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February 05, 25
スライド概要
本セッションでは、新卒エンジニアが主体的に関わった DeNA のアニメ DX プロジェクトにおける PoC 開発プロセスについて紹介します。
プロジェクトは、アニメ制作スタジオ向けの DX 推進を目的とし、エンジニアが主体的に領域内の課題解決に取り組むスタイルが特徴です。
この開発プロセスの核心は、生成 AI を活用した効率的な実装手法です。
プロジェクトの0→1フェーズを迅速に進めるため、エンジニアが仕様の仮説を立て実装、様々なプロジェクトメンバーや協業先からのフィードバックを反映し改善サイクルを繰り返しました。
私達が実際に行ったアプリケーションの開発サイクルを例に、デモ開発の流れを解説。生成AIを活用して効率的に実装を進める方法や、AI に頼りすぎた際の課題とその解決策も共有します。
このプロセスを通じて、新卒エンジニアがどのようにドメイン知識を獲得し、プロジェクトを推進していくかを、メンターの頼りになるポンコツ狐パイセンとともに、アニメ業界特有のチャレンジも含めてお話しします。
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新卒と狐パイセンが挑む! アニメスタジオDXのPoC開発実践 1 © DeNA Co., Ltd.
⾃⼰紹介 渡邊 優貴 2024年に新卒⼊社。 内定者インターンではモバイルアプリ 開発に携わり、⼊社後はアニメスタジ オDXを⽀援するアプリケーションの PoC開発に従事。 2 © DeNA Co., Ltd.
⾃⼰紹介 頼りになるポンコツ狐パイセン はじめましてなのじゃ!頼りになるポ ンコツ狐パイセンなのじゃ。エンタメ 領域でPoC開発のメンターをやってお るぞ。今⽇は⼤舞台!必ず発表を成功 させるのじゃ! 3 © DeNA Co., Ltd.
アニメスタジオDXへの取り組み ● クリエイターさんの補助になる形でのプロダクト開発 4 © DeNA Co., Ltd.
アニメスタジオDXというテーマでの ⽣成AIを利⽤した⾼速PoC開発のプロセス 5 © DeNA Co., Ltd.
そもそもPoCとは? 6 © DeNA Co., Ltd.
PoC:Proof of Concept 概念実証 7 © DeNA Co., Ltd.
スピードが最重要 8 © DeNA Co., Ltd.
なぜ、アニメスタジオDXにPoCが必要か? 9 © DeNA Co., Ltd.
アニメスタジオDXの難しいポイント ● 業界構造による難しさ ○ 多くのステークホルダーや受託会社が多重に関わっている ○ フリーランスや個⼈アニメーターが多く、使うツール等が個⼈の 裁量に依存 ● 技術的な難しさ ○ 現状の⼯程にデジタルとアナログが混在している ○ 絵を描くという技術領域⾃体の難しさ 10 © DeNA Co., Ltd.
アニメ制作⼯程の全体像 11 © DeNA Co., Ltd.
3つの主要⼯程 12 © DeNA Co., Ltd.
1. プリプロダクション 主要ステークホルダー ● プロデューサー ● 監督 ● 美術監督 ● デザイナー ● 演出家 ※本⼯程は、あくまでも⼀例なのじゃ! 13 © DeNA Co., Ltd.
2. プロダクション 主要ステークホルダー ● 制作進⾏ ● 作画監督 ● 美術制作担当 ● 原画アニメーター ● 動画アニメーター ● 仕上げ担当 ● 撮影監督 ● 撮影担当 ● CGクリエイター ※本⼯程は、あくまでも⼀例なのじゃ! 14 © DeNA Co., Ltd.
3. ポストプロダクション 主要ステークホルダー ● 編集監督 ● ⾳響監督 ● 編集担当 ● 声優 ※本⼯程は、あくまでも⼀例なのじゃ! 15 © DeNA Co., Ltd.
実際はもっと複雑 ● ● ● ● 16 リテイクの存在 各カット‧話ごとに、異なる⼯程が並⾛して進む 外部会社に受託する⼯程も多々ある 紹介した⼯程⾃体が⼀例であり、スタジオによって異なる © DeNA Co., Ltd.
