ふりかえりを品質保証の重要な位置付けとしてたちカエル

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April 12, 25

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大阪のQAエンジニアです。

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1.

ふりかえりを品質保証の 重要な位置付けとして たちカエル ふりかえりカンファレンス2025 2025.4.12(土) やまずん Dirty Tester バキバキQA

2.

やまずんとは ⚫ 愛称:Dirty Tester/バキバキQA ⚫ 職業:外資系(?)SaaSのQAエンジニア ⚫ 住居:大阪 ⚫ 所属(コミュニティ) ⚫ testingOsaka 主催者 ⚫ スクラム祭り 実行委員 ⚫ JaSST nanoお世話係軍団 ⚫ バキバキQAチャンネル ⚫ ふりかえりカンファレンス初登壇 2

3.

やまずんのコンテキスト 品質保証のコンテキスト ⚫ TQMの専門家・大企業の品質管理部出身とかではない ⚫ ソフトウェアのテスター ⚫ 一方で、普段から業務を行う中で、「品質とはなにか」について 自分なりに向き合ったり調べた結果、TQMに辿り着いた ふりかえりのコンテキスト ⚫ テスターとして働く中で、2年目くらいからふりかえりを主導し、推進 してきた ⚫ ふりかえりは大好き ⚫ ふりかえりを様々な現場で導入・実践する中で「品質保証としてふり かえりは不可欠だ」と思うようになった 3

4.

この発表の主張で最終的に伝えること(ネタバレ) ⚫ 品質保証の原則はアジャイルやふりかえりに通じる ⚫ ふりかえりの魂に品質保証を入れるとどうだろうか ⚫ 品質管理の手法として「ふりかえり」を捉えてみてくださ い 4

5.

本発表のゴール ⚫ 品質保証について知ってもら う ⚫ 品質保証とふりかえりの関係 性について自分なりの気づき がある 5

6.

本発表の注意 ⚫ 大学などの専門機関や権威のある先生から習ったわけではあり ません ⚫ 世の中一般論ではなく、やまずんの私見の内容が含まれます ⚫ 私が所属する団体や世の中のQA・テスターの意見を代表する ものではありません ⚫ TQM団体の正式な会員でもありません ⚫ 発表にかなり勇気のいる内容を話します ⚫ ふりかえりの新しい形や手法について語るものではありません 6

7.

ふりかえりを品質保証の 重要な位置付けとして たちカエル ふりかりカンファレンス2025 2025.4.12(土) やまずん Dirty Tester バキバキQA

8.

ふりかえりを品質保証の 重要な位置付けとして たちカエル ふりかりカンファレンス2025 2025.4.12(土) やまずん Dirty Tester バキバキQA

9.

品質ってなんなの? 9

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品質とはなにかという難しい問題 ⚫ 「要件に対する適合」Philip B.Crosby ⚫ 「品質は誰かにとっての価値である」 Gerald M.Weinberg たくさんあって 難しいねえ ⚫ 「ニーズにかかわる対象の特徴の全体像」飯塚悦功 ⚫ 「対象に本来備わっている特性の集まりが要求事項 を満たす程度」ISO9000 ⚫ 性能・使いやすさ・セキュリティetc 「ソフトウェア品質知識体系ガイド第3版」p15~18 10

11.

品質にはいろんな界隈がある 「品質管理」などの品質を扱う分野、例えば TQMとISOでは若干ニュアンスが異なる TQM 品質マネジメントシステム(ISO) 品質を中核とした全員参加での改善を重視する経 方針、目標、達成のためのプロセスを決めるため 営のアプローチ の組織の一要素 • 品質…「顧客に受け入れられる」ということ • 品質保証…顧客が満足する製品・サービスを提供 すること、あるいはそのための活動 • 品質管理…品質保証をするための活動 TQMとISOでは 違った扱いをし ているんだね • 品質…明示されている、通常暗黙のうちに了解 されている、義務として要求されている、ニー ズ又は期待 • 品質保証…品質要求事項が満たされるという確 信を与える • 品質管理…品質要求事項を満たすこと • 品質要求事項…品質に対して要求する事項 JIS X:9000:2015 (ISO 9000:2015) 11

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本発表での“品質” ⚫ TQMと概ね同じような定義を使う ⚫ 「品質とは顧客に受け入れられること」≒顧客満足 ⚫ 品質は自分で評価するのではなく、自分以外の誰かが感じ て、評価するという考え方 品質はいろいろ あるからきちん と認識合わせし ておきたいねえ ⚫ 品質保証とは、 顧客が満足する製品・サービスを提供することや、そ のための活動のこと 12

13.

