やキャリア形成につなげることを 目的に含むようになっている。
1.学生協働はどのように認識されてきたのか 学生協働の定義の変遷 A)学生と図書館職員の協働による図書館活性化のための 活動のこと。 ※廣田未来,茂出木理子.学生と図書館の協働の可能性:お茶の水女子大学 LiSAプログラムについて.大学図書館研究.no.87,2009,p.1-8. B)学生の修学及びキャリア形成教育を支援するとともに, あわせて図書館業務・サービスの向上につなげていく ことを目的とする活動のこと。 ※日高友江,岡田隆.学生協働(Library Assistant)によって変わる図書館サービス: 山口大学図書館の実践.大学図書館研究.no.87,2009,p.9-14. ↓ ●学生協働の主語が大学図書館職員側に置かれており,学生への「支援」 という視点が見られる。 ●大学図書館職員が主体となり,学生たちとどのように関係していくかを 学生協働の形として想定している。
1.学生協働はどのように認識されてきたのか 学生協働の定義の変遷 C)自発的・自立的に学習支援に関与し,図書館スタッフの 一員としての働きをする活動のこと。 ※呑海沙織,溝上智恵子.大学図書館におけるラーニング・コモンズの学生 アシスタントの意義.図書館界.vol.63,no.2,2011,p.176-184. ※ただし,これは学生協働ではなく,「学生アシスタント」についての定義である。 D)図書館業務の一端を,職員とともに,利用者でもある 学生が担う活動のこと。 ※八木澤ちひろ.大学図書館における学生協働について:学生協働まっぷの事例から. カレントアウェアネス・ポータル.no.316,2013-06-20. http://current.ndl.go.jp/ca1795 ↓ ●既存の図書館サービスの範囲内における補助業務を想定している。 ●あらかじめ定められた枠内に学生たちの活動範囲が留められている。 ●“職員とともに”とあるように,職員の関与が必須のものとなっている。
1.学生協働はどのように認識されてきたのか 学生協働の定義の変遷 E)大学図書館において,学生同士あるいは学生と職員が 共通の目的のため,協力して共に活動すること。 ※学生協働ワークショップin東京実行委員会.学生協働ワークショップin東京2014. http://www.lib.ocha.ac.jp/lib-student2014. html F)大学図書館の運営に主体的にかかわる学生活動のこと。 ※平尾元彦.キャリアから考える学生協働.大学教育.vol.12,2015,p.22-27. ↓ ●“職員と学生”という関係だけではなく,“学生同士”も想定している。 ●大学図書館職員の存在が活動条件に必須ではなく,多くの人たちと 関わり合う可能性が示されている。 ●“大学図書館において”や“大学図書館の運営に”とあるように, 活動空間の範囲は大学図書館内に限定されている。 ●パートナー関係の面では,大学図書館職員に限らないという解釈の幅を 持っているが,協働空間の面では制約が残っている。
1.学生協働はどのように認識されてきたのか 学生協働の定義の変遷 G)なんらかの組織・団体と学生が協働して目的を達成する ことにより,学生に対する教育となるばかりでなく組織・ 団体にとってもメリットがある活動のこと。 ※若杉亮平,飯野昌子.北陸学院大学ヘッセル記念図書館における学生協働: 学生図書館サポーターの活動を中心に.北陸学院大学・北陸学院大学短期大学部 研究紀要.no.8,2015. ↓ ●“なんらかの組織・団体”という記述が見られるが,それに加えて 大学図書館という用語が定義に含まれなくなっている。 ●大学図書館以外の組織・団体とも協働関係が成立することで, 学生たちがいつ・どこで学生協働を行うのかが問い直されている。 ●学生協働の舞台が大学図書館という空間的な制約からも解放される。 ●実態としては大学図書館職員が学生協働に深く関与することに大きな 変化はないと考えられるが,学生協働の形態がより柔軟なものとなる。
