変調充電電流を用いた電気自動車と普通充電器の個体識別手法の開発

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May 15, 25

スライド概要

本研究は、再生可能エネルギーの普及に伴い重要性が増している電気自動車(EV)の需給調整利用を背景に、EVと普通充電器の個体識別を目的としている。従来の個体識別手法では充電電流の相関係数のみを使用していたが、相関係数だけでは識別精度が不十分な場合があることが課題であった。そこで本研究では、充電電流の変調パターンに基づき、相関係数に加えて電流の偏差を組み合わせた新たな評価指標を提案した。さらに、ハンガリー法を用いた最適割り当てアルゴリズムを導入し、EVと充電器の個体識別精度を向上させた。シミュレーションによる評価の結果、300台規模のEVと充電器を対象に、特定の計測間隔(30秒間隔)では識別精度100%を達成することが確認された。今後は、実際の充電環境における計測誤差と識別精度の関係を定量的に評価し、さらなる実用化を目指していく。

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小平大輔 - 筑波大学エネルギー・環境系助教。現在の研究テーマは、電気自動車の充電スケジューリング、エネルギー取引のためのブロックチェーン、太陽光発電とエネルギー需要の予測など。スライドの内容についてはお気軽にご相談ください:kodaira.daisuke.gf[at]u.tsukuba.ac.jp

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各ページのテキスト
1.

2025年3月18日 電気学会全国大会 変調充電電流を用いた 電気自動車と普通充電器の個体識別手法の開発 Individual Identification of Electric Vehicles and Standard Chargers Using Modulated Charging Current 筑波大学 システム情報工学研究群 構造エネルギー工学学位プログラム 博士前期課程1年 指導教員 野村成孝 小平大輔助教

2.

研究背景 • 再エネの普及拡大による不確実性の増加 • EVと普通充電器の個体識別が実現× → EVの充放電による需給調整が注目 → 個別の充電サービスが不可能という課題が存在 EV 再エネ アグリゲーター 充放電 電力供給 EVクラウド 充電器クラウド × 需要家 普通充電器 EV 1

3.

先行研究 • 変調充電電流を用いたEVと普通充電器の紐づけ技術[1] 充電器 (A) EV (A) 普通充電器 60秒間隔 充電電流 EV ➢ 充電電流を特定の時間間隔で変調 0 0 23.4 24 14.5 15 29.0 30 8.6 9 20.3 21 相関係数:0.99 充電電流がエネルギー供給だけでなく情報伝播の役割 [1] 馬場博幸, 今中政輝, 「普通充電器-EV 紐づけ技術の研究報告」, 電気学会 2024 年全国大会, 4-150, 2024.3 2

4.

先行研究 • 先行研究の課題[1] EV1 (A) 24 相関係数:0.99993 充電器 (A) 15 30 EV1 23.4 9 14.5 29.0 8.6 +3A EV2 (A) 充電器 21 12 相関係数:0.99993 EV2 27 6 相関係数のみでは個体識別が不可能な場合が存在 [1] 馬場博幸, 今中政輝, 「普通充電器-EV 紐づけ技術の研究報告」, 電気学会 2024 年全国大会, 4-150, 2024.3 3

5.

研究目的 ⚫ 先行研究の課題 個体識別に相関係数を用いる場合、識別精度が低下する可能性が指摘[1] ⚫ 研究目的 変調充電電流を用いたEVと普通充電器の個体識別手法の開発・評価 ⚫ 評価手法 先行研究[2]で取得した充電電流データのみでは実運用環境を想定した評価が困難 → シミュレーション用のデータを生成し、識別精度を評価 [1] 馬場博幸, 今中政輝, 「普通充電器-EV 紐づけ技術の研究報告」, 電気学会 2024 年全国大会, 4-150, 2024.3 [2] 馬場博幸, 今中政輝, 「普通充電器-EV 紐づけ技術の基礎実験報告」, 電気学会 2024年 電子・情報・システム部門大会, 2024年9月 4

6.

研究手法 • 提案手法 EV1 (A) 24 相関係数:0.99993 偏差:0.625 充電器 (A) 15 30 23.4 マッチング EV1 9 14.5 29.0 8.6 𝑛 +3A EV2 (A) 充電器 1 偏差 = ෍ 充電器 − 𝐸𝑉 𝑛 21 相関係数:0.99993 偏差:2.375 12 EV2 27 6 𝑖=1 相関係数と偏差を組み合わせることで個体識別を実現 5

7.

研究手法 • ハンガリー法[3] 例題)A,B,Cさんに1つずつ宿題を割り振るときの時間を最小にするには? A B C 英語 国語 数学 5 4 6 8 10 6 2 3 4 各行の最小値 を引く 3 1 2 0 0 0 6 7 2 各列の最小値 を引く 2 0 1 0 0 0 4 5 0 (単位:時間) 行列の操作を用いて最適な割り当てを探すアルゴリズム [3] H.W.Kuhn, “The hungarian method for the assignment problem,” Naval research logistics quarterly, vol. 2, no. 1-2, pp. 83–97, 1955. 6

8.