我々と品質のかかわり 13

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ここにいる人々 ⚫ ソフトウェア開発に携わってる人 ⚫ サービス業・サービスを売っている人 ⚫ セールス・マーケティングの人 動物園の飼育員 さんはいるかな 〜? ⚫ 人事とか労務とか会社のバックオフィスの人 ⚫ 教育関係 ⚫ 行政 ⚫ etc 14

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ここにいる人々 ⚫ ソフトウェア開発に携わってる人 仕事をしている人は ⚫ 人事とか労務とか会社のバックオフィスの人 ⚫ 「誰かにとって価値のある仕事」をしているはず サービス業・サービスを売っている人 ⚫ 教育関係 ⚫ 行政 「顧客満足」を考えることに 例外はない ⚫ etc 15

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組織にいることが重要 ⚫ みなさんは組織の一員でしょうか? ⚫ ふりかえりカンファレンスに参加してるってことは、 基本的には会社やチームにいるような気がする 組織にいるとい ろんなことがで きていいよねえ ⚫ ひとりで仕事してひとりで価値提供できている人はあん まりいないはず ⚫ (狩猟採取の生活とかは別) 16

17.

組織と品質管理の関わり ⚫ 「会社」は以下のサイクルを持っている 1. アウトプットを通して顧客に価値を提供する 2. その見返りとして対価を得る 永遠に価値を生 み続ける悲しい 存在 3. そこからさらなる価値を生み出す 4. 繰り返す。永遠に… ⚫ 組織(特に会社)は「持続的な顧客価値の提供」を 行うために存在する 17

18.

組織と品質 組織として ⚫ 「会社」は以下のサイクルを持っている 安定的に、長期的に、 1. アウトプットを通して顧客に価値を提供する 永遠に価値を生 み続ける悲しい 存在 2. その見返りとして対価を得る 高品質のアウトプットを維持するため 3. そこからさらなる価値を生み出す 「品質をマネジメントする」という考えが必要に 4. 繰り返す。永遠に… なってくる ⚫ 組織(特に会社)は「持続的な顧客価値の提供」を 行うために存在する ↑これが品質管理の考え方 18

19.

そう考えると品質は根源的である 品質を中心に事業は回っている コスト 品質を上げるた めにコストをか けている いつも品質にふ りまわされてい るんだね 品質 品質の作り込み が遅れるから納 期が守れない 納期 19 参考:マネジメントシステムに魂を入れる.p6

20.

TQMという考え方がある Total Quality Management ⚫ 欧米の品質保証の考えを魔改造して経営マネジメン トの手法までに落とし込んだもの TQMはどこでも 活かせるんだ ⚫ 前身となったTQCは日本の製造業を支えた手法 ⚫ Japan as Number One ⚫ TQMでは、すべての仕事においてTQMは活かせると いう考え方をしている 20

21.

TQMは組織を対象としている 顧客の満足する品質を備えた品物やサービスを適時に適 切な価格で提供できるように、企業の全組織を効果的・ 効率的に経営し、企業目的の達成に貢献する体系的活動 組織的な品質管 理なんだね! マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本,p6 (私の言葉で言えば) 価値のある製品やサービスを生み出すための 組織をつくる手法がTQM 21

22.

品質管理のよくある疑問 そうだそうだ! 品質管理って 製品をチェック することじゃないの? 22

23.

品質管理の思想の変遷 ⚫ 検査重点主義 ⚫ 完成品を検査することを重点的に行う ⚫ 大量に作って、不良品は弾く いろんな歴史が あるんだねえ ⚫ 工程管理重点主義 ⚫ 生産工程から品質を作り込んで不良品を減らすという考え方 ⚫ 新製品開発重点主義 ⚫ 企画からアフターサービスまで、全ての工程で品質保証(品質管理) を行う考え方 ⚫ TQMではこの考えをベースにしている 23 日本的品質管理ーTQCとは何かー.p107

24.