クリエイターさん1⼈1⼈に寄り添うDXをPoCで 17 © DeNA Co., Ltd.
PoCを⾼速に進めるための4つのコアな要素 18 © DeNA Co., Ltd.
1. 少数精鋭チーム ● 仮説のたたきは新卒3名で作成(ビジネス企画1名、エンジニア2名) ● 経験豊富な案件メンバー陣との確認‧擦り合わせ 新卒 19 経験豊富なメンバー © DeNA Co., Ltd.
1. 少数精鋭チーム ● 仮説のたたきは新卒3名で作成(ビジネス企画1名、エンジニア2名) ● 経験豊富な案件メンバー陣との確認‧擦り合わせ 新卒 20 経験豊富なメンバー © DeNA Co., Ltd.
2. ⽣成AIを実装にフル活⽤ ● ⽣成AIを利⽤した0→1開発は速度がものすごい早い ● 1⼈作業の⽅がコミュニケーションコストが低く最速 21 © DeNA Co., Ltd.
3. 必要最低限な⾒積もりと温度感のチェック ● ⾒積もりは開発者⾃⾝の感覚で荒く出し、実現可能性を含めて複数⼈ でレビュー 22 © DeNA Co., Ltd.
4. 最短の仕様⽴て ● 実装を担当するエンジニア⾃⾝がドメインに深く潜り込み、仕様⾯の 仮説⽴てをリードする ● デザインはラフに。検証したいUX項⽬にフォーカスする 23 © DeNA Co., Ltd.
3つの主要チャレンジを案件実例とともに 24 © DeNA Co., Ltd.
チャレンジ0: 配属前 ● アニメスタジオへの往訪から、デモの切り⼝を⾒つける ● 1~2⽇程度で作れる程度のデモを素早く開発 ● 先⽅に⾒せて、お互いの認識を擦り合わせる 25 © DeNA Co., Ltd.
チャレンジ0: 配属直後 ● 筋の良さそうなプロダクト企画がラフなアウトプットの状態 で転がっている ● 企画を拾う ● アニメ制作⼯程のインプットをしながらデモ制作開始 26 © DeNA Co., Ltd.
チャレンジ1:デモ1の作成と初期FB 27 © DeNA Co., Ltd.
前提 ● 期間 ○ 次の商談までの2週間程度 ● ゴール ○ 特定⼯程を効率化するUXを最もミニマムな形で実現し、先⽅含め て課題への解像度をあげる 28 © DeNA Co., Ltd.
企画 ● 商談で⼀度⾒せた超ラフなデモを⾒て、取り 組んでいる課題をキャッチアップ ● アニメ制作に⾃分より詳しかったり、デモ0を 作っているメンバーに適宜ヒアリング ● ⾃分の中で決めの仕様を固める 29 © DeNA Co., Ltd.
実装 ● 具体 ○ iPadアプリ、Swift UI ■ Swift未経験だが2週間で作成 ● ⽣成AIはどうだった? ○ 良かったこと ■ 迅速なプロトタイプ作成 ○ 悪かったこと ■ ⽣成AIの限界あり ■ コードの集中化問題 30 © DeNA Co., Ltd.
実装 ● 具体 ○ iPadアプリ、Swift UI ■ Swift未経験だが⽣成AIを使い倒して2週間で作成 31 © DeNA Co., Ltd.
商談でのフィードバック ● 実際にアニメスタジオに⾏き、クリエイターさんにデモを使っていた だく ● ⾒せたiPadアプリをベースに、もっとこうしたいという具体の要望が クリエイターさんから出たことで、それをベースにネクストを設計で きる ● AIで作っているのでアプリに気持ちがそこまでのらず、容易にスク ラップアンドビルドの判断ができる 32 © DeNA Co., Ltd.
苦労したポイント 33 © DeNA Co., Ltd.
1⽇単位のセーブポイント 34 © DeNA Co., Ltd.
1⽇単位のセーブポイント ● Before ○ 全体像のイメージはできているが、⼀つのタスクに 実装内容をすべて盛り込んだ状態 当時のタスク表記→ ● After ○ 実装内容を細分化し、それぞれのタスクを実施した 後にデモとして触れる状態を保つ 35 © DeNA Co., Ltd.
