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February 10, 25
スライド概要
ヘルスケアエンターテイメントアプリ kencom(ケンコム)のプロダクトチームでは、当時直面していた主要な問題として、個人依存と、開発アイテム選択における意思決定の一貫性欠如がありました。20名弱のエンジニアチームが大規模リアーキテクチャと機能リリースに並列で取り組む中、各メンバーが重い責任を負い個人に依存することで離脱した場合のリスクが高い状況でした。
開発ラインが多く、レビュワーがボトルネックになりプロジェクトの進捗が妨げられ、品質低下のリスクが増大していました。
これに対処するため、私はあえてチームを分割せず、一つのストリームアラインドチームを形成しました。これにより、Product Backlog を一本化し、プロダクトオーナーを一人にまとめることで、何を優先し、何をあきらめるかの意思決定に一貫性をもたらし、知識の共有とフロー効率を向上させました。本セッションでは、この戦略によって得られた成果と具体的な解決策を詳しく解説します。
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1つのStream Aligned Teamからの アジャイルことはじめ 理想と現実をつなぐ実践的アプローチ DeSCヘルスケア製品開発統括部 平⼦ 裕喜 1 © DeNA Co., Ltd.
⾃⼰紹介 平⼦ 裕喜 ● ● ● ● ● エンジニア エンジニアリングマネージャー 新卒採⽤‧育成 組織開発 スクラムマスター :now: id: @kocchi 2 © DeNA Co., Ltd.
はじめに 組織のアジャイル変⾰において、私たちは理想的なチーム構成や開発プロ セスの形を⽬指そうとします。チームトポロジーやスクラムガイドが⽰す 理想的な形は、確かに優れた指針となります。しかし、現実の組織がそこ に⾄るまでの具体的な道筋については、必ずしも明確な答えが⽰されてい るわけではありません。 3 © DeNA Co., Ltd.
このセッションの対象者 ● チームトポロジーを実践例を知りたい⽅ ● スクラムの導⼊事例を参考にしたい⽅ 導⼊初期のバタバタ感や⽣々しい話を聞きたい⽅は → Ask The Speaker へ 4 © DeNA Co., Ltd.
ストリームアラインドチームとは? ビジネスの成果や顧客価値の流れ(ストリーム)に沿って編成されたチー ム。 ● ⽬的顧客のニーズに迅速に対応し、価値を持続的に提供 ● ⼿渡しや依存関係を最⼩限に抑え、スムーズな開発‧運⽤を実現 従来の部⾨横断的な⼿続きの多さを解消し、⾃律性と迅速な意思決定を促 進する。 5 © DeNA Co., Ltd.
ストリームアラインドチームの特徴 ● 特徴 エンドツーエンドの責任:設計から開発、運⽤まで⼀貫して担当 クロスファンクショナル:必要な技術‧知識を持つメンバーで構成 ⾃律性の⾼さ:迅速な意思決定と改善を実現 ● メリット 迅速なリリースサイクル:市場や顧客のフィードバックを即座に反映 低い依存関係:他チームとの連携がスムーズに⾏われる 価値創出の最適化:ビジネスゴールに直結した成果を達成 6 © DeNA Co., Ltd.
前提条件を揃えながら Before → After をみていきましょう 7 © DeNA Co., Ltd.
Before ● Project A ● Project B Project C ● ● ● 開発者を各プロジェクトに分散 ○ ⼈数は全体で20 ~ 30名程度 シニアメンバーやClientエンジニアは他 のプロジェクトと兼任 ⼯程はウォーターフォールで進⾏ 業務委託のチームも組成 「全てが重要!同時に進める」 … 8 © DeNA Co., Ltd.
Before の状態でもうまくいく状況もある なにが問題だったのか? 9 © DeNA Co., Ltd.
① プロジェクトを跨いだ優先度が不明確 Planner 問題 ● 優先度が不明確:各層が独⾃に推測、整合性が取れない ● 並列プロジェクト数の多さ:認知負荷が増⼤し、その負担がマネー ジャーに集中 Eng Mannager 結果 ● マネージャー層の限界:情報伝達や意思決定が遅れ交渉⼒が低下 ● 全体最適の困難:情報遮断が発⽣し、部⾨間の連携が崩壊 ● ⾃浄作⽤の喪失:情報の不透明性が継続し、 改善のサイクルが⽌まる Developer 10 © DeNA Co., Ltd.
② プロジェクト内の⾃⼰完結性が低い ● Project A ● ビジネスストリームに直接関わる役割 がHorizontal(横断) 組織化 プロジェクト同⼠にも依存関係が存在 ○ Project B 横断チーム フォローが必要なためできるメンバー に負荷が集中し、ボトルネックに Project C Vertical 11 各所でマルチタスク化、 待機列や出戻りが発⽣ © DeNA Co., Ltd.
つまりやることは ① 意思決定に⼀貫性をもたらす ② チームの⾃⼰完結性を上げる 12 © DeNA Co., Ltd.
After Sprint 01 Sprint 02 Sprint 03 ● ● Project A ● Project B プロジェクトを跨いで優先度を整理 優先度が⾼いものに群がる ○ 全ての開発者が基本的には1つの チームに 「優先順位をつけ、集中する」 Project C … 13 © DeNA Co., Ltd.