研究手法 • 相関係数と偏差の正規化 EV:EV_1, …, EV_4 充電器:Ch_1, …, Ch_4 正規化相関係数行列 𝑅෨ 相関係数行列 R 正規化 評価指標行列 S (範囲を0~1に) 偏差行列 D ෩ 正規化偏差 𝐷 各要素 ごとの積 正規化 (範囲を0~1に) EV_3とCh_4の マッチング度合い 7

9.

研究手法 • ハンガリー法を用いた個体識別 紐づけ完了 評価指標行列 S ハンガリー法 1対1の紐づけにおいて評価指標の総和が最大になるように個体識別 8

10.

シミュレーション • 300台の充電器とEVの電流を生成 ① 充電電流指令 14.5A • • • 15A 15A コンソール 充電器クラウド EVクラウド ④ 計測 ⑤ 計測 5秒間隔 30 or 60秒間隔 充電ケーブル 充電器 CPLT:Control Pilot OBC:On-board Charger BMS:Battery Management System ? ② CPLT *充電器とEVは異なる計測システム OBC ③ 電流制御 BMS 9

11.

シミュレーション • 提案手法と従来手法の識別精度の比較 EV:30秒間隔 EV:60秒間隔 EVが30秒間隔で計測される場合、 提案手法は100%の識別精度を達成 10

12.

まとめ ⚫ 研究目的 変調充電電流を用いたEVと普通充電器の個体識別手法の開発・評価 ⚫ 研究結果 相関係数と偏差を組み合わせた評価指標を定義し、ハンガリー法を用いて個体識別 300台のシミュレーションにおいて、特定の条件下で識別精度100%を達成 ⚫ 今後の展望 電流の測定誤差と識別精度の関係を定量的に評価 11

13.

補足資料

14.

研究手法 • EV充電の仕組み • • • ① 充電電流指令 12.4A 15A 13A コンソール 充電器クラウド EVクラウド ④ 計測 ⑤ 計測 充電ケーブル 充電器 CPLT:Control Pilot OBC:On-board Charger BMS:Battery Management System 12.8A ② CPLT *充電器とEVは異なる計測システム OBC ③ 電流制御 BMS 13

15.

研究手法 • 先行研究[2]で取得した電流データ 充電器電流 EV電流 ① 充電電流指令 12.4A 指令値 15A 13A コンソール 充電器クラウド EVクラウド ④ 計測 ⑤ 計測 充電ケーブル 充電器 ② CPLT ? OBC ③ 電流制御 BMS 「指令値」「充電器電流」「EV電流」を取得 [2] 馬場博幸, 今中政輝, 「普通充電器-EV 紐づけ技術の基礎実験報告」, 電気学会 2024年 電子・情報・システム部門大会, 2024年9月14

16.

研究手法 • 電流の生成手法 充電器電流 指令値 EV電流 ① 充電電流指令 12.4A 15A 生成 充電器クラウド 13A コンソール *実験データのみから生成 (各機器の特性は考慮せず) EVクラウド 生成 ④ 計測 ⑤ 計測 充電ケーブル OBC ② CPLT 充電器 指令値 ①, ②, ③, ④ 充電器電流 ④, ⑤ ③ 電流制御 EV電流 BMS 15

17.

研究結果 • 実測値と推定値の比較 充電器電流 ➢ 定常状態:電流値の差が 0.3A以内 ➢ 非定常状態:推定値の傾 きが実際よりも緩やか EV電流 ➢ 実測値と推定値が完全に 一致 16

18.

研究手法 • 相関係数と偏差の正規化 相関係数行列 R 相関係数 EVと充電器が4台ずつ 𝑟𝑖𝑗 + 1 2 EV:EV_1, …, EV_4 充電器:Ch_1, …, Ch_4 正規化 偏差 偏差行列 D 全組み合わせで相関 係数と偏差を計算し、 行列で表現 正規化相関係数行列 𝑅෨ 1− ෩ 正規化偏差 𝐷 𝑑𝑖𝑗 − 𝑑𝑚𝑖𝑛 𝑑𝑚𝑎𝑥 − 𝑑𝑚𝑖𝑛 正規化 𝑑𝑚𝑎𝑥 , 𝑑𝑚𝑖𝑛 :偏差の最大値と 最小値 17

19.

研究手法 • ハンガリー法を用いた個体識別 正規化相関係数行列 R 評価指標行列 S × 各要素ごとの積 (≠行列の積) 紐づけ完了 ハンガリー法 正規化偏差行列 D 評価指標の総和が最大になるように紐づけを決定 18

20.

シミュレーション • 300台の普通充電器とEVの電流を生成 時刻 指令値パターンの作成 13:00:00 13:01:00 ×300回 0 60秒間隔 24 13:03:00 6 13:04:00 13 13:05:00 20 13:00:00 13:00:05 13:00:10 最初は0(A) 12 13:02:00 時刻 充電器とEVの電流を生成 指令値 (A) 充電器 (A) 5秒間隔 0 0 0 6~30Aでランダムに決定 EV (A) 0 30 or 60秒 間隔 19