品質管理のプロセス 組み立て製品 ソフトウェア製品 サービス 市場調査・企画 市場調査・企画 市場調査・企画 研究開発 研究開発 製品設計 製品設計 生産準備・工程設計 アフターサービス 回収・廃棄・再利用 研究開発 全体で品質を保証する サービスの設計 という考え方 機能設計 調 達 生産 販売 ゆりかごから墓 場まで 内部設計 調 達 サービスの提供 プロセスの設計 コーディング 物流 「検査すればいい」 サービス提供 「テストすればいい」 販売 ではない テスト 販売 アフターサービス 調 達 アフターサービ ス 24 新版品質保証ガイドブック.p54

25.

顧客の多様性を捉える 25

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品質における“顧客“の多様性 ⚫ 「品質は誰かにとっての価値である」Gerald M.Weinberg ⚫ エンドユーザー(エンドユーザーもいろいろある) ⚫ 保守担当 それぞれ違った 意見を持ってい ることがあるん だね ⚫ 販売店の人 ⚫ プロジェクトマネージャー ⚫ etc ⚫ 価値を感じる人(顧客)は多様であるという提言 26

27.

「後工程はお客様」という考え方 ⚫ 「後工程にいる人は、同じ会社や発注先の人であっ てもお客様として捉える」という考え方 ⚫ お客様の拡大解釈だが、品質管理において重要な考 後工程の人も顧 客と考えると、 真面目に仕事し ないとだね え方 ⚫ これは品質の捉え方にも重要な示唆を与える概念 27 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.14

28.

ソフトウェア品質保証知識体系による提言 ソフトウェア品質保証知識体系ガイドによれば ソフトウェア開発は、人間の知的作業によって行われている。 人間の知的作業の質には、モチベーションが大きく関係する。 モチベーションの高い技術者が開発すると、品質も生産性も向 モチベーション は大事だよねえ 上する。 ソフトウェア開発はチームで開発するため、個人のモチベー ションだけでなく、チームワークやリーダーシップ、およびそ れらを支えるコミュニケーションも重視しなければならない。 SQuBOK策定部会,「ソフトウェア品質知識体系ガイド第3版」,オーム社,2020,p29 28

29.

プロセス品質という考え方 いろいろ依存関 係があるんだね [出典:[ISO/IEC 25010:2011]JIS X 25010:2013,p31 図C.2] 29

30.

プロセス品質という考え方 品質保証は単なる手法を実践するのではなく、いろいろ依存関 係があるんだね 人間らしく、人間的側面にもフォーカスを当てている 我々はいいチームでいい仕事をする必要がある [出典:[ISO/IEC 25010:2011]JIS X 25010:2013,p31 図C.2] 30

31.

品質保証についてのまとめ ⚫ 品質は顧客満足である ⚫ 品質保証は顧客満足のための活動全般である ⚫ 品質管理は品質保証を達成するための手法である ほんとにまと まってる? ⚫ 品質管理は単なる検査検品ではなく、さまざまなと ころで実施すべきものである ⚫ 品質保証のためには人間的側面も大事である 31

32.

ふりかえりについて この発表での立ち位置 32

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ふりかえりの特徴 レトロスペクティブの恩恵 ⚫ 生産性の改善 ⚫ 能力の改善 改訂版たのしみ だねえ ⚫ 品質の改善 ⚫ 生産能力の増加 ⚫ チームを元気づけたり楽しませたりする アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き (p. x). (Function). Kindle Edition. 33

34.

ふりかえりの特徴 ふりかえりはチーム全員で立ち止まり、チームがより 良いやり方を見つけるために話し合いをして、チーム の行動を少しずつ変えていく活動です。(略) いつもありがと ね〜 チームにとって今より良いやり方がないかを話し合い、 やり方をカイゼンするためのアクションを検討してい きます。 アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック.p2 34

35.