1.学生協働はどのように認識されてきたのか 学生協働の定義の変遷 H)大学の理念や大学図書館の目的を実現するため,複数人 の学生が教職員らとともに,他者性を認識し尊重しあい ながら,図書館運営へ主体的に関わる創造的な活動であり, 実践を反省的に振り返る成長と相互承認を含む働きのこと。 ※石川敬史,近藤秀二,安達美奈子,兵賀房代,泉佳代子.大学図書館における 学生協働の意義と課題:十文字学園女子大学ライブラリーサポーターの活動を 中心に.十文字学園女子大学紀要.vol.48,no. 2,2018,p.191-203. ↓ ●“大学の理念”を実現し,“創造的な活動”のための空間を想定するならば, 大学図書館内やキャンパス内に活動の境界線を引いてしまうことには, それほど意味はないのではないかという問い直しができる。 ●学生協働の取り組みには,むしろ大学図書館という施設の枠組みから 飛び出していく力を育むことも期待されており,大学図書館職員の 想像を超える活動の成果を期待しなければならない。
2.学生協働の事例から見た学生協働の範囲 ウィキペディアタウン伊勢 伊勢河崎一箱古本市
2.学生協働の事例から見た学生協働の範囲 全国学生協働サミット 学生協働フェスタin東海2018 皇學館大学「キャンパスダイアリー」より https://www.kogakkan-u.ac.jp/campuslife
2.学生協働の事例から見た学生協働の範囲 十文字学園女子大学とキハラ 金城学院大学と三省堂 http://www.jumonji-u.ac.jp/library/julic/ sangakukyodo̲kihara/index.html http://www.kinjo-u.ac.jp/news/962.html https://twitter.com/promo̲sanseido
2.学生協働の事例から見た学生協働の範囲 ①学生と大学図書館職員 学 内 ●企画展示 ●書架整理 ●カウンター業務 ②学生同士 ●ビブリオバトル ●トークイベント ③学生と学内各部署の職員 ●オープンキャンパス ●企画展示 ④学生と教員 ●キャリアデザインプログラム ●トークイベント ●司書課程カリキュラム ⑤学生とまちの人々・まちの文化 学 外 ●公共図書館の企画展示 ●ウィキペディアタウン ●一箱古本市 ⑥学生と他大学の学生や教職員 ●大学図書館学生協働交流シンポジウム ●学生協働ワークショップin東京 ●全国学生協働サミット ●学生協働フェスタin東海 ⑦学生と行政(官学連携) ⑧学生と企業(産学連携) ●十文字学園女子大学とキハラ ●金城学院大学と三省堂 ●愛知学院大学と同文舘出版・有斐閣 ウェブ ⑨学生によるウェブの活用 ●公式ウェブサイト・ブログ・SNSの活用 ●LINEスタンプの制作
3.大学図書館における学生協働を学生視点から見る 学生協働の目的 ①大学図書館の運営に利用者の視点を取り入れること。 ②学生スタッフの学習・キャリア形成支援を行うこと。 ③学生スタッフを通じて他の学生への学習支援を行うこと。 ※八木澤ちひろ.大学図書館における学生協働について:学生協働まっぷの事例から. カレントアウェアネス・ポータル.no.316,2013-06-20. http://current.ndl.go.jp/ca1795 →これらはいずれも学生協働を職員視点から見ている。 学生のための言葉ではない。 →職員向けの言葉を自分たち寄りの視点に置き換えてみる。
3.大学図書館における学生協働を学生視点から見る 学生協働の目的を学生視点に置き換えてみる ①大学図書館の運営に利用者の視点を取り入れること。 →大学図書館の運営に間接的に参画する。 →大学図書館職員に対し,何らかの視点を提供する立場にある。 →言語化されて伝えられるものもあれば,明確には言語化されずに 気づきとして伝わるものも含まれる。 ②学生スタッフの学習・キャリア形成支援を行うこと。 →活動を通じ,自らの学習・キャリアを形成する。 →学生たちが自分自身のキャリアを考えるきっかけにする。 →学生たちは,大学図書館職員が行っている業務を見て参考にする。 ③学生スタッフを通じて他の学生への学習支援を行うこと。 →学生の立場でほかの学生に学習支援を行う。 →大学図書館職員と他の学生との間に立っていることを意識する。 両者をつないでいく視点が求められる。
3.大学図書館における学生協働を学生視点から見る 公共図書館において協働が成立する条件 ①オーナーシップ ●図書館は行政ではなく市民の持ち物である。 ②イコールパートナーシップ ●市民と行政とは対等関係にある。 ※岡本真.図書館行政における『協働』の現在と未来.地域開発.vol.626,2018, p.59-63.