私たちの選択:⼀時的な⼤きなStream Aligned Team ビジネスフロー全体の把握 全体像を理解し、部分最適化を避けます。優先順位の判断基準を組織全体で共有することで、⼀貫した意思決定が可能 になります。 フロー効率の優先 分業による効率化よりも、価値の流れの最適化を重視します。後からリソース効率を⾼めることは可能ですが、その逆は困難であ るという法則性に基づいています。 戦略的思考の育成 チーム全体で戦略を考え、個々の戦術を結びつける思考⼒を養います。これは将来のチーム分割を⾒据えた 基盤づくりにもなります。 14 © DeNA Co., Ltd.
⼩さく始める / 5-15-50-150-500の法則(ダンバー数) 的にはアンチパターン 15 © DeNA Co., Ltd.
運が良かったこと 技術的条件 私がたまたま持っていたもの • 各技術スタック精通したリーダー層の存在 • スクラムマスターの資格 • チーム内における異なる専⾨性を持つメンバーの適度 • ⼈事経験の中で培った100名規模への研修設計‧実施経験 • マネージャー研修の運営で培ったファシリテーション能⼒ • エンジニアマネージャー/プレイヤーとしての経験 な分布 • 20 ~ 30名程度でまだコミュニケーションが破綻しな い規模 タイミングの幸運 • 2年にわたる⼤規模リリースとリアーキテクチャプロ ジェクトが完了したばかりで、チームを再編成可能 だった • 16 すべての関係者が変化を望んでいた © DeNA Co., Ltd.
運が良かったこと 技術的条件 私がたまたま持っていたもの • 各技術スタック精通したリーダー層の存在 • スクラムマスターの資格 • チーム内における異なる専⾨性を持つメンバーの適度 • ⼈事経験の中で培った100名規模への研修設計‧実施経験 な分布 • 数⼗⼈に対してティーチング / コーチング / • マネージャー研修の運営で培ったファシリテーション能⼒ ファシリテーションが可能な状況だった 20 ~ 30名程度でまだコミュニケーションが破綻しな い規模 タイミングの幸運 • • エンジニアマネージャー/プレイヤーとしての経験 2年にわたる⼤規模リリースとリアーキテクチャプロ ジェクトが完了したばかりで、チームを再編成可能 だった • 17 すべての関係者が変化を望んでいた © DeNA Co., Ltd.
もろもろ加味して チーム分割 < チーム統合 18 © DeNA Co., Ltd.
実践:サブグループの活⽤ さすがに⼈数が多いので⼯夫が必要 必要に応じてチーム内に 適切なサブグループを形成する 19 © DeNA Co., Ltd.
実践:サブグループの活⽤ Sprint Sprint中にサブグループを最⼤3ライン構成 Sprint Planning Daily Scrum Daily Scrum Sprint Review Retrospective …… 20 © DeNA Co., Ltd.
実践:ストリーミングアラインドチームとサブグループの活⽤ ストリーム単位の編成 独⽴した開発能⼒ 各サブグループには依存関係がないようにす チーム内のサブグループは、担当するPBIを独⼒ る。プロダクトバックログアイテム毎、もしく でDoneにできる⾃⼰完結性をもつ。フロントエ はエピック単位、特定のカテゴリなどで編成さ ンド、バックエンド、インフラなど、必要な専 れる。 ⾨性を網羅する。 アジャイルな再編成 DSでのフィードバックをもとに、必要に応じた 再計画を実施する。もしサブグループの⾃⼰完 結性が低い場合は、グループ編成を⾒直し、再 編成を⾏うことで効率性を改善。 途中でグループが解散し、合流することも。 21 © DeNA Co., Ltd.
実践:サブグループの活⽤ スプリントプランニングでの作戦会議 ● チーム全体で今スプリントの攻略⽅法をディスカッション ○ 「どのようにこのスプリントを攻略するか?」 ● 各メンバーが「作戦案」を検討し、プレゼンテーション ○ 例)まずは、不確実性が⾼いA案件に群がってリスクを潰して、 次は〇〇を着⼿.... ● 良い作戦に対して投票を⾏い、スプリントの「軍師」を決定 ○ 作戦に沿って、サブグループに分割 ● 軍師が全体をサブグループをまたいで指揮を⾏う 22 © DeNA Co., Ltd.
具体的な成果:ストリームアラインドチームによる スプリントの質的変化 1 変⾰前 従来の機能チーム体制では、スプリント終盤になってようやくDoneが増加し、多くのPBIが仕掛かり中の状 態で並⾏進⾏していました。チーム間の依存関係により、価値の提供が遅延することが課題でした。 2 変⾰後 ストリームアラインドチームの導⼊により、エンドツーエンドの価値提供が可能になり、スプリント初期から Doneが発⽣し、仕掛かり中のPBIを最⼩限に抑制できるようになりました。チームが顧客価値のストリーム に沿って編成されることで、迅速な価値提供が実現しました。 3 結果 ストリームアラインドチームによる⾃⼰完結的な開発により、開発の予測可能性が向上し、より安定したリ リースサイクルを実現。チーム間の調整オーバーヘッドが削減されました。 23 © DeNA Co., Ltd.
いまとこれから 24 © DeNA Co., Ltd.
必要になった単位でチーム組成 Stream Aligned Team α ビジネスストリーム毎 にチームを分割 Stream Aligned Team β Stream Aligned Team をサポート Platform Team (開発のオーバーヘッド削減) 25 Enabling Team (学習ボトルネックの解消) © DeNA Co., Ltd.
俺たちの戦いはこれからだ! (完)ありがとうございました! 26 © DeNA Co., Ltd.