やまずんが考えるふりかえりとは ⚫ ふりかえりは過去の経験から学び、それによって人や チームの働き方を絶えず良い方向に変化させる。 ⚫ ふりかえりを短いサイクルで実施することで不確実性の 自分で定義し ちゃうんだ 高い現実にも小さな歩幅で確実性高く対処することがで きる。 ⚫ ふりかえりはタスクの受け渡しなどの狭義のプロセスや システムの改善だけでなく、関係性やコミュニケーショ ンなどの人間性にも焦点を当てる。 35

36.

やまずんが考えるふりかえりとは 教育・訓練の重 視 事実に基づく管 理 ⚫ ふりかえりは過去の経験から学び、それによって人や チームの働き方を絶えず良い方向に変化させる。 ⚫ ふりかえりを短いサイクルで実施することで不確実性の 重点志向 高い現実にも小さな歩幅で確実性高く対処することがで PDCAのサイク ル 全員参加 きる。 プロセス重視 ⚫ ふりかえりはタスクの受け渡しなどの狭義のプロセスや システムの改善だけでなく、関係性やコミュニケーショ 品質第一 ンなどの人間性にも焦点を当てる。 人間性尊重 36

37.

やまずんが考えるふりかえりとは 教育・訓練の重 視 事実に基づく管 理 ⚫ ふりかえりは過去の経験から学び、それによって人や チームの働き方を絶えず良い方向に変化させる。 TQMの要素が 高い現実にも小さな歩幅で確実性高く対処することがで きる。 いっぱい詰まっている ⚫ ふりかえりを短いサイクルで実施することで不確実性の 重点志向 PDCAのサイク ル 全員参加 プロセス重視 ⚫ ふりかえりはタスクの受け渡しなどのシステムや狭義の プロセスの改善だけでなく、関係性やコミュニケーショ 品質第一 ンなどの人間性にも焦点を当てる。 人間性尊重 37

38.

本発表で説明できる範囲 ⚫ 「TQMの原則」の部分だけを軽くご紹介します ⚫ 原則を知るだけでも学びはあるはず 細かいとこまで 話すと45分では おさまらないよ ねえ ⚫ (一方、品質管理の手法はソフトウェア開発では適用が難 しい部分があるので、単純適用にはご注意ください) 38

39.

品質管理は怖くない ⚫ 怖い側面 ⚫ ソフトウェア開発よりずっと歴史は長く、えらい学者の先生や超 スーパー大企業が軒を連ねている ⚫ 統計的手法や難しい管理手法があり、国家規格・国際規格とも接 お化け屋敷の方 が怖いよ 続したりして巨大な体系化がされている ⚫ 怖くない側面 ⚫ 顧客満足、価値提供のために先人が本気で考えてきた知恵の結晶 であること ⚫ 品質管理の目的である品質保証は本来、すべての人が積極的に参 加して達成するもの 39

40.

日本の品質保証の原則の紹介 40

41.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 たくさんあるね え 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 41 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

42.

品質保証の原則の3つの側面 目的に関する原則 • 各組織が置かれている状況を踏まえてねらいを定める基本となるもの 原則というか、 方向性と思って もいいよね 手段に関する原則 • ねらいの達成に向けて組織の活動を作り上げる際に考慮すべきもの • 人が果たすべき役割を十分に認識して、手段の展開を考えることが 重要という意味で項目が多い 組織の運営に関する原則 • 人の側面に対してどのようにアプローチすべきか示したもの 42 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9

43.

この章の楽しみ方 品質保証の原則とふりかえりやアジャイルと比べながら 「こういう考え方は同じだな〜」 「こういう考え方は違うな〜」 としみじみ思う 日本の品質保証の原則 43

44.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 まずは目的から 話すよ! 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 44 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

45.

マーケットイン(顧客重視) ⚫ 提供側の技術や都合(プロダクトアウト)より、顧 客のニーズが大事という考え(マーケットイン) ⚫ 「クレーム0だからOK」ではない ぼくもぬいぐる みユーザーのこ と考えてるん だ! ⚫ 不具合の防止やコストダウンのみが目標なのも違う ⚫ 常に顧客の視点で立つことが大事という考え方 ⚫ 決して「顧客の言うことを聞く」という話ではない 45 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.13-14

46.