⽣成AIドリブンな開発の苦労話 ● 良かったこと ○ 指⽰を具体化することで、⼿でコードはほとんど書 かなかった ● 悪かったこと ○ 何も考えずにAIに指⽰していくと、1つのファイル に集中して実装される(ことが多々ある) ○ 1000⾏を超えたあたりでAIの⽣成時間が結構かかる ようになり、待ち時間が発⽣ ○ このタイミングでコンポーネント‧ファイル分割を 実施して、解決 36 © DeNA Co., Ltd.
チャレンジ2:デモ2の作成と再度FB 37 © DeNA Co., Ltd.
企画 ● 実際にクリエイターさんとのディスカッ ションを通して、改めて仮説⽴て ● プラットフォームの切り分け ○ アプリとwebに持たせる役割を分ける ● 新卒3名で企画の叩きを対⾯で作成 ● 開発期間としては1ヶ⽉程度 38 © DeNA Co., Ltd.
実装 ● Remix, Firebase 39 © DeNA Co., Ltd.
商談でのフィードバック ● 「すぐにでも使いたい」というフィードバックが得られた ● 具体的な追加要望も出てきたので、ネクストとして設定 40 © DeNA Co., Ltd.
狐パイセンと振り返り 41 © DeNA Co., Ltd.
⽣成AI x Remix の苦労話 ● 良かったこと ■ 「OOのファイルにOOという実装をして」とい う具体のレベルで指⽰できれば、ほぼ詰まるこ となく実装できる ● 悪かったこと ○ 具体的な指⽰を挟まないと、動かないものができあ がる ○ 結局、全体のコードを頻繁に追いながら作る必要が ある。 ○ ⽣成AIに書かせる気マンマンであれば、もう少し枯 れたフレームワークを使うと良さそう 42 © DeNA Co., Ltd.
チャレンジ3:実⽤利⽤に向けた最終フェーズ 43 © DeNA Co., Ltd.
企画 ● チャレンジ2の⽅向に乗りながら、得られた具体のフィードバックを ベースにUXをブラッシュアップする⽅向 ● 実⽤利⽤に向けて、デザイナーさんやQA、セキュリティ部などの⽅々 とコミュニケーション ● 実⽤利⽤までの⽬標スパンは2ヶ⽉程度 ● あくまでも、まだPoCの段階なので、速度が落ちないように⼯数等を しっかりと擦り合わせ 44 © DeNA Co., Ltd.
実装 ● 画像‧動画フォーマット系、wasm、外部ソフトウェアの拡張など、 ⽣成AIだけでは太⼑打ちできない場⾯が多々ある ● 特にwasmを使う場⾯では、モジュール内のソースコードをかなり追 わないと動かなかったりしたので、そのへん速度が落ちる場⾯があっ た 45 © DeNA Co., Ltd.
苦労話を狐パイセンと深ぼる 46 © DeNA Co., Ltd.
新卒によるアニメ制作というドメインへの挑戦 47 © DeNA Co., Ltd.
環境⾯はどうじゃった?? 48 © DeNA Co., Ltd.
新卒がオーナーシップを持てる環境がある ● 特に、0→1をやっている部署では、必須の動き⽅となる 49 © DeNA Co., Ltd.
どうやってアニメ制作に 詳しくなったのじゃ?? 50 © DeNA Co., Ltd.
いかにしてアニメ制作プロセスを理解したか 51 © DeNA Co., Ltd.
アニメ制作におけるプロダクト開発で 難しいポイントはあったかの?? 52 © DeNA Co., Ltd.
アニメ制作ドメインに潜り込む際の難点 1. アニメ業界独⾃のデータ形式あり 2. ⼀般的なイラストツールに加えて、アニメーター独⾃の⼿法がその外 側で⾏われている(商談時に実際の⼯程を⾒せてもらうことで知れた 部分) 3. 各⼯程で具体的に何をやっているかを理解するのが難しい 53 © DeNA Co., Ltd.
似たようなPoCを先にやられている 狐パイセンから最後ひと⾔ 54 © DeNA Co., Ltd.
ありがとうございました! 55 © DeNA Co., Ltd.