3.大学図書館における学生協働を学生視点から見る 学生協働の主語について ①学生が××と協働する ②××が学生と協働する ●どちらの捉え方も可能だが,どちらの意味で学生協働という言葉を 用いているのかを意識しないと,議論がすれ違ってしまう。 ●自分の立場を中心に考えながらも,相手の立場を思う視点も 必要となってくる。
4.学生協働の再創造 学生協働はどこからでも動き出す ①協働の起点は誰からでも。 ●言い出しっぺ役は学生・図書館職員・教員のいずれもありうる。 ●学外の人や組織からの協働依頼という形もある。 ②協働の相手は誰と誰の関係でも。 ●「学生協働」である以上,学生が絡むことは必要である。 ③協働の場所はいつでもどこでも。 ●図書館内・キャンパス内・学外どこでも協働ができる。 ●大学図書館という空間だけに縛られない。 ④何が生み出されるかは,始めてみなければわからない。 ●協働は創造的な活動であり,成果があらかじめわかるものではない。 ●協働した結果として,別の人が動き出し,新たな企画も生まれる。 同時代の誰かかもしれないし,下の世代の後輩たちかもしれない。 ●よその大学に真似され,活動が全国に広まっていくかもしれない。
4.学生協働の再創造 学生協働の形は柔軟に変わる ①学生協働は何らかの決まった型があるわけではない。 ●既に他大学で行われている事例も,それが唯一の正解という わけではない。 ●他大学の事例を積極的に真似しながら,自分たちの大学図書館に ふさわしいやり方に変換していく。 ②学生協働の始まり方にも決まった手順はない。 ●誰かが「やりたい」と思ったタイミングで協働は動き出す。 ③それぞれの活動の実態に合わせて,学生協働という言葉の 定義を更新し,枠組みをその都度みんなで拡げていく。 ●型に押し込んで成型するのではなく,新しい型を探し求めたり, 型そのものを新たにデザインしてみる。 ④学生協働は,学生も職員も教員も学ぶ機会となる。 ●さまざまな関係を構築・再構築するために行う。
4.学生協働の再創造 あらためて関係を構築する ①関係を結ぶことの結果は事前には想定できない。 ●予想通りの関係構築もあれば,予想とは異なる形で関係構築が なされることもある。 ②既知の人たちとの再接続・再関係もある。 ●既に理解しているつもりだった人にも再び向きあえる。
4.学生協働の再創造 学生協働で何を生み出し,何を学ぶのか ①あなたは何ができるのか。 ②あなたはいつ誰と何がしたいのか。 ③あなたはどこで何をしたいのか。 ④あなたは学内で何に出会っているのか。 ⑤あなたは学内でどんな学びを得ているのか。 ⑥あなたは学外で誰に出会っているのか。 →以上を言語化することで,協働相手に影響を与える。 →協働相手から影響を受け,自分の考えを組み替える。 →協働相手と共鳴し,新しい関係を創造する。
5.参考文献 学生協働を考えるための実践報告など ●澁田勝.オープンキャンパスにおける図書館イベントの現状: 受験生・学生協働・教職協働の観点から.カレントアウェアネス. no.319,CA1817,2014.http://current.ndl.go.jp/ca1817 ●桂まに子.ウィキペディアタウン東山:京都女子大学図書館司書課程 におけるアクティブ・ラーニング実践.京都女子大学図書館情報学 研究紀要.no.5,2018,p.1-12. ●石川敬史,近藤秀二,安達美奈子,兵賀房代,泉佳代子. 大学図書館における学生協働の意義と課題:十文字学園女子大学 ライブラリーサポーターの活動を中心に.十文字学園女子大学紀要. vol.48,no.2,2018,p.191-203.