後工程はお客様 ⚫ 後工程の人々をお客様と思おう ⚫ 顧客と直接関係ない部門も自分を優先するのではなく、 お客様の代わりに後工程をお客様と捉えること お客様と直接接 してなくてもい けるんだねえ ⚫ こうすることで、結果的に組織の隅々まで顧客志向が 広がるという論理 ⚫ トイレのスリッパを揃えることは「後工程はお客様」らし い 46 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.13-14

47.

品質第一 ⚫ いい品質であれば市場でも勝てるという考え ⚫ 顧客のニーズに合った製品を出すことは、売上増大、 原価低減、能率向上より「目的として」優先するとい う考え方 過剰品質って言 葉は誰がどんな 文脈で言ったの かなあ ⚫ これらを考えないというわけではなく、あくまで最優先に するという話 ⚫ 品質を重視することは結果的にスピードや効率も上がると いう因果関係もある(品質の根源性) 47 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.14

48.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 次は手段だね! 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 48 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

49.

プロセス重視 ⚫ 結果だけを追うのではなく結果を生み出すプロセスを管理して、向上させ ようという考え方 ⚫ プロセスは仕事の順番ではなく、成果物以外だと捉えるのがいいかもしれ ない ⚫ 「手順を決めてそれを絶対に遵守する」みたいなことではない 僕も小魚を食べ るプロセスは大 事にしてるよ! ⚫ ただ、そう言っている人はいることは事実 ⚫ 「結果さえ出せたらなんでもいい」ではなく、「良い結果を起こしたしく みややり方にきちんと目を向けよう」という考え ⚫ 「原因があるから結果がある」という宇宙の法則に則っている インプット プロセス アウトプット 49 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.14-16

50.

標準化 ⚫ 「各々が勝手に行動するより、もっとも優れた方法を標準と して定めて、これに沿って行動するのがいいよね」という考 え方 ⚫ スクラムという標準を持っていたり、ふりかえりにルールがあっ 白くって丸いの も標準的なかわ いいだよねえ たりするはず ⚫ 標準による効率化や認知の負荷を下げることが狙い ⚫ 標準自体の改善の必要も忘れてはいけない ⚫ そもそも標準化されていないと叩き台もないって話もしている 50 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.16-17

51.

源流管理 ⚫ 仕事の流れの源流(前工程)に遡って、品質を管理し ようという考え方 原因があるから 結果があるもん ね ⚫ アジャイル開発でのシフトレフトと概ね同じ 市場調査・ 企画 開発・設計 生産 販売・提供 アフター サービス 51 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.17

52.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 まず左からね 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 52 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

53.

PDCAのサイクル ⚫ 人間のプロセスに関する知識は常に不完全 ⚫ だから、プロセスを設定してその結果を見ながら逐次的に修正す ることが大切という考え方 廻せ!PDCA! ⚫ PDCAの順序やフレームが大切という意味ではない ⚫ むしろサイクルが大事 ⚫ 「PDCAで一番大切なのはDoである」 ⚫ Doしないと目的が達成できないから 53 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.17-20

54.

再発防止 ⚫ 問題が発生した際は、現象に対する対処で満足する のではなく、プロセスに遡っての再発防止対策が必 僕も宿題忘れし ないように気を つけないと 要だという考え方 ⚫ 再発防止には以下の三段階がある ⚫ 個別の再発防止 ⚫ 水平展開 ⚫ 根本原因の除去(製品やプロセスを生み出すしくみ) 54 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.21

55.

未然防止 ⚫ トラブルは、発生する前に防止しようという考え方 ⚫ 過去の失敗やトラブルを整理・一般化する ⚫ 失敗を一般化する概念として「モード」という概念 僕もお魚食べる 時に小骨抜いて るよ! を使っている ⚫ これはあんまりふりかえりでは聞かない 55 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.21-22

56.

潜在トラブルの顕在化 ⚫ 報告されていないトラブルも積極的に探そうという考え方 ⚫ いわゆる「氷山の一角」 見えている氷山 は一部なんだ よ! 56 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.22

57.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 つぎは右 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 57 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

58.

QCD(結果)に基づく管理 ⚫ プロセスをプロセスだけで評価するのではなく、結果 に着目して評価しようという考え方 ⚫ 活動の実践において、「そのプロセスだけでなく、よ り高次の目的はなにか」を考えて、その目的にそって プロセスだけで 空中戦してる人 いるよねえ 適切な行動を考えようということ ⚫ このためには個々のプロセスだけを考えるのではなく、 組織全体で捉える必要がある ⚫ 個別最適ではなく、全体最適で考えるべき 58 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.23

59.

重点思考 ⚫ 結果に大きな影響を与えている問題から取り組もうと いう考え方 ⚫ 全ての改善はできないので、重要なことから取り組み たい 地球温暖化問題 を止めるため に、太陽の動き を止めるんだ! ⚫ TOCとかスクラムのスウォーミングも近いかもしれない ⚫ 例えば手順書の場合、すべての手順書を書くのではなく、 重要な部分を書いて、影響が小さい作業は書かなくてもい いということも謳っている 59 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.23-24

60.

事実の基づく管理 ⚫ 勘や経験だけに頼るのではなく、事実やデータに基 づいて考えるという原則 ⚫ いわゆる三現主義(現場・現物・現実) 亀の甲より年の 功よりデータだ よ! ⚫ TQMでは「統計的手法」を重視しているが、これは ソフトウェアでは向き不向きがあるかもしれない 60 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.24-25

61.

品質保証の原則 プロセス重視 源流管理 標準化 手段の中にもい ろんな構造があ るんだねえ あるべき姿 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 対を なす 未然防止 重点思考 事実に基づく管理 潜在トラブルの顕在化 61 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.25

62.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 組織の運営の話 もするよ! 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 62 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

63.

リーダーシップ ⚫ 経営者・管理者が率先して顧客やステークホルダの ニーズを考慮して、適切な役割を果たせという考え リーダーしっか りしてよ! 方 ⚫ TQMが経営の考え方だと言われる所以かもしれない ⚫ サーバントリーダーシップや各々がリーダーシップを持 つという今風の考えではなく、あくまでリーダーがリー ダーシップを持てという考え方 63 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.25-26

64.

全員参加 ⚫ 特定の人だけでなく、会社の全部門が全員参加で TQMを行うという考え方 ⚫ 共通の目標を持ち、部門間の障壁を取り除き、それぞれ シャチくんが狩 りするときも全 員参加でやって るよね が自分の貢献と役割を理解した上で、知識や経験を共有 して、問題・課題について自由に議論できるようにする ことも大切 ⚫ Whole Team Approachに近い考えかもしれない 64 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.26

65.

人間性尊重 ⚫ 人間らしさ、人間の特性を十分に発揮できるように する考え方 ⚫ 英知、想像力、企画力、判断力、行動力、指導力な 海獣性も尊重し てほしいな どの能力をフル活用できるようにする ⚫ TQM成功の鍵とも言われている ⚫ 「自己実現」も重要視している 65 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.27-28

66.

教育・訓練の重視 ⚫ 企業の発展を支えるためには、知識・技能・モラル の向上のために一人一人の能力を上げるために教育 と訓練が必要という考え方 お勉強なんてや だなあ ⚫ ソフトウェア企業ではあんまりないけど、大企業ではよ くある ⚫ TQMの教育自体も含まれる 66 参考:マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.28-29

67.

品質保証の原則 1.目的 マーケットイン 後工程はお客様 品質第一 2.手段 プロセス重視 標準化 源流管理 PDCAサイクル QCD結果に基づく管理 再発防止 重点思考 未然防止 事実に基づく管理 たくさんあるね え 潜在トラブルの顕在化 3.組織の運営 リーダーシップ 全員参加 人間性尊重 教育・訓練の重視 67 マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本p.9より

68.

品質保証とふりかえり 68

69.

TQMには「ふりかえり」はない(多分) ⚫ TQM文脈で「振り返り」という固有名詞は存在しなさそう ⚫ 隅から隅まですべての文献を調べたわけではないけど、、 ⚫ もちろん、やったことを振り返って改善する取り組みは以下 ズコー! でも取り入れられている ⚫ 方針管理 ⚫ 日常管理 ⚫ QCサークル ⚫ ふりかえりカンファレンスで主に扱っている「ふりかえり」 とは別物 69

70.

「ふりかえり」の従来の品質管理にない特徴 チームのコンテキストを重要視する ⚫ アジャイルなどの、小さなチームで適応しながら行う仕事が 増えているので、「標準化」「横展開」よりもそのチームの コンテキストにおける成熟度にフォーカスしている ふりかえりって すごいんだね ⚫ 手法がたくさんある ⚫ 体系化が浸透していない ⚫ これは悪い部分とも取れるかもしれないが、むしろ良い部分 もある 70

71.

「ふりかえり」は必要なんです ⚫ 短期間でPDCAを繰り返しながら ⚫ チームとプロセスを良くして ⚫ 俊敏に価値提供することを目指す 木こりのジレン マに陥る時があ るよねえ (ソフトウェア開発をはじめとした) 価値提供にモチベーションやチームワークが必要な サービス・製品には必須となる考え方 71

72.

品質管理の手法はサイクルが大事 ⚫ 品質管理の手法を実践するにあたって大事なのは 「PDCAを素早く回すこと」と言われている ⚫ OODAでもCAPDでもなんでもいいので回すこと くるっくるく るっくる ⚫ (これ、みんな同じように言ってるけどなかなか本には 書かれていない) ⚫ とにかくクルックルクルックル回すこと! ⚫ これって「ふりかえり」じゃないか? 72

73.

伝えておきたい品質管理のドーナツ化現象1 ⚫ 1960年ごろに言われた現象 ⚫ 「中心がない」という意味 ⚫ 当時アメリカから品質管理を学び、主に統計的手法 宇宙の形はドー ナツらしいね が使われているときに言われた考え方 参考:マネジメントシステムに魂を入れる.p44 73

74.

伝えておきたい品質管理のドーナツ化現象2 ドーナツおいし そうだねえ 品質管理の手法を使って、 原価低減、在庫管理、生産性向上などの 品質以外の改善が目につくようになった 参考:マネジメントシステムに魂を入れる.p44 74

75.

品質管理に魂を入れた そこで、品質管理は「顧客に安心して使って いただけるような製品・サービスを提供する ためのすべての活動」として、品質保証を目 的とするという位置付けにした。 中心ができた。 これが「品質保証は品質管理の真髄」と呼ば れるようになった所以。 参考:マネジメントシステムに魂を入れる.p45 75

76.

我々のふりかえりはドーナツになっていないか? ふりかえりから中心が失われている状態 ⚫ 手法ばかりに目を向けていないか? ⚫ 進行のスムーズさだけに目を向けていないか? ⚫ 改善の数が目的になっていないか? 「品質管理」と同じように 「品質保証」にタチカエルことでふりかえりのドーナツ を埋められないか? 76

77.

しかし、ふりかえりはアジャイルだ プロセスやツールよりも個人と対話を、 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 契約交渉よりも顧客との協調を、 計画に従うことよりも変化への対応を、 アジャイルソフ トウェア開発宣 言は家に飾って ます 価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があること を 認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。 アジャイルソフトウェア開発宣言 77

78.

アジャイルの拡大解釈 プロセスやツールよりも個人と対話を、 →人間性尊重 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 こじつけじゃな いよね? →品質第一、重点志向、事実に基づく管理 契約交渉よりも顧客との協調を、 →マーケットイン 計画に従うことよりも変化への対応を、 →PDCAサイクル 78

79.

アジャイルの拡大解釈 プロセスやツールよりも個人と対話を、 「品質保証」と 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 →人間性尊重 「アジャイル」は 契約交渉よりも顧客との協調を、 →品質第一、重点志向、事実に基づく管理 →マーケットイン 矛盾しない 計画に従うことよりも変化への対応を、 →PDCAサイクル 79

80.

アジャイルの拡大解釈 もちろん、「完全一致」じゃないよ プロセスやツールよりも個人と対話を、 「品質保証」と 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 →人間性尊重 ただ、 「顧客満足を最優先し、 「アジャイル」は →品質第一、重点志向、事実に基づく管理 価値のある製品・サービスを早く継続 契約交渉よりも顧客との協調を、 的に提供しよう」 →マーケットイン とする考えは 計画に従うことよりも変化への対応を、 もしかしたら →PDCAサイクル 同じかもしれないよね 矛盾しない 80

81.

ふりかえりを通じて弱さを抱擁する 81

82.

品質保証は人の”弱さ”に直面する ⚫ 最初から完璧な標準・組織・人は存在しない ⚫ そのため、「品質保証」(品質管理)は“弱さ“と向き 合うことが多い分野でもある 弱いことは悪い ことではないん だね 82

83.

品質保証は人の”弱さ”に直面する ⚫ 最初から完璧な標準・組織・人は存在しない ふりかえりを活用し ⚫ そのため、「品質保証」(品質管理)は“弱さ“と向き 合うことが多い分野でもある 組織を改善していく過程で 弱いことは悪い ことではないん だね 我々もまた弱さに直面する という点では同じではないだろうか? 83

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ひとは完璧ではない 一緒に働く仲間は完璧ではない 自分自身も完璧ではない 原点志向だね! 組織(チーム)で乗り越えるための知恵として 「品質保証」(品質管理)がある と立ち返ることができるのではないだろうか? 84

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弱さを抱擁する 僕も見るよお 85 製造業の品質管理の考え方をイマドキのスタイルで読み解いてみよう

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QAエンジニアという存在がいる QA活動=TQMにおける品質保証 と捉えれば、QAエンジニアは弱さを認め、打ち勝ち、 価値の向上に務めることができる存在だと考えること QAエンジニアの 拡大解釈 ができるかもしれない 「全員参加」の品質保証において、 すべての人は「QAエンジニア」と言っていいのでは? 86

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QAエンジニアという存在がいる 「品質保証」は QA活動=TQMにおける品質保証 QAエンジニアだけが考えるのではなく と捉えれば、QAエンジニアは弱さを認め、打ち勝ち、 すべての人が関わり、実践している 価値の向上に務めることができる存在だと考えること QAエンジニアの 拡大解釈 ができるかもしれない 「ふりかえり」で組織をよくすることも 「全員参加」の品質保証において、 広義の品質保証である すべての人は「QAエンジニア」と言っていいのでは? と考える 87

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ふりかえりを通じて弱さを抱擁する 「全員参加」を前提に、「我々は完璧ではない」と いうところから、改善のために向き合っているとい う点では品質保証もふりかえりも魂は同一である 僕のことも抱き しめてねえ 現代の品質管理の手法として、弱さを認め、弱さを 抱擁することができる「ふりかえり」は品質管理の 手法として立ち返り、再定義することが可能かもし れない 88

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ふりかえりを品質保証の 重要な位置付けとして たちカエル 品質保証に たちカエルことで ふりかえりに魂を入れる 89

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参考文献 いつもありがと ね〜 イラスト:タスマニアデビ男 • 製造業の品質管理の考え方をイマドキのスタイルで読み解いてみよう、西康 晴、2022/2/3、DevOpsDays Tokyo、 https://www.youtube.com/watch?v=HcTnUz55trg(2025/3/20参照) • アジャイルソフトウェア開発宣言、 https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html(2025/3/20参照) • アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの 型・手法・マインドセット、森 一樹、2021年、翔泳社 • アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引 、 Esther Derby (著), Diana Larsen (著), 角 征典 (翻訳)、2007年、オーム社 • ソフトウェア品質知識体系ガイド第3版、SQuBOK策定部会、2020年、オーム 社 • マネジメントシステムに魂を入れる、飯塚悦功、2023年、日科技連出版社 • 新版品質保証ガイドブック、(社)日本品質管理学会、2009年、日科技連出版 社 • マネジメントシステムの審査・評価に携わる人のためのTQMの基本、(社)日 本品質管理学会標準委員会、2008年、日科技連出版社 • 日本的品質管理ーTQCとは何かー、石川馨、2024年、日科技連出版社 • 品質管理入門、石川馨、2024年、日科技連出版社 • 日本のTQC ーその再吟味と新展開ー、小暮正夫、2024年、日科技連出版社 • 現代的品質管理総論、飯塚悦功、2009年、朝倉